カテゴリー「やせると危険!?」の記事

2010年9月14日 (火)

長期にわたる減量は健康障害を引き起こすかも

モノの見方は色々あるね。私は今日のニュースのような視点を持っていなかったから、ハッとさせられたよ。脂溶性の物質は脂肪組織に蓄積されやすいから痩せると血液中に放出されてしまうってのも納得できる。しかし、血中に放出されるのなら、いわゆるデトックス効果があり体外へ排泄される可能性も高くなるんじゃないかな。今回の報告は、痩せた人の血中レベルが高かったということだけで、これが健康障害と関連があったという報告ではない。血中レベルで高値だったということは、排泄も増えている可能性が高い。血中レベルだけでなく尿中のレベルはどうだったのだろう?やっぱり文献を読まないと分からないかな。

アブストラクトを読めば解析された7種類の汚染物質、Persistent organic pollutants(POPs)はわかるから、ちょっと紹介しておこう。

参照ページは、東京都健康安全研究センターの「内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)

1) trans-nonachlor(trans-ノナクロル)
2) p,p'-dichlorodiphenyldichloroethylene(p,p'-DDE)
3) β-hexachlorocyclohexane(ヘキサクロロシクロヘキサンHCH)
4) PCB169(ポリ塩化ビフェニール類)
5) PCB180(ポリ塩化ビフェニール類)
6) 1,2,3, 4,6,7,8-heptachlorodibenzo-p-dioxin(七塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン:ダイオキシン関連)
7) 1,2,3,4,6,7,8-heptachloro- dibenzofuran(ジベンゾフラン関連)


長期にわたる減量は健康障害を引き起こすかも
Long-Term Weight Loss May Be Harmful to Health

香港(ロイター)9月8日 - 長期にわたって減量すると、糖尿病、高血圧症、そして関節リウマチなどの疾患と関連性が示されている産業性汚染物質が血流に放出されてしまうかもしれないと、7日の火曜日に研究者から発表があった。

この物質は、普通なら脂肪組織に蓄えられているけど、減量によって脂肪組織が代謝されることで、血中に流れ出てしまう、と韓国大邱市Kyungpook大学のDuk-Hee Lee医師は述べた。

「減量は良いけど体重増加は身体に良くないいう固定概念に囚われて生きている... しかし、減量による(血中の)(汚染物質の)増加は、様々な方面から健康に影響を与える可能性がある」、とロイターに宛てた電子メールにコメントしている。

米国で、1,099名の対象において、Lee医師は7つの物質を解析した。この報告は雑誌Obesityの9月7日号に掲載されている。

「血流にいったん放出されてしまうと、これらの物質は生命に重要な器官に達してしまう」、と研究者は述べている。

「10年間を通して減量が大きかった人は、体重が増えた人や変わらなかった人に比べて、これらの物質、残留性有機汚染物質(POPs)の濃度は最も高かった。

「POPsが安全じゃないという証拠は積み上げられている。POPsは、2型糖尿病、高血圧症、冠動脈疾患、関節リウマチ、歯周病に関連性がある、とLee医師は話している。

これら汚染物質の濃度の違いを説明するために、年齢、性別、人種に分けて調査をしたが、体重の変化に統計的な有意差が残っていた。

この悪影響が、減量で得られる利点を凌駕してしまうかどうか確認するため更に研究が必要だ、とLee医師は述べた。

文:屋台ブルー

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2009年4月25日 (土)

成人後5キロ以上やせると死亡率1・4倍

今日のエントリーは、患者さんから教えてもらった読売新聞の記事なんだけど、読んだ人いる?

私が紹介しようと思っているReutersのニュースと関連があるから合わせてエントリーを書こうとしていたけど、長くなるから分割することにした。

ということで、まず最初に読売新聞ネタから。

成人後5キロ以上やせると死亡率1・4倍…肥満より危険?(読売新聞)

 成人後に5キロ・グラム以上体重が減った中高年は男女とも、死亡する危険が1・3~1・4倍高いことが、厚生労働省研究班(主任研究者=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)の大規模調査でわかった。
 体重が増えても死亡率増加との関係は認められなかった。肥満になると死亡率が上がるとする従来の研究とは反対の結果で、肥満の健康影響を重視する国の健診体制に一石を投じそうだ。
 研究班は、全国の40~69歳の男女約8万8000人を平均約13年間追跡調査。がんや循環器疾患など主な病気、ダイエットによる激やせなどによる影響を除いた上で、20歳時からの体重変化と死亡率との関係を年齢別に調べた。
 その結果、調査期間中に6494人が死亡した。このうち、5キロ・グラム以上体重が減少した人は、変化が小さかった人に比べ、男性で1・44倍、女性で1・33倍死亡率が高いことがわかった。
 一方、20歳時から5キロ・グラム以上体重が増加した男性は、死亡率が0・89倍に下がった。女性では変化が見られなかった。体重が10キロ・グラム以上増加した人で見ても、男女とも死亡率に大きな変化はなかった。
 これまでの複数の研究によると、極端な肥満は死亡率を上げる。しかし、日本人は外国人とは異なり、極端な肥満がもともと少なく、肥満が死亡率に与える影響が調査結果には反映しなかったとみられる。
 やせると死亡率が上がる原因は今回の調査からはわからなかったが、体重低下で免疫力が落ち、感染症などにかかりやすくなることが考えられる。分析した斉藤功・愛媛大准教授(公衆衛生学)は「成人後に5~10キロ・グラム程度太るのは自然な現象。肥満の危険性が強調されることが多いが、体重減少も重視しないといけない」と指摘している。
(2009年4月23日14時34分  読売新聞)

この記事、何度読み直しても驚くような内容じゃないよね。当たり前というか私には当然のように思えるんだけど... でも、タイトルだけ一人歩きして、「痩せると危険」なんて考える人が増えると恐ろしいかも。

驚くような内容じゃないと考えた理由を説明しよう。

対象となっている被験者の年齢が40歳〜69歳ということは、これが追跡調査に参加した時の年齢であれば、20歳時の体重は、今から少なくとも20年前ってことになり、追跡年数の13年を加えると33年前になるだろう。

2200

そこで、1976年の20歳代の日本人平均BMI値をこのグラフからみると、男は21.5で女は21だった。みての通り標準体型。

次に、追跡調査をした13年後にあたる1989年の40歳代のBMI値は、男が23.1、女が22.7ぐらいになっている。ということは、170cmの男なら4.6キロ増え、160cmの女は4.4キロ増えていることになる。

何がいいたいか分かるよね。新聞の最後にある愛媛大准教授、斉藤功先生のコメントの通り「成人後に5~10キロ・グラム程度太るのは自然な現象」ということになる。この自然に増えてしまう要因も色々言われているけど、運動不足に栄養過多の環境因子が大きな理由だろう。

したがって、自然に増えるようなこの時期に、5キロ減るってことは、10キロ近い体重が減ったと考えられるよね。新聞には「癌や循環器疾患などの病気、ダイエットによる激やせの影響を除いている」と書かれているとなれば、、ダイエットもしないで10キロ近く体重が減るってのは異常だと思えるよね。

癌や循環器疾患じゃないと書かれていても、とてつもないストレスに曝されているのかも。栄養障害や慢性疾患による免疫の低下により感染症の増加してるって、医者じゃなくても容易に考えられるだろう。

それから、「20歳時から5キロ・グラム以上体重が増加した男性は、死亡率が0・89倍に下がった。」なんて書いてあるけど、自然に5キロ近い増加を示す統計データをみればわかるように、体重は増えても男の平均寿命も伸びている年代(1976年:72歳、1989年:75歳)を考慮すれば、不思議でもなんともないんじゃないかな?

前述の斉藤先生もコメントしているけど、「体重減少重視しないといけない」というように、体重増加による健康障害を注意するのは当然だけど、ダイエットじゃない極度な体重減少に注意を払うのは常識だろう。

どうして体重増加で死亡率が増えないのか? 体重増加による影響はもっと人生の後半に訪れるのかもしれない、しかし、癌や循環器疾患などの病気を考慮していないというのも解せないけどね。

日本人の三大死因は、癌、循環器疾患(脳血管、心疾患)、そして感染症であり、肥満は癌と循環器疾患に関わっているというのも常識。とすれば、記事に書いている「癌や循環器疾患などの病気、ダイエットによる激やせの影響を除いている」という話なら、肥満で死亡率が増えないのも当たり前のような...

どちらにしろ、この新聞の論点は全く訳がわからない。こういう内容の記事を素人が適当に書くんじゃなくて、きちんとした専門家の分析記事を載せて頂きたかったよね。

体重の変化という問題は、いつ頃にどの位どの程度の速さで生じるかが重要だ。この新聞記事では、そういう問題に触れていない。

実は、今日の私が紹介するReutersの記事は、まさに、体重の変化が「いつ」起こったか注目した疫学調査だったから興味深かったよ。

次のエントリーを読んで下さい

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2008年7月 5日 (土)

ここがおかしい 日本人の栄養の常識

2010年8月6日追記 - ふと立ち止まり、古い自分の記事を読み、ネットで知り合った松本進作先生を思い出す。療養生活の傍ら「Dr.松本の医学落穂拾い」(なんと、甥御さんか姪御さんがバックナンバーを復活させてくれてます!感謝!でも、本文が消えている...^^;)で自分の思いを書かれていた松本先生に一度もお会いしたことは無かったけど、質問に対して丁寧に返事をしてくださった態度からその人柄はうかがえましたね。松本先生は私の記事にも丁寧なコメントを残して頂き、今となっては誇りになってます。さて、突然なんですが、私の古い記事にいくつか追記をしていく。新しい情報を咀嚼し続けているから、情報は新しくしなきゃね。これは、医者に限らず、人間が生きている限り続けなければならない作業でしょう。読者の皆さんも、新しい知見があれば教えて下さい。

-----ここからオリジナルなんだけど、追記もあるよ-----

こんな所でぶっちゃけて話す必要はないけど、私は本を読むのが遅い。全然自慢にならないから、ここここ、そして有名なここを読む度に。溜息しか出ないって感じだ。

「あんなに読むのは無理だ。」とネガティブな気持ちにならないで、多読できる人がいるんだから私もいずれ出来る気がしている(笑)。そんなわけで本を持って歩くようになった(笑)。

私の読書の話はさておき、ネットで偶然巡り会うことができた松本先生に紹介してもらった本、桜美林大学の柴田博教授の書いた「ここがおかしい日本人の栄養の常識」を紹介しよう。

東京都老人医療センターの老人研で行われた100歳検診のデーターによると、少々小太りの人のほうが長生きであると報告されています。今日の少々メタボの人のことです。」と、松本先生はブログでおっしゃっていたので、その根拠をお尋ねしたところ、この本を紹介していただけました。

読んでみると、興味深い視点(国民健康栄養調査のデータ)から今の日本人の栄養状態を論じているから、欧米のデータを紹介している私のような人間には、いい戒めになりました。

それでも、柴田先生の論法に納得できない部分はある。ざっと取りあげて自分の知識の整理もする。

これだけは納得できないという点を1つ挙げる。「太っている人ほど早死にする?」のセクションにはやっぱり問題があるだろう。

メタボリックシンドローム(以下メタボ)の定義は新しい(概念は古いけど)。メタボっていうのは内臓脂肪の過多な状態(内臓脂肪面積100平方センチメートル以上)であり、BMI値と関係はない。どうもBMI値とメタボを混同してしまう人が多いようだ。

この定義は新しいので、メタボは長生きできるかどうか今の時点で答えは無い。これからの前向きな研究で明らかにされていくだろう。したがって、今は断定的なモノの言い方はできないはずだ。

内臓脂肪を多少つけて長生きするよりも、ガリガリにやせて早死にする方がよいと考えるのは、特殊な美意識の持ち主か、タコツボ的専門家のみであろう。

柴田先生のこの発言は極端すぎるんじゃないかな。説明している柴田先生自身が内臓脂肪過多とBMI値を混同しているように見受けられる。というのも先生が根拠にしている国民健康栄養調査には、内臓脂肪に関するデータ(腹囲)は全く含まれないからだ。

先生は、「太っている=BMI値高値」という考えを持たれているから、日本人のデータを見て、「BMI値低下=太っていない」という結論になっている。

しかし、日本人にとって、そもそも「太っている=BMI値高値」という考えが当てはまらないんじゃないかな。日本人の肥満は白人や黒人の多い欧米の肥満と異なる(まだ確証は無い。2010年8月6日追記:まあ勉強不足でしたね。最近ちょっとこの話を話題にしているから「BMI と WHR はどちらがいい? - 屋台ブルーの補足」を読むといいだろう。)。人種差で説明もされている。インスリン分泌能が弱いんじゃないかとか、節約遺伝子の発現に差があるんじゃないかとか、色々な理由が挙げられていて、明らかに肥満状態に差がありそうだ。

日本人は、健康的な肥満者は少なく、少し肥満が進めば病気を発症させてしまう特徴がありそうだ。腹囲(メタボのスクリーニング検査)が85センチの男性で、平均BMI値22(2年前の坂出市民病院の健診データより)というデータがある。そもそも腹囲85センチで内臓脂肪を評価する点に問題はあるけど、BMI値で肥満かどうかの判断はできないだろう。

まだまだ腹囲を含めて検証の余地はあるし、日本人の肥満の定義がハッキリしない今、BMI値で健康かどうか論議すること自体無駄だろう。ゆえに柴田先生のように断定したモノの言い方をされると抵抗を覚えてしまうのは私だけ?

その他の気になるところを挙げると、女性ホルモンのエストロゲンは脂肪組織から分泌されるって話も知らなかった。コンセンサスの得られている情報なのだろうか?もしそうなら私の勉強不足になるだろう。少し調べる必要がありそうだ。(2010年8月6日追記:これも私の勉強不足でしたね。まさに教科書レベルの話のようでした。女性ホルモン(エストロゲン)の産生は、卵巣だけでなく脂肪組織、視床下部などP450アロマターゼという酵素が発現している組織で産生されるそうだ。卵巣や副腎で産生されたアンドロステンジオンが脂肪組織でエストロン(E1)に変換され、一部エストラジオール(E2)にも転換されみたいだ。まあ詳しい代謝経路はもう少し勉強しないといけないね。)

「糖尿病が激増している?」のセクションで、柴田先生達が調査している群馬県の40〜79歳のT村の住民のヘモグロビンA1c(糖尿病マーカー)の10年間のトレンドを示している次の図を見てください。

Hba1c

このデータでみても、糖尿病が一貫して増えているとする根拠はまったく見当たらないことがわかる。

差があるように見えるのは私だけなんだろうか。確かに空腹時血糖の推移のグラフ(示さないけど)は年次的な変化が見られなかった。しかし、血糖値とは異なり、ヘモグロビンA1cの場合、0.1の変化に大きな意味があるんじゃないだろうか? 確かに糖尿病の増加の説明になっていないだろう。しかし、将来、耐糖能異常の問題が出てくると示唆しているように見えるんですけど...

最後にもう一つ、「良い食品、悪い食品がある?」のセクションで、「良い食品と悪い食品に分ける発想は、食と栄養のバランスに対して最も有害なものといえよう。」と書かれているけれど、この考えには同意できない。栄養素偏重主義に反対して食品を食べようという考えには同感できるけど、加工食品の問題に触れていないところが不十分だと思う。同じ油でもトランス脂肪酸のような人工物の問題にも触れて欲しかった。

健康科学の世界もいまだ ”植民地” である。日本に多い病気の専門家より、欧米に多い病気の専門家の方が多い状態であるからだ。

柴田先生のこの言葉には考えさせられる。本当にまだまだ分かっていない事だらけだ。

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