カテゴリー「ビタミンD」の記事

2012年3月28日 (水)

介護施設入所者のビタミンDが下がると死亡率は上がる

文:屋台ブルー <ライフログ・オーガナイザー>

皆さん、更新が遅くなって申し訳ありませんでした。忙しい時期でも定期的に記事を書いていく習慣を身につけないといけませんね。健康生活も同じようなもの、毎日のちょっとした積み重ねが重要なのは分かっているんですけどね。

実は先日、一般向けにビタミンDの講演をしてきました。そこで今回はビタミンDの話題をとり挙げましょう。

ビタミンDの健康に対する考え方はここ5年で様変わりしている。 くる病の治療薬から始まり、身体のミネラルバランスや骨の代謝に関わることから、骨粗鬆症のような骨の代謝疾患の予防効果が注目されていた。しかしながら、最近は骨以外の作用に関心が向いている。

一般的な癌、高血圧症、心血管疾患の発症、脳神経の成長などに関わるという報告から始まり、骨以外のビタミンDの作用が今まさにホットな話題で、日増しにその重要性が注目されている。さらに、欧米ではビタミンDの不足状態もまん延していることが明らかになり、米国では昨年、2011年にビタミンD欠乏の治療ガイドラインが改訂されました。詳しい内容は次のエントリーを見て下さい。

ビタミンD欠乏症に関する治療ガイドライン

概略を書けば、乳幼児から高齢者までのビタミンDの推奨摂取量が15μg、上限量は8歳以上で100μgになっている。日本ではどうでしょう。厚生労働省から「日本人の食事摂取基準(2010年阪)が出ています。この基準は2009年(平成21年)に、次の5年間の使用目的のために公表されたもので平成26年、この先2年間我々が基準にしていく値です。詳しい内容は厚生労働省のホームページに掲載されているのでみてください。

厚生労働省 > 日本人の食事摂取基準(2010年版) > ビタミン(表)

この中のビタミンDの摂取基準をみると、ビタミンDの摂取目安量は5μgで上限量は50μgである。これは単純にみても推奨量で3倍の開きがある。

欧米でまん延しているビタミンD欠乏のまん延が日本で見られないからでしょうか?

日本でも小規模ながらビタミンDレベルの調査がされた。2010年の7月に長寿医療研の報告をみると、愛知県内の介護施設に入所している寝たきりになっていない女性435名を対象にビタミンDレベルを調べたところ、8割がビタミンD不足という結果だった。これは欧米の結果と変わらない。実は日本でもビタミンD不足は問題になっていることがわかった。

最近、初めてビタミンDと死亡率の関連性が報告されたので紹介しよう。

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2012年2月 1日 (水)

ビタミンDと眼の健康

文:fumixie <fumixie@gmail.com>

Medical News Today に載った "Vitamin D Could Help Combat The Effects Of Aging In Eyes"(2012年1月18日) という記事によると、ビタミンDは加齢による眼病に効く簡単で効果的な方法になりそうだという話。

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2012年1月15日 (日)

果物と野菜をもっと食べるべき理由がまた増える

文:fumixie <fumixie@gmail.com>

Medical News Today に載った "Link Between Diet, Nutrient Levels And Cognitive Ability, Brain Shrinkage(2012年1月4日付け)(食事や栄養と認知機能および脳の収縮のつながり)という記事によると、数種類のビタミンとオメガ3脂肪酸の血中濃度が高い高齢者ほど、知力テストの結果が良く、アルツハイマー病によく見られる脳の収縮も少なくなる一方で、「ジャンクフード」を食べているとちょうど反対の結果が生まれるそうです。

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2011年11月12日 (土)

サプリメントはビタミンD中毒の原因になる

文:屋台ブルー <ライフログ・オーガナイザー>

今日のエントリーを読んで、世にはばかるサプリメント信奉者は慌てるかも、というか慌てるべきだ!

サプリメントに関して日本の少し先をいく米国から学ぶべき点は多い。国立衛生研究所の調査によると1970年代に米国民のサプリメント使用率は20%以下だったが、2003-2006年の報告によると約50%に増えている。しかしながら、医師にサプリメント服用を伝える人は30%と少ない。食品と考える人が多いからだろう。最近、米国ではサプリメントの弊害に関するニュースが増えている。前車の轍を踏まないためにも、我々は注目して考えるべきだ。

先日、ライフログでもとり挙げたが、サプリメント服用と死亡率増加の関連性が報告されている「ビタミン・サプリメントで死亡リスク上昇?」。数あるサプリメントの中、マルチビタミン、ビタミンB6、葉酸、鉄、マグネシウム、亜鉛、銅のサプリメント7種類は、死亡率増加と関連性が示された。疫学調査の結果なので因果関係までは分かっていないが、漫然と長期間サプリメントを服用する危険性は明らかになった。

理由も色々と考えられ、その1つに粗悪なサプリメント製造過程がある。適量のビタミンを摂取しているつもりでも、実際は過度になっていたため問題になったという報告がある。雑誌The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism[September 14, 2011 jc.2011-1443]で報告されていた記事を10月20日のロイターヘルスのニュースでとり挙げていたが、衝撃的な内容なので紹介する。

最近日本でも注目されているビタミンD欠乏症は米国でも一般的なうえ、骨粗鬆症、癌、心血管疾患、糖尿病のリスク上昇と関連性も示されたため、米国におけるビタミンDサプリメントの売り上げは急上昇している。服用者が増えると事故が増えるのは何処でも同じで、法規制の甘い日本でも同様の問題に出くわす可能性があるだろう。

参考:ビタミンD欠乏症に関する治療ガイドライン

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2011年7月 1日 (金)

ビタミンD高値だと糖尿病発症リスク低下

文:屋台ブルー <ライフログ・オーガナイザー>

話題のビタミンDに関して1つニュースがあるよ。色々伝えたいことはあるけど、なかなか紹介できず申し訳ない。先月末(6/24-6/28)に、米国のサンディエゴで第71回米国糖尿病学会(ADA 71st Scientiic Sessions)が開催された。ここで発表された数々の知見が現在ニュースとして出回っている時期なんですよ。

そんな中、ビタミンDの話題がとり挙げられていたので紹介しよう。

血中のビタミンD値が高値だと糖尿病発症リスクが低下するという報告があった。

ここでいうビタミンD値は25(OH)Dと読み取ってください。

マサチューセッツ州、ボストン、タフツ・ニューイングランド・メディカル・センターの内分泌・糖尿病・代謝部門に所属するAnastassios G. Pittas医師のグループが第71回米国糖尿病学会で報告した内容だ。

Pittas医師によると、ビタミンDがインスリンの分泌や感受性に対して重要な役割を果たしている可能性があるという。「膵臓のβ細胞に好影響を与えるというエビデンスばかりだ。」とMedscape Medical Newsに答えている。

ビタミンD値と糖尿病発症リスクの関連性を調べるために、糖尿病予備群の被験者を強化ライフスタイル改善群、メトフォルミン(糖尿病薬)投与群、そしてプラセボ(偽薬)群の3群に分けて糖尿病発症の危険度を調査をしているDPP(Diabetes Prevention Program)臨床試験のデータを解析している。

このコホート試験に属する2039名の平均追跡期間は3.2年だった。血漿ビタミンD値は毎年測定され、同時に糖尿病発症が評価された。この解析には、強化ライフスタイル改善群とプラセボ(偽薬)群のみ含まれていた。

ビタミンD値が最高三位(平均値、30.1ng/mL)だった被験者グループは、最低三位(平均値12.8ng/mL)のグループと比較すれば、糖尿病発症の相対危険度は0.74(95%, CI, 0.59-0.90)だった。

更に言えることは、ビタミンDの効果は用量依存性で、ビタミンD値が最も高かった群(50ng/mL)は、最も低かった群(平均値12ng/mL以下)と比べると、糖尿病発症の危険度は0.46(95%, CI, 0.23-0.90)たった。

ビタミンD値を3つのグループに分けたサブ解析を見ても、プラセボ(偽薬)群(0.72;95%CI 0.53-0.96)と強化ライフスタイル改善群(0.80;95%CI 0.54-1.14)は同様だった。

Pittas医師によると、「過去の研究報告よりも方法論で優れている点は、調査期間中にビタミンD値を複数回測定しているところで、試験開始時に一度しか調べない過去の研究と比べれば、長期間にわっってビタミンD値の状態を評価していることになる。」

「この研究で、糖尿病の高リスク群という臨床的に意義のある集団を評価しているし、白人以外の人種もかなりの数含んでいるので、統計的にも一般的な状況下で真実の可能性は高いだろう。」と言いながらも、「観察研究なので、完全に交絡因子を排除することはできず、糖尿病を予防するという理由だけでビタミンDを勧めるのは時期尚早だ。」と締めくくっている。

この研究に関わっていないビタミンD研究者、Clifford Rosen医師によると「このプロスペクティブ研究でビタミンD値と糖尿病リスクの関連性は確認されたけど、体重で補正しても、25(OH)Dの絶対的な閾値を見いだせなかった」という。次に必要なのは、2型糖尿病の高リスク群を対象にしたビタミンDと偽薬を使ったランダム化プラセボ比較試験ということだ。

それでも今のところ高リスク群のビタミンD値をモニターすることは重要で、個人的にビタミンD値を20ng/mL以上にしておきたいところ、ってのが大方の意見のようだ。

メタボな人、あなたの25(OH)D値は20ng/mL以上ありますか?

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2011年6月21日 (火)

ビタミンD欠乏症に関する治療ガイドライン

文:屋台ブルー <ライフログ・オーガナイザー>

6月13日に内分泌学会からビタミンD欠乏症の評価、治療そして予防のガイドラインが発表された。これは私にとって非常に興味深い内容なんで皆さんに紹介したい。でも注意してください。これはヨーロッパを中心にした内分泌学会のガイドラインなので、アジア系、特に日本人でも同じことが言えることかどうか知らないからね。私の意見も内分泌専門医から見た意見じゃなく個人的な意見なので、私の意見を参考にして健康障害に陥っても責任は持てないことを最初に言っておく。

さて、これから話す内容は、私が愛読しているMedscape(会員制)の内容なので、オリジナルの記事にリンクできないけど、内容を抜粋して自分の意見を入れていく。医療関係者向けの内容を一般の人でも分かるように解説を加えているけど、この解説がくせ者で間違っている可能性も大いにあり。もし目につく間違いがあればご指摘ください。

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2011年5月20日 (金)

ビタミンDと減量:関係あるの?

SunshineNewlogo文:屋台ブルー <ライフログオーガナイザー>

皆さん、お久しぶりです。またまた更新が途絶えてしまいましたが、コメントして下さった皆さん、ありがとうございます。

「継続こそ力なり」を実感しているのに実行がなかなかできない屋台ブルーです。

言い訳をするなら、息子が3月1日に生まれて、生活がてんやわんやになっているからかな。2歳の娘もいて、子供の教育に興味津々の「育メン」もやっていて時間が取られています。

さて、自分の事はこのくらいにして、久しぶりにDiet Blogの記事を紹介しよう。

私が注目している「睡眠」と「ビタミンD」の1つ、ビタミンDに関する話題が3月に紹介されていた。この話題を今更ながら紹介しようと思ったのは、先日、雑誌J Clin Endocrinol MetabにビタミンDの新しい知見が紹介されていたから。

「  Vitamin D Status, Adiposity, and Lipids in Black American and Caucasian Children[米国の黒人と白人の子供達におけるビタミンDレベル, 肥満度, そして血中脂質レベル]

以前ライフログで紹介した「 ビタミンD不足で子供達は太る」とよく似た結果が示されているが、これらと併せて今日の記事を読めば、肥満管理においてビタミンDの重要性が見えてくる。

肥満治療が上手く行かない理由の1つがビタミンD欠乏かもしれない。まだ因果関係がわからないので早急に調べてもらいたいね。今後の研究報告から目が離せないってところだろう。

昨今のビタミンD研究の盛り上がりの中、日本国内ではビタミンD欠乏を調べる血液検査が保険適応になっていない(T_T)

ビタミンD欠乏は、あまり重要な疾患として捉えられていないからだろうか。「 ビタミンD不足で子供達は太る」の記事で言及しているけど、日本の高齢者でもビタミンD不足のまん延が示唆されている。

今日の記事で少し触れているけど、ビタミンD値は個人差が大きい。肌のタイプ、住んでいる場所、野外での活動性、体格など影響を与える因子が多岐にわたるため、病歴を聞いて欠乏症かどうか判断するのは難しい。やはり血液検査でビタミンDを測定することが望まれるよね。しかし、保険適応になっているのは活性型の「1,25(OH)2D3」のみ。これじゃあ欠乏症の判定はできないね。

ビタミンDの欠乏を判断するための「25(OH)D3」の測定は自費になってしまう。技術料を込みにして1検体8000円ぐらいかかるだろう。実は自分の検査を今朝提出したところだ(^_^;) これまでは副甲状腺ホルモン(PTH)を調べる事で間接的にビタミンD欠乏を評価していたが、どのくらい不足しているのか、足りていてもどの位余裕があるのか判断できないですからね。

結果が分かったら25(OH)D3を測定する意味と結果をここで説明しよう。

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2011年1月24日 (月)

インフルエンザ予防のために有効!?

前回の投稿からずいぶん経ってしまいましたが、なかなか載せるのにいいなぁと思う記事をチョイスしていたらこんなにも時間が経っていました・・・


これではいかんとこれかなと思う記事をピックアップ。
すごく面白い!という話ではないけれど、僕の住んでいる県もインフルエンザの流行地域に入ってしまったので、ホットな話題を選んでみました。

風邪とインフルエンザの予防と題したこの記事を引用。
Nutrition WellnessよりCold and Flu Defense


冒頭の文章はインフルエンザの概要的なものなので割愛。
下記のアドバイスの部分ほど載せます。ビタミンCがCMで流行り始める頃なんだけれど、摂りすぎるのもよくないのは知っていますか?

1日に500mgを目安に、一回で大量に摂りすぎるとかえって体内から失ってしまうのに注意した方がいいでしょう。アドバイスをするときには50mgを数回に分けて摂取するといいよとよく言います。


ドリンクなんかは大量に入り過ぎているので要注意ですね。
では、いってみましょう

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2011年1月 5日 (水)

ビタミンD不足で子供達は太る

CartmanbeefcakeNewlogo

以前の記事に書いたけど、脂溶性物質に注目してて、最も注目しているのがビタミンDかもしれない。脂溶性物質をリガンドにする核内レセプターが存在するってことは、遺伝子の転写制御をしている事になり、生体内の代謝にかなり影響を与えているだろう。

こういう物質を「ビタミン」の範疇においておくと、単なる補酵素のように考えてしまいがちだけど、実体は、もっと高レベルな働きをしていて、生体においてかなり重要な物質なんじゃないかな。だから、不足にならないために生体は皮膚で合成する能力を持っていると考えてもいいかもしれない。しかし、昨今の紫外線予防の行き過ぎた啓蒙、野外活動性の低下が著しい先進国では、ビタミンD不足に陥っている人が多いという話らしい。

実は、日本におけるビタミンDの疫学調査の報告もされている。記憶に新しいのが、昨年7月に報告された長寿医療研の調査。愛知県内の特養や介護老人保健施設、認知量グループホーム計46施設に入所している寝たきりになっていない女性435人、平均年齢は86歳の被験者の血中ビタミンDレベルが調べられた。ビタミンDが不足とされる20ナノグラム未満だった人が8割近くいたそうだ。自宅で生活する70〜80代女性はもう少し高値ではあるが、自宅生活をしていでも外に出ない人はビタミンD不足が懸念されるって内容でした。

実は多忙な生活を送っている病院勤務の医師もビタミンD不足になっているという報告もある。日に当たる機会が極端に少なければ、年齢に関係無いのがこのビタミンD不足問題だろう。

私のクリニックに通院されている患者さんの中にも当然ビタミンDが不足している人がいる。彼らに対して、日光浴の指導をしますが、積極的にビタミンD製剤を処方してますね。当然、日中クリニックに籠もりっぱなしの私もビタミンD不足の危険性がありますが、野外を走っている御陰かどうかわかりませんが、今のところ不足にはなっていませんでした。

ちょっと注意しておかなければならないのが、ビタミンDの合成は、日光の影響を受けているため、北半球に住んでいる我々は、ビタミンDの「北緯35度線」問題に引っかかってくるんだ。冬場になると合成のための十分な日照時間が得られにくいんだ。ビタミンD不足の確認も冬場にする必要があるでしょう。

さて、今日のDiet Blog(ダイエットブログ)の話題はビタミンDと子供達。この研究も疫学調査なので、ビタミンD不足と肥満に直接関連性があるとは言えない。屋内に籠もる子供の消費カロリーは少ないから肥満傾向になりやすいし、外に出ないとビタミンDのレベルは低いからね、文献を読んでいないので交絡因子をどこまで考えているのか分からないけど、ビタミンDと肥満の関連性はあると思うよ。

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2010年8月26日 (木)

やっぱり日光浴は大切なようです

英国 Independent紙の "Revealed: how vitamin D can protect us from cancer" (Tuesday, 24 August 2010) という記事によると、ビタミンDがある種の重い病気から守ってくれることを示す直接の証拠が見つかったのだそうです。ビタミンDをお手軽に手に入れるには日光浴が一番です。記事の細かい専門的な内容はともかく、私のような一般人には、一番最後の「毎日数分間、素肌を直射日光にさらすこと」という実践的なアドバイスが一番大切かもしれません。

"Scientists discover how substance controls actions of genes" (遺伝子の働きを制御する物質を科学者が発見) という書き出しで始まる興味深いこの記事曰く、


ビタミンD がヒトの細胞の DNA と結びつき、多発性硬化症や糖尿病、ガンといった疾患に関わる遺伝子を直接制御することによって、身体をさまざまな重い病気から守ってくれることが研究で示された。

皮膚を日光にさらすと、いわゆる「日光ビタミン」が生成されるが、さまざまな重い疾患に関わる遺伝子ネットワークをこの日光ビタミンが直接制御していることを示す直接の証拠が科学者によって初めて発見された。

これまでの研究から、ビタミンD不足に関わる疾患は、たとえば多発性硬化症といった自己免疫疾患や関節リュウマチ、1型糖尿病といったように、増加の一途をたどっているが、これほど多種多様な疾患が発症する仕組みについて、科学者は説明できなかった。

しかし最新の研究が示す有力なメカニズムから、ビタミンD がヒトゲノムの一部と直接結びつくことがわかった。そこに存在する遺伝子は、免疫システムが自分の体内の組織を攻撃することによって生じる、前述のような重い自己免疫疾患に関わることがわかっている。

「自己免疫やガンなどの分野で行われている遺伝子関連の研究で取り上げられている遺伝子は膨大な数にのぼるが、それらはビタミンDによって制御されているようだ」と言うのは、英国オックスフォードにある Radcliffe hospital 臨床神経科医 George Ebers 教授。

「遺伝子と環境の重大な相互作用によってヒトが病気になる場合、そこにはビタミンDが大きな役割を果たしているということが判明する点で、これは間接的だが興味深い証拠だ」

世界中で10億人が不足していると見積もられているビタミンDは、少量なら食事から取り込めるものの、ほとんどは直射日光に当たることによって皮膚が生成するものである。したがって、日光が少ない北方高緯度地域の住民にとって、この発見は健康に大きく関係している。

Welcome Trust の資金援助を受けた研究者らは、活性型ビタミンDで活性化しておいたヒトの細胞を分析した。その結果ゲノムの DNA に沿って、合計 2776 箇所にビタミンDレセプタータンパク質が結合していることがわかった。さらに、その付近にある 229個の遺伝子の活性状態にビタミンDが大きな影響を与えていることもわかった。

「ゲノム全体を調査して、ビタミンDが結合している箇所をすべて探し当てた。これは、ただ結びついているだけじゃなく、遺伝子の機能に実際に影響を与えていると言えるきわめて確かな証拠だ。しかも単にそれだけに止まらない。実は遺伝子の発現を変えているのだ」とEbers 教授は言う。

同教授の説明によれば「ビタミンDが制御しているのが特徴だと思われる多くの自己免疫性病態に関わる遺伝子は有り余るほどあることがわかっている。だからといって因果関係があるとは言えないだろうが、偶然ではない。たまたまそこにあるわけじゃないことは明白だ。自己免疫性病態に影響を与えることがわかっているこのような遺伝子はかなり偏って存在している。それをビタミンDが制御していることがわかったのだ」

"Genome Research"誌に発表されたこの研究がさらなる調査で支持されれば、広範囲の疾患に対してビタミンDがこのように重要な役割を果たしている理由や、もとから北方高緯度に住んでいる人たちが、何世代にもわたって色の濃い肌よりも効率的に日光を吸収する白い肌を進化させてきた理由が説明できるかもしれない。

「ビタミンDの状況は、比較的最近のゲノムにかかる選択圧の中でも最強の部類になる可能性を秘めている。我々の研究はこの解釈を支持しているように思われる。もしかすると、完全に適応するには時間が足りず、我々は北方の環境にうまく対処できていないのかもしれない」と同教授は言う。

オックスフォード大学 Wellcome Trust Centre for Human Genetics の Sreeram Ramagopalan によると、この発見からビタミンDを補うことが重要になると考えられる。「妊娠中および生後早い時期にビタミンDを補うと、後年その子供の健康によい影響を与える可能性がある」

どうすればいいか

ビタミンDは皮膚で自然に作られるものだが、それに欠かせないのが日光の存在である。日光には UVB、つまりB領域の紫外線が含まれており、これによって、皮膚に偏在する 7-デヒドロコレステロールという前駆体物質がビタミンD3に変換され、これが、肝臓や腎臓で生化学的に活性化されたビタミンDに変換される。

このビタミンは魚や貝類にも比較的多く存在するが、卵や乳製品には少ない。身体にビタミンDを充分供給には、毎日数分間、UVケアを一切していない素肌を直射日光にさらすのがもっとも簡単で最良の方法である。ただし肌の色が薄い人たちは、日焼けしないように気をつけること。


たかが日光浴、されど日光浴ですね。

文:fumixie <fumixie@gmail.com>

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