歳をとると友人との付き合いや社会との関わりが精神面に影響を与えるとよく言われるが、影響はそれだけに止まらない。孤独は血圧の上昇に直接影響を与えることを示す記事がいくつかある。
その記事は、
"Loneliness is a unique predictor of age-related differences in systolic blood pressure" という論文が元ネタになっているのではないかと思われる。その抄録にこんな記述がある。
... the authors found that loneliness was associated with elevated systolic blood pressure (SBP) and age-related increases in SBP, net of demographic variables, health behavior variables, and the remaining psychosocial factors. ...
... 著者らは、孤独が収縮期血圧(SBP)の上昇、SBP の加齢性上昇、純人口統計学的諸変数、保健行動の諸変数、心理社会学的要因に関係していることを見出した。...
この論文を引用した記事によれば、50歳以上で孤独だと血圧が上昇する場合がある。シカゴ大学の心理学者ルイス・ホークリー博士らのチームは、5年間かけて 50歳から68歳までの無作為に選ばれた白人、アフリカ系アメリカ人、そしてラテン系のアメリカ人の229名を調査した。当初博士らは、血圧の上昇はうつとストレスで説明がつくのではないかと見ていたが、50歳以上の孤独な人たちの血圧が上昇していることは、そういった要因だけでは説明できないことが分かった。そして調査の結果、孤独が4年後の大幅な血圧上昇に直接関係していることを見出した。全被験者のうち、孤独感がもっとも強い人は、社会と満足できる関わりを持っている人よりも血圧が10%、14.4mmHg高かった。この孤独と血圧上昇の関係は年齢とも、喫煙や肥満といったその他の要因とも無関係だし、うつやストレスとのつながりも無かった。つまり、孤独それ自体が、まるで独立した一つの健康リスク要因のように振る舞っていたらしい。
しかしここで注目すべきはホークリー博士の次の言葉だろう。"People who have many friends and a social network can feel lonely if they find their relationships unsatisfying, while people who live solitary lives may not be lonely if their few relationships are meaningful and rewarding."(UPIの記事より抜粋)
友人がたくさんいて社会とのつながりがあっても、その関係に満足できなくなると人は孤独を感じるし、 一人暮らしでも、有意義で実り多い付き合いがわずかでもあれば孤独になることはない。
勇気づけられるありがたい言葉である。一人暮らしをしていることと孤独は別物なのだ。
サー・アーサー・コナン・ドイル氏描くところのシャーロック・ホームズ氏には、ディオゲネス・クラブという人付き合いが大嫌いな人用のクラブを創設したマイクロフトというふとっちょの兄貴がいるが、想像するに、彼もひょっとしたら高血圧だったのではあるまいか。なにせこの人物、このクラブだけが唯一の例外でそれ以外はどこにも行かず、自宅と職場を往復するだけというのだから。
関連記事の一つは "Loneliness increases your blood pressure" (Telegraph 18 Mar 2010)。
大学の新しい研究によると、50歳以上で一人ぼっちだと血圧が上がることがある。
他の人との付き合いがないと楽しくないばかりか、体の健康にも良くないことが研究で分かった。
孤独が4年後の大幅な血圧上昇に直接関係していることを心理学者らが見出した。この関係は年齢とも、喫煙や肥満といったその他の要因とも無関係だ。
うつやストレスとのつながりも無い。
「孤独それ自体が、まるで独立した一つの健康リスク要因のように振る舞っていた」と研究者のルイス・ホークリー博士は Psychology and Ageing 誌で語っている。
シカゴ大学の心理学者ホークリー博士は、健康と生活の質におよぼす孤独の影響の問題に関する研究の先駆者だ。
症状がほとんど無いところから、よく沈黙の恐怖とも呼ばれる高血圧は、多くの面で健康を損なう。
高血圧になると、心臓麻痺や卒中の危険が増大するし、腎機能も損なわれる。最高血圧が140mmHg を越えると高血圧とも呼ばれ、米国では初期診断のもっとも一般的な結果で、この国の死因の約18%はこれが主因ないし一因になっている。
このチームは50歳から68歳までの229名の研究を元に調査を行った。この人たちは、加齢に関する長期間の研究のために無作為に選ばれたグループの一員だった。
被験者らには、自分を一人ぼっちだと感じているかどうかを判定する一連の質問が与えられた。
求められたのは、「周囲の人たちとは共通点が多い」とか「社会とのつながりはうわべだけだ」、「友だちなんか作ろうと思えばすぐにできる」といった選択肢を通して、他の人とのつながりを評価することだ。
5年にわたる調査の間に、研究開始時に報告された孤独感と当該調査期間における血圧の上昇には明らかな関係があることをホークリー博士は見出した。
「孤独との関係で血圧が上昇しても、2年間では調査にひっかからなかったが、4年の間血圧は上がり続けていたのだ」と同博士は言う。
孤独感がさほど強くない人にすら影響はあった。全被験者のうち、孤独感がもっとも強い人は、社会と満足できる関わりを持っている人よりも血圧が10%、14.4mmHg高いことが、4年間にわたる研究から分かった。
孤独な人たちの血圧が高い裏には、社会とのつながりにまつわる不安があるのかもしれない。
二つめは "Loneliness linked to higher blood pressure" (UPI. March. 17, 2010)。
米シカゴ発。3月17日 (UPI)。
50歳以上で、しかも孤独を感じ他人とのつながりが無い人は血圧が高いことを米国の研究者らが見出した。
シカゴ大学のルイス・ホークリー博士らのチームは、血圧の上昇はうつとストレスで説明がつくのではないかと見ていたが、50歳以上の孤独な人たちの血圧が上昇していることは、そういった要因だけでは説明できないことが分かった。
「孤独それ自体が、まるで独立した一つの健康リスク要因のように振る舞っていた」と Psychology and Ageing 誌に寄せた記事でホークリーは書いている。
友人がたくさんいて社会とのつながりがあっても、その関係に満足できなくなると人は孤独を感じるし、 一人暮らしでも、有意義で実り多い関係がわずかでもあれば孤独になることはない、とホークリーは言う。
研究の対象になったのは、孤独と他人とのつながりに関する質問に答えた。50歳から68歳までの無作為に選ばれた白人、アフリカ系アメリカ人、そしてラテン系のアメリカ人の229名である。
もっとも孤独を感じている人は、社会とのつながりがもっとも深い人よりも、血圧が 14.4mmHg 上昇していることが4年にわたる研究で分かった。
「孤独の特徴は他人とつながりたいという衝動だが、否定的な評価や拒否、失望に対する恐怖の現れでもある」とホークリーは言う。
文:fumixie <fumixie@gmail.com>
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