心房細動に関する、酔いも覚める衝撃的ニュース
ライフログ・オーガナイザー:屋台ブルー
走り始めた理由の1つに、ビールを美味しく飲むため、という中高年の市民ランナーは多いと思います。私もビールを飲んでも太らないために走っているような、40代だったと思います。
アルコールと不整脈の関連性は、多くの観察研究で示されている。特に、不快感を感じる心房細動というタイプの不整脈との関連性が示されているので、心房細動を持っている患者さんには、当然のようにアルコールの摂取量を減らすか、止めるように指導していました。
こういうライフスタイルに対する指導は、たいがいのところ、観察研究を元にアドバイスされているため、批判的に論じられることも多いんです。
医学情報を読み解くために 知っておかなければないらない基本事項として、観察研究をどう解釈するか、考える必要があります。統計的な意味をを理解したければ、「観察研究」とか「コホート研究」というキーワードで検索してください。
私が言いたいことは、観察研究から得られた結果は、「アルコール摂取」と「心房細動」に関連性があるという事だけで、「アルコール摂取」をすれば「心房細動」が増える、といった因果関係までは、言えないということ。だから、疑い深い人は、何か他に交絡因子が絡んでいるんだろう、なんて ツッコミを入れます。
ACC.19(第67回米国心臓病学会)で、とうとうオーストラリアのグループが、ランダム化比較試験、Alcohol-AF 研究の結果を発表しました。
6つの医療機関が協力して被験者を登録しています。もともと登録する患者さんは、中等度のアルコール常飲者(週にアルコール16 dinks[注:オーストラリアでは1 drink アルコール10g)でなければならなかったため、中等度のアルコール常飲者に禁酒させることがどれほど困難だったことか!
700名近い患者さんを募集したのですが、禁酒グループと飲酒量を変えないグループに、それぞれ70名ぐららいしか振り分けられなかったみたいです。そして、1年間フォローアップする予定も6ヶ月で中止になっています。やっぱり酒飲みに酒を止めろと指導するのは難しかったそうです。参加者の強い意志がなかったらできなかった研究だったことがうかがえます。
心房細動は、不快に感じる不整脈というのが、問題ではなく、心原性脳梗塞の強力なリスクファクターであることが問題なんです。慢性心房細動になれば、抗凝固薬という血液サラサラのお薬を生涯飲み続ける必要があります。これは患者さんにとって経済的負担を強いられます。できるだけ発作性心房細動の段階で、カテーテル治療であるアブレーションをして根治することが望まれるし、慢性心房細動への進展を防ぎたいところです。
発作性心房細動と言えども、他のリスクを評価した場合、抗凝固療法が望ましい場合があります。不整脈以外のリスクを評価する目的で、医療サイドは、心房細動を発症した患者さんに対して、CHA2DS2VAScスコアという評価をを使います。詳細は他のところでみてください。この研究で登録した被験者は、平均1.5ポイントというリスクの低い人たちでした。平均年齢が61歳で、2/3の人は発作性心房細動を持っていて、1/3の人はアブレーションの既往があるグループです。
なんと、禁酒グループの61%にあたる43名(70名中)は、6ヶ月間の完全な禁酒をしています!そして86%の人は通常のアルコール摂取量の70%をカットしたんです。素晴らしい!
そして、主要評価項目である発作性心房細動の再発時間の延長が、禁酒グループで37%伸びました! 2つめの評価ポイントであAF burden(心房細動負荷:心電図上の所見)も劇的に改善したそうです。禁酒グループで46名、飲酒グループで25名が、0%AF burdenでした。
他にもいいことはあります。禁酒グループは、BMI値、血圧も明らかに低下しました。MRIを使って心房容積の変化をみても、左房容積(LA area)の減少、左房駆出量(LA emptying fraction)は増えていました。
この結果は、あくまでも学会発表の内容なので、まだエビデンスにはなっていません。それでも、今までの観察研究と組み合わせると、因果関係がかなり示されてきていると思われるため、心房細動に禁酒がどれほど効果的なのか示されています。文献が発表されるのが待ち遠しいですね。
しかし、酒飲みで、ランナーの私には悩ましい選択を迫られています。ランニングも飲酒も心房細動のリスクファクターとなれば、心房細動を起こさず、走って飲むためにアブレーションを受けた方がいいということでしょう。まだ心房細動を経験したことがないが、心房細動を発症したら、まずアブレーションを受けた方がいいですね。
そして、週末にしか飲酒しないライフスタイルに変更しました!
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