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2012年9月11日 (火)

減量しなくてもエクササイズで睡眠時無呼吸の重症度改善

文:屋台ブルー <ライフログ・オーガナイザー>

古い記事にコメントがいまだに続いていて内容のアップデイトをしなきゃと思いながら随分時間が経ってしまった。エクササイズが本当に睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症度改善に繋がるのか、2009年5月の自分の記事以降に新しい知見があったのかどうか今回見ていくことにしよう。

SASの症状改善のエクササイズをみると。全身運動のエクササイズと上気道の筋肉を鍛える部分的エクササイズがあることに気がつくだろう。今日紹介する報告は全身運動のエクササイズがSASの症状改善に効果があるかどうか調べた報告で、今年5月の雑誌The American Journal of Medicineに掲載されていた。

この報告を読むと、私が先に紹介した2009年の報告に関する解説もあったんで文献のディスカッションを中心に説明してみよう。

しかし、私は説明が下手なんでダラダラ説明になっている。詳細を知りたい人だけ読んでください。

簡単に結論だけ知りたい人に最初に説明しておこう。全身運動のエクササイズは体重が変わらなくても独立してSASの重症度改善因子となっている。

初めは理由として上気道の筋力改善が示唆され、上気道を部分的に鍛えるエクササイズ介入試験をしてみたが結果は一致しなかった。そこで、咽頭喉頭周囲の脂肪分布が変化することで上気道の拡張能が改善したからだと理由付けている。また、エクササイズを止めると重症度は悪化する。すると、2009年の報告で示された上気道の筋力トレーニングをして短期的に重症度を改善させ、全身運動のエクササイズも加えることで症状悪化予防になるかもしれないという話だ。

では、詳細に興味がある人は続きをどうぞ。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の最大の危険因子は肥満だ。肥満解消になる全身運動のエクササイズをすればSASの重症度改善に繋がると誰もが考えるだろう。しかし、体重の変化に無関係で独立した因子としてエクササイズがSASの重症度改善に効果があるかどうかまだ明確にされていなかった。今年5月の雑誌The American Journal of Medicineでエクササイズの長期的な効果が示された。

ウイスコンシン・スリープ・コホート試験に登録されている30歳から60歳の成人1521名を無作為に選択して試験開始時と4年ごとにポリソムノグラフィ(PSG)検査と2年ごとににエクササイズ情報を集めた報告だ。

エクササイズの情報は、習慣的なエクササイズ、例えばジョギング、スポーツ活動、エクササイズ教室、自宅でのワークアウトやジム利用などを週に何時間しているのか質問票から得ることで、時間によって、0時間/週、1〜3時間/週、4時間以上/週の3つのカテゴリーに区分している。

SASの評価は、ポリソムノグラフィ(PSG)を使ってAHI(Apnea Hypopnea Index)スコアを計測している。AHIスコアっていうのは、睡眠中に10秒以上の無呼吸(Apnea)もしくは10秒以上気道流速が低下(Hypopnea)が1時間当たり何回生じたかで重症度を判定している。AHIスコアが5以上でSASの診断がつけられ、20以上で中等度(この文献では15以上)、40以上で重症になる。

Exercise_ahifig_2結果を言うと、試験開始時にエクササイズをしていない人のリスクを1とすると、8年経過すればエクササイズを週4時間以上している人は、SAS軽症(AHIスコア5以上)リスクが0.59(41%低下)、SAS中等症(AHIスコア15以上)リスクは0.47(53%低下)に有意に低下する。BMI値で補正してやると、統計的な有意差は消失してしまったがトレンドが残った。この結果は左の図の黒塗りの■で示された結果だ。

88年の追跡期間中にエクササイズが増えた人や減った人がいる。エクササイズの時間が増えても変化しなかった人と比べてAHIスコアは変わらなかった、しかし、エクササイズの時間が減った人は、明らかにAHIスコアが悪化(上昇)した。BMI値で補正すると統計的有意差は先ほどの結果と同様に消失してしいトレンドだけになる。

きびしい物の見方をする人だっふたら統計的有意差が示されていないので、この報告だけでエクササイズがSASの重症度改善の独立因子になっているかどうかわからない。しかし、エクササイズが減量以外の何か別の影響を与えてSASの重症度が改善されている可能性は残り、以前報告された横断解析により得られたAHIスコアとエクササイズの負の相関(BMIで補正後)をサポートする結果にはなった。

11名の被験者にエクササイズ(毎週2時間のエアロビクス教室と2時間のウエイトトレーニングを6ヶ月間)をさせた小規模な介入試験で、体重が変化しなかったにも関わらず、AHIスコアが27%低下した報告や、10名のエクササイズグループ(呼吸法とエアロビクスを週に5時間、12週間)が体格の変化無くAHIスコアを27.5%低下させたという報告とも結果は一致した。

さらにもう一つ、エクササイズでBMI値が5%低下したらAHIスコアは45%低下した結果もある。

全身運動のエクササイズがどうしてSASの重症度改善に繋がるのか疑問は生まれる。理由としてエクササイズによって上気道の筋力がアップするからじゃないかという仮説生まれる。この仮説を証明するために3つの無作為比較試験が実施された。

私が2009年5月に紹介した報告は、当にこの3つの臨床試験の1つである。

最初に上気道を筋肉を鍛えてSASの症状を改善させた報告は、ディジェリドゥー(didgeridoo:オーストラリアの先住民、アボリジニが使う管楽器の1つで、太くて長い空洞の木でつくられたパイプ様の楽器で低い反響音を奏でる)を吹いて上気道の筋肉を鍛え(1回25分間、週に6回、4ヶ月間吹く)てやると、AHIスコアは26%低下した。しかし、この研究にはいくつか問題点があり、コントロールに使ったグループは単に臨床試験に登録しただけの人が含まれていたり、人為的な評価以外の方法で経過がみられていないし、SASの評価がAHIではなく質問票のみだった。

そして次の報告は私が2009年にとり挙げたもの。複雑な口腔咽頭エクササイズ(引き続き連絡をいただければ詳しい方法を教えますよ)を毎日30分、3ヶ月すればAHIスコアが39%低下した結果だ。このエクササイズでBMI値に変化は無かったけど頚部周径は短縮した。

最後の試験は、口腔内から電気刺激で口腔咽頭筋エクササイズを20分間、日に2度、8週間してもAHIスコアに変化がなかったため、3つの臨床試験で見解が一致しなかった。

今までは、睡眠中の上気道の筋力低下がSASの病態だと考えられていた。しかし、日中にエクササイズをすることで睡眠中の上気道の拡張能を改善させられていたんじゃないかと考えるようになる。

ここからは彼らのファンタジーだ。上気道の筋肉を鍛えることだけが重症度改善に繋がるのではなく、上気道の拡張能の維持も重要なんだと。体脂肪の体内分布も影響するという考えも生まれ、エクササイズによってBMI値が変化しなくても咽頭喉頭周囲の脂肪沈着の分布が変化している可能性があるという話になる。エクササイズによって中枢性の呼吸コントロールも改善され覚醒閾値にも影響を与えているという話に飛んでいく。全くもって推測の域を出ない話になっている。。考えが膨らんで仮説を立て実証していく研究者の楽しみがここにあるのは分かりますが。

さて、この報告にも多くの欠点がある。エクササイズを時間で評価をしているが強度の評価は欠落している。また、8年の長い経過での評価をしているが短期的なエクササイズの評価は含まれていない。どちらにせよエクササイズの効果は、減量効果以外に、上気道の筋力維持、脂肪分布の変化や生体反応の感受性の変化なんかも影響していることが分かった。

短期的な効果を得るために以前報告した咽頭喉頭エクササイズをすると効果はあるだろう。しかし、全身運動のエクササイズを取り入れなければ重症度は悪化してしまう。結局エクササイズをしないと健康的でいられないってことです。皆さん、ちゃんとエクササイズをしましょう。

引き続き、SASとエクササイズに関する情報はアップデイトしていきます。

では。

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コメント

エクササイズの時間は関係あるのでしょうか?世間で今話題になっている呼吸法のエクササイズでは1日10分程度でダイエット効果もあるとのことで話題のようです。実際に私の周りでも成功した人がいました。その方は奥さんにSASを指摘され・・・(診察はしていないようです)

投稿: Deep | 2012年9月12日 (水) 10時53分

Deepさん、コメントありがとうございます。
この報告で得られたエクササイズの情報は限られていて、「定期的にしているエクササイズを週に何時間していますか?」という質問票のみで評価されているため、エクササイズの強度に関して不明です。呼吸法のエクササイズは上気道の筋力トレーニングにもなっていると思います。文献で触れている管楽器ディジェリドゥーを使った報告と似たような結果が得られる可能性がありますね。しかも減量までできればSASの改善効果は大きいかもしれません。

投稿: 屋台ブルー | 2012年9月13日 (木) 12時07分

私も以前はエアロビクスとテニスをしていましたが、やめてからSASがひどくなったような気がします。blogみて、ジムに通う決心がつきました。もう一度筋力をアップさせたいと思います!

投稿: 人生ダブルボギー | 2012年9月20日 (木) 17時51分

人生ダブルボギーさん、コメントありがとうございます。
ブログをみて決心がついたという話が聞けて私は嬉しいですね。
ブログを続けていて良かったと思う瞬間です(笑)

投稿: 屋台ブルー | 2012年9月20日 (木) 18時12分

高齢になると中枢性睡眠時無呼吸が多くなると聞いたことがあります…。歳を重ねても運動することは、こういう側面からも支持されるんでしょうね!

投稿: kirichan | 2012年9月21日 (金) 17時49分

運動で睡眠時無呼吸が治れば、眠りの質もよくなって日中の活動も良くなりますし、なによりエクササイズすること自体がストレス発散にもつながりますよね。目的は何であれ、やはり運動をすることは大切なのだと改めて感じました。

投稿: まるゆ | 2012年9月26日 (水) 11時39分

吉田先生 咽頭喉頭エクササイズの具体的方法を教えてくださいお願いします。

投稿: satou | 2012年11月17日 (土) 20時20分

具体的なトレーニングの方法を教えて頂けませんでしょうか?
長年の睡眠時無呼吸で悩んでます。
母も心臓が悪く治療してもあまり良くならないので、先日医師から睡眠時無呼吸を指摘され器具でかえって眠れないと悩んでます。
何卒よろしくお願いします。

投稿: kay | 2013年3月19日 (火) 23時19分

satouさん、私は吉田では無いので...

投稿: 屋台ブルー | 2013年3月27日 (水) 15時19分

Kayさん、コメントありがとうございます。
資料を送付しました。これからもライフログをよろしくお願い致します。

投稿: 屋台ブルー | 2013年3月27日 (水) 15時22分

先生。主人がやせていますが、軽度の睡眠時無呼吸です。咽頭喉頭エクササイズの具体的なやり方を教えてください。

投稿: てぃだ | 2013年5月24日 (金) 14時27分

田井先生

はじめまして。
若い頃からいびきで悩んでおり最近は無呼吸症候群らしく病院へ行こうか考えているところです。
先生の紹介されていたエクササイズにも取組んでみたいと思っている。出来れば詳細を教えていただけないでしょうか?よろしくお願いいたします。


投稿: マエダ | 2013年6月13日 (木) 11時27分

田井先生

先日SASの簡易検査で5時間に106回のApneaがあり、昨晩泊りでポリグラフ検査を行った、身長168cm/体重82kgの44歳(男)です。
主治医によると、「ポリグラフ検査結果次第だが、これからおそらくCPAPによる治療になる」とのことです。
そこで、田井先生の紹介されているエクササイズに取組んでみたいと思っています。エクササイズの詳細をご教授下さい。何卒よろしくお願いいたします。

投稿: Sano | 2013年8月 7日 (水) 15時27分

女性です。
初めて書き込み致します。
最近急にSASの症状が現れました。運動はテニスをコンスタントにしていますが、最近事情があってできていません。耳鼻科の開業医の診察を受けただけでまだ詳しい検査は受けていませんが、ずっとCPAP装着するより他の方法を考えたいと探していてこちらの記事を見つけました。初めての書き込みで大変厚かましいのですが、何人かの投稿者様のように、具体的なエクササイズのやり方の入手が出来ませんでしょうか。どうぞよろしくお願い致します。

投稿: albireo | 2015年1月30日 (金) 13時47分

女性、62歳です。
5年前に軟口蓋下垂があり、口蓋を少し広くし
扁桃腺も切除するという手術を受けました。

しかし、また1年程前から下垂して無呼吸が生じ
熟睡できません。
軟口蓋を鍛えて克服したいと考えていますが
機具の装着は避けたいので、教えて頂ければと
思います。

投稿: Ganta | 2015年6月22日 (月) 07時51分

田井先生

はじめまして。
現在SASの治療でCPAPを使っています。
この度田舎に帰郷することになったのですが、周辺にSASに対応できる病院がございません。
そこで、田井先生の紹介されているエクササイズに取組みたいと思っています。
どうかエクササイズの詳細をご教授下さい。
図々しいお願いをして申し訳ございません。どうかよろしくお願いいたします。

投稿: | 2016年5月10日 (火) 17時10分

以前から、問い合わせのあった方々にSASのエクササイズのファイルを遅らせていただいていました。

最近は多忙で随分昔の書き込みに対して返事もできていませんでした。本当に申し訳ありませんでした。2013年頃の書き込みに今頃返事しても意味がないのでしません。

しかし、最近の書き込みをみると非常に重症度の高い方々からのコメントをお見受けします。エクササイズをする事は非常にいいことですが、必ず専門医の診察を受けてください。CPAPの必要な人は必ず使用する事をお勧めします。当院でもCPAPの管理をしていいますが、長期のSAS状態は心臓に負担をかけます。先日ペースメーカー導入湯になったSAS患者様がいます。

SASは放置すると重篤な合併症を引き起こします。安易に考えずCPAPを導入してからエクササイズに取り組んでください。

投稿: 屋台ブルー | 2016年5月23日 (月) 12時15分

睡眠時無呼吸症候群で悩んでいるものです。マウスピースで治療していますがあまり効果を実感できていません。
よろしければトレーニングの方法を教えてください。

投稿: ryo | 2017年7月26日 (水) 16時37分

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