タバコの煙と子どものインフルエンザ(米国での調査)
「... 言うまでもないことだが、タバコを吸わず、子どもをタバコの煙から保護しても、子どもがインフルエンザにかからないとは言えない。しかしそうしたことは、重症化や合併症の併発を防止する一助になるのではないか」
― カレン・ウィルソン博士(Dr. Karen Wilson)―
(チルドレンズ・ホスピタル・コロラド(Children's Hospital Colorado)
2012年8月31日付けでロイターに Tobacco smoke tied to flu complications in kids という記事が載っています。これはPediatrics誌に発表された小規模ながら新しい研究が元ネタになっているようで、
Pediatrics誌に発表されたこの小規模な研究には限界がある。著者らが指摘しているように、たとえば重篤な疾患を患っている子どもには、タバコの煙に晒されているかどうかの検査をもっと頻繁に行った場合があるため、実際タバコの煙に晒されている子どもの人数が過小評価されている。という点はあるにせよ、チルドレンズ・ホスピタル・コロラド(Children's Hospital Colorado)のカレン・ウィルソン博士(Dr. Karen Wilson)らが、米国ニューヨーク州で、インフルエンザで入院した100名を超す子どもの記録を調査したところ、家庭で受動喫煙にさらされている子どもがインフルエンザで入院すると、集中治療と長期入院が必要になる可能性が高まることがわかったそうです。
この研究は、インフルエンザにかかっている子どもに、受動喫煙が及ぼす影響を調査した初めてのもので、2002年から2009年までインフルエンザで入院した117名の子どもについて、その入院記録を調査したところ、その子どもたちのうち、受動喫煙に晒されているのは40パーセントでした。
この調査期間中、インフルエンザにかかった子どもの18パーセントは集中治療室に入り、6パーセントは呼吸管の装着が必要でした。
ウィルソンらが受動喫煙に晒されている子どもとそうでない子どもを比較したところ、
- 集中治療室に入った子どもは
- 受動喫煙に晒されている子どもの30パーセント
- そうでない子どもの10パーセント
- 呼吸管の装着が必要だった子どもは
- 受動喫煙に晒されている子どもの13パーセント
- そうでない子どもの1パーセント
- 入院期間は
- 受動喫煙に晒された子どもは最長で70パーセント延びて平均4日
- そうでない子どもは2.4日
- インフルエンザ以外に慢性疾患がある子どもの入院期間は、
- 受動喫煙に晒されていると、入院期間は平均で10日ほどに延びる
- そうでない子どもでは3日ほど
米国フィラデルフィアのチルドレンズ・ホスピタル(Children's Hospital)で子どものインフルエンザ合併症を研究しているスーザン・コフィン博士(Dr. Susan Coffin)によると「(受動喫煙が)あらゆる面で子どもに害があるのはわかっている。そしてこの研究から、タバコの煙に晒されると、入院のリスクが高まるだけではなく、とりわけ病気の経過が悪化することがわかる」
ウィルソンは
「入院する子どもがタバコの煙に晒されていた場合、さらに重篤な疾患の発症につながるリスクが高まる。この原因は防げる。辛いのは、重い合併症が発症する可能性があっても、子どもたちがタバコの煙に晒される環境にいることだ。言うまでもないことだが、タバコを吸わず、子どもをタバコの煙から保護しても、インフルエンザにかからないとは言えない。しかしそうしたことは、重症化や合併症の併発を防止する一助になるのではないか」と言っています。
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