文:屋台ブルー (ライフログ オーガナイザー)
昨日に引き続きTFCから情報を提供します。避難場所で持病の悪化を防ぐために運動は必須です。私も日頃から運動の重要性を説いていますが、これは災害に見舞われた時でも同じです。けいゆう病院の川村先生の情報です。
11/03/24:川村先生から依頼があったので一部修正しました。
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TFC所属:けいゆう病院 川村昌嗣
日常生活の中の運動
大胸筋増強トレーニング
脇を締め、背中の肩甲骨の間を狭めるようにして、大胸筋に力を入れます。
力を入れるときに注意して欲しい点があります。決して息を止めて力まないようにするということです。この状態を医学用語で「バルサルバ手技」といいますが、こうすると血圧が上がりやすくなります。特に血圧が高い方は注意して下さい。息を吐きながら、または、ゆっくり呼吸をしながら力を入れるようにしましょう。
立っている時間を有効に使う
(1)利き脚での片脚立ち
普通に立っていても、均等に両方の脚に体重をかけている人は少なく、体重はどちらか片方の脚に偏っています。まず、片脚立ちしてみて下さい。どちらか片方の脚のほうがバランスを取りやすいと思います。その脚が利き脚ということになります。
(2)反対の脚での片脚立ち
利き脚での片脚立ちが簡単にできるようになったら、次は脚を替えてやってみて下さい。普段、利き脚のほうに重心をかけることが多いので、反対の脚で立つと少し不安定になると思います。利き脚と同じぐらいの安定感を保てるようになるまで続けて下さい。
(3)利き脚でのつま先立ち
反対の脚でも安定して立てるようになったら、次は利き脚でつま先立ちをして下さい。つま先立ちをすることで足の裏の地面と接触する部分が極端に減少するので、安定感が悪くなります。この動作は、普段あまり使っていない筋肉の鍛錬になります。バランスを崩して倒れると危険ですので、(2)がしっかりクリアできるようになってからトライして下さい。また、倒れそうになった場合、すぐつかまるものがある場所で行って下さい。
(4)反対の脚でのつま先立ち
(2)と同様、利き脚でないほうの脚でつま先立ちをする場合、バランスがとりにくく、腿、膝、ふくらはぎにかなりの負荷がかかります。つま先で安定して立てるようになれば、ちょっとした段差につまずくなどして多少バランスを崩しても、ぐっとこらえることが出来るようになるため、転倒する危険性が少なくなります。
(5)膝を曲げての片脚立ち
では次に、膝に力を入れて真っ直ぐに立つ場合の片脚立ちをしてみましょう。この片脚立ちは比較的バランスが取りやすいと思います。しかし、膝を曲げてみるとどうでしょう? 膝の回りの筋肉の収縮具合が変化しますので、安定性が悪くなり、バランスをとるために結構いろいろな筋肉を余分に使うことになります。反対の脚でもやってみましょう。
(6) つま先立ちの膝の曲げ伸ばし運動
(1) の状態から、膝を曲げたり伸ばしたりしてみましょう。つま先立ちの状態で、ゆっくり膝の曲げ伸ばしを行います。不安定な体勢をとることになりますので、壁や手すりなどに少し手や指を触れた状態で行うと安心です。また、この動作は膝への負担が大きいので、痛みや違和感を感じたらすぐにやめて下さい。片脚でうまくできない方は両脚で行ってもいいでしょう。その際、片方の脚に体重をかけるようにして立ってみてください。こうすれば体重をかけたほうの脚の筋肉に負荷をかけることができます。片脚立ちをした場合よりもいくぶん負荷は軽くなりますが、それでも十分な運動になります。
ただし、これらの方法は決して無理にやらないで下さい。まず、普通に立っている状態で片脚立ちができるようになるまで練習してから始めて下さい。壁などにつかまりながら片脚立ちをして、体がぐらぐらしない状態で数分間保てるようになってから(1)に進んで下さい。また、何かにつかまっている手に力が入らないと、バランスを崩したときに体を支えられず危険です。バランスが崩れたときに体を支えることができない人はやらないで下さい。
足を床から離さない状態でもできます。どちらか片方の脚に体重のかなりの部分をかけるようにするのです。その姿勢をある程度保てるようになれば、足を床から離してやってみましょう。
膝を痛めている方に向いている運動
座ったままでできる膝の筋力アップ
そこで、座ったままでも膝の筋力アップが可能な方法を紹介します。この運動は、膝が痛くならない程度の力でやって下さい。
椅子に座った状態で、膝の回りの筋肉に力を入れてみて下さい。力を入れる感覚がつかみにくい方は、足を床に押しつけるようにして膝に力を入れて下さい。それも難しいようでしたら、バスタオルを数回折りたたみ二、三センチぐらい(やりやすい厚さで構いません)の厚さにしたものを膝の間に挟み、それを両側から押しつけるように力を入れましょう。そのまま五秒間ほど力を入れた状態を保って下さい。
その際、息を止めると血圧が上昇するので、ゆっくり息を吐きましょう。五秒間がつらければ、三秒ほどでも構いません。
この動作は、病院で診察を待っているとき、電車に座っているとき、自宅でテレビを観ているときなど、椅子に座っている状態であれば、いつでもできます。自宅は全て畳敷きだという方もいらっしゃると思います。その場合、座布団を何枚か重ねた上に座り、試してみて下さい。
エアー・エクササイズ
バーベルを使わずに同じ効果を
エアー・エクササイズと私が名前をつけたトレーニング方法があります。
まず、横になり両腕でバーベルを持ち上げるベンチプレス・トレーニングを想像してみて下さい。ベンチプレス・トレーニングは、かなりの重さのバーベルを持ち上げなければならないため、もし、耐えきれなくなってバーベルを落としたら危ないと思われたことはありませんか? しかしこのトレーニングならば、重りが落ちてくることを心配する必要も、重いものを動かす際、ついやってしまう勢いをつけることもしなくてすみます。しかも、自分で作り上げた負荷ですので、運動を止めると考えた瞬間に負荷をなくしてしまうことができます。つまり、トレーニングに伴う事故の発生の危険はほとんどありません。
どのように行うかというと、まず、実際にバーベルを両手に持っていると仮定してみて下さい。次にバーベルを持っているつもりで、両方の手を上に持ち上げるようにして下さい。この動作は、横になってやられても、座ったままでも、立ったままでもOKです。
握っている手の指の筋肉、腕を伸ばそうとする筋肉、さらに大胸筋にもかなりの力が入ることが実感できると思います。
実はこのとき、手を曲げるときに利用する筋肉も収縮させて、想像で作り出したバーベルの重さ分の負荷を作っているのです。この動作を繰り返すことで、実際にバーベルを持ち上げるときには使わない筋肉も同時に鍛えることができます。
バーベルをはじめ器具を使ったトレーニングの場合、その器具の働きによって動く方向が決まっていますので、一定方向に動かすことでしか筋肉を鍛えることができません。しかし、このエアー・エクササイズでは、自分の意識次第で、体のあちこちの筋肉をいろいろな方向へ動かすことができます。負荷の程度も自由に変化させることができ、負荷のかけ方も自分なりに調節することができます。ぜひ試してみて下さい。
腕をはじめ、脚や腹筋、背筋など、さまざまな筋肉を、自由にしかも好きなときに好きなだけトレーニングできます。
ここでも気をつけていただきたいのは、筋肉に力を入れているときに決して息を止めないということです。息を止めると血圧が上昇してしまいますし、筋肉へ運ばなければいけない酸素が減少してしまいます。
短時間のトレーニングであれば、ゆっくり息を吐きながら力を入れて下さい。ある程度以上持続して行う場合には、まずゆっくり息を口から吐いて、その次に可能であれば鼻から息を吸うようにして、ゆっくり呼吸をして下さい。鼻炎などがひどくて鼻呼吸が困難な方は、もちろん口からで構いません。苦しくならない程度の時間で行って下さい。
その際、脈が遅めの方は、力を入れ過ぎないよう気をつけて下さい。力を入れ過ぎると胸腔内圧が上昇し、脈が一時的にかなり遅くなってしまうので注意しましょう。
このエアー・エクササイズは、どの筋肉にも応用できます。ご自身が鍛えたいと思っている筋肉(主運動筋)と、その筋肉に拮抗する筋肉(拮抗筋)両方に力を入れれば、いつでもどこでも自由にでき、負荷のかけ方や時間も調節可能です。いろいろと工夫してやってみて下さい。
拮抗筋を意識的に使って鍛える運動
筋肉が動くことを意識する
拮抗筋を利用する方法において、徐々に筋肉に込める力を強くしていき、力を入れる持続時間を長くすれば、かなりの筋力低下を予防でき、筋力アップも可能です。
筋力が低下した方は、自分の体重を支えることすら困難ですので、そこに余分な負荷をかけて運動することなど至難の業です。そのため、ついついリハビリを避けるようになりますが、体を動かさないでいるとますます筋力が低下し、ついには寝たきりの状態へと移行してしまう危険があります。
(1)脚を曲げながら椅子に座る
椅子に座るとき、普段、私たちは脚の筋肉の力を抜き、体が下に落ちる力、つまり重力を利用して座っています。ではこの動作を行う際に、ゆっくり脚を曲げながら腰を落として座ってみて下さい。途中からかなり辛くなってきませんか?
ゆっくり動くと、その時間の分だけ脚で体重を支えていなければならず、かなりの筋肉を使うことになります。ゆっくり座るこの動作では、脚の筋肉のほとんど全てを使って体重を支えているのです。筋力が衰えて不安定な方は、脚にかかる負荷を意識して、手で補助をして負荷を軽減しながら、ゆっくり膝を曲げて座りましょう。
(2)腕を曲げる
今度は腕を曲げてみましょう。特に力は必要ありません。ここでは腕を曲げるときに使う筋肉だけが収縮し、腕を伸ばすときに使う筋肉は弛緩していています。できるだけ効率的に体を動かすために、収縮させている筋肉に拮抗する筋肉は弛緩させているのです。
では。次に腕を曲げる際に拮抗する(腕を伸ばす際に使う)筋肉も収縮させてみましょう。前に伸ばした腕に力を入れて、その腕を内側に曲げ、力こぶをつくってみて下さい。このとき、腕全体に力が入っていますので、曲げる筋肉も伸ばす筋肉も収縮しています。次に力を入れたまま、腕を少しずつ伸ばしていきましょう。腕にかなり力が入りますので、運動した気分になりませんか?
先ほど、力をいれずに腕の曲げ伸ばしをしていた際と比べてみて下さい。同じ動作でありながら、拮抗筋にも力を入れて曲げ伸ばしをすると、かなり腕が疲れますよね。つまり消費カロリーはかなり増加しているということになります。
(3)寒さ対策
立っている姿勢で両手を握りしめ、大胸筋、腹筋、両脚など全身の筋肉に力を入れてみて下さい。なんとなく温まってきませんか? 夏なら暑くなってきます。
寒いときには震えますね。これは全身の筋肉を収縮させることにより、熱をつくっているのです。よく、手をこすり合わせている方がいますが、外気温が極端に低いと、こすり合わせてつくった熱よりも、寒い空気に新たに触れることによって失う熱のほうが多く、かえって冷えてしまうこともあります。しかし、全身の筋肉に力を入れれば、効果的に熱を作り出せます。体を動かさずに、筋肉に力を入れたり抜いたりすることにより、筋肉で熱を作ることが出来、体を動かさないので、体を動かして熱を作ったときよりも熱が周囲に逃げにくくなります。
ただし、力を入れるときは、息を止めないでゆっくり吐いたり、ゆっくり呼吸を続けて行って下さい。
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