酒量と脳出血の関係(中庸は徳)
文:fumixie <fumixie@gmail.com>
「慢性的に大量のアルコールを摂取していると、かなり若いうちに脳出血を起こすリスクが高まる」
Charlotte Cordonnier
(University of Lille Nord de Franceの上級研究者)
「このリスクに影響を与えそうなことは他にもあるのではないか」
Larry Goldstein
(米国ノースカロライナ州ダラムのDuke Stroke Center所長で神経学者)
2012年9月10日付けのロイターに、Heavy drinkers may risk brain bleed at a young age: study(飲兵衛さんは若いうちに脳出血を起こす危険がある)という記事が載っています。
その内容をざっとまとめると、次のようになります。
研究したのは、フランスの University of Lille Nord de France 上級研究者の Charlotte Cordonnier という人。
Neurology誌に発表された研究結果 "Heavy alcohol intake and intracerebral hemorrhage Characteristics and effect on outcome" によると、540名の被験者中4分の1は、卒中を起こすまでは飲兵衛さんだったそうで、この人たちの多くは60歳で脳出血を起こしました。一方非飲兵衛さんの多くは、卒中を起こしたときは74歳でした。
そして非飲兵衛さんに比べて飲兵衛さんは、若くして卒中を起こすだけではなく、比較的健康で、心臓病や卒中、あるいは「軽度の卒中」といった病歴もない場合が多かったとのこと。また、60歳前の飲兵衛さんに脳の深部で卒中が起こると、2年以内に死亡する可能性が高まるそうです。対する非飲兵衛さんでは3分の1。
この研究には関与していませんが、米国ノースカロライナ州ダラムのDuke Stroke Center所長で神経学者のLarry Goldsteinは、この研究では過度の飲酒そのものが原因で若いうちに卒中が起きることの証明にはならないとして、「このリスクに影響を与えそうなことは他にもあるのではないか」と言っています。
なんとなれば、飲兵衛さんは喫煙者でもある場合が多く、喫煙率は他の患者が12パーセントなのに対して、この人たちの場合は42パーセントだという点を挙げています。それに他にも要因がまだまだありそうとのことです。
とはいえ、これまでずっと、過度の飲酒は卒中のリスク要因と考えられてきたし、過度の飲酒そのものが問題だと信じるに足る理由があるとGoldsteinは言っています。
過度の飲酒は高血圧を引き起こすし、血液の凝固能力に影響を与える場合があるそうで、そうなると、脳出血タイプの卒中を起こす可能性が高まります。
つまり、出血しても血が止まりにくくなるんでしょうね。
この研究では、飲兵衛さんには、依然として正常範囲内とはいうものの、血液凝固に必要なある種の物質の濃度が低かったらしいです。
「要は、中庸は徳ってことだ。アルコールの過剰摂取は脳に悪いんだ。いろんな点でね」と Goldstein氏は言っています。
では飲兵衛さん(記事では Heavy drinker)というのは、どういう人のことを指すのかというと、この研究 では
Heavy alcohol intake was defined as a regular consumption of more than 300 g alcohol/week.つまり、週300グラム以上のアルコールを定期的に摂取している場合を飲兵衛さんと定義しています。
しかし300グラムのアルコールと言われても、一般人たる私にはあまりピンときません。
そこで調べたところ、公益財団法人 アルコール健康医学協会の 「お酒と健康 飲酒の基礎知識」 のページ。ここに度数とアルコール量の換算式が載っていました。
アルコール量=酒の量(ml)×(アルコール度数÷100)×0.8
ここから逆算すると
酒の量(ml)=アルコール量÷[(アルコール度数÷100)×0.8]
となります。
では週300グラムのアルコールはどのくらいの酒量になるかというと、15度の日本酒なら、
酒の量(ml)=300÷(0.l5×0.8)=2500ml
ということは
2500÷7=約357ml/日
1合が180mlなら、約2合となります。
つまりこの研究をもとにすると、毎日日本酒を2合以上飲んでいると、脳出血を起こす可能性が高まるということになります。
ただ記事にも登場したLarry Goldstein氏の見解によれば、飲兵衛さんで脳出血のリスクが高まるのは、他にも要因がありそうだということですし、当然個人差もあるでしょうから、あまり神経質になる必要はないのかもしれません。
でも、かといって無視するのも得策ではないでしょう。
気をつけるに越したことはないと思います。
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コメント
やはり飲み過ぎると体によくないのでしょうね。脳出血だけでなく色々と健康に影響しそうです。しかし中庸は徳とのことで安心しました。1日日本酒二合以上を飲兵衛と頭に入れて楽しくお酒を楽しみたいです。
投稿: anmitsu | 2012年9月16日 (日) 09時03分
anmitsuさん、コメントありがとうございます。
まあ、アレですね、週300グラムのアルコールが「飲兵衛さん」というのは、「この実験ではそう決めた」ということだし、もちろん個人差もあるでしょうし、体質や体調によっても変化するでしょうから、日本酒二合というよりも、「中庸は徳」っていうことで、その中庸の「基準」も人によって、あるいは日によってさまざまに変化すると考えた方が現実的なのかもしれませんね。
投稿: fumixie | 2012年9月16日 (日) 23時41分
やはり飲み過ぎは体に良くないのですね。日本酒2合/1日以上ということは、私の場合は結構飲んでも大丈夫そうです。
しかし、だからといって飲み過ぎないように気を付けないといけないですね。
投稿: HY | 2012年9月18日 (火) 08時57分
HYさん、コメントありがとうございます。
なにごとも、「ほどほど」がいいようです。
ちなみに、1日2合というのは「日本酒なら」ということで、お酒の種類が変われば(度数が変われば)当然量も変わりますので、ご注意くださいませ。
投稿: fumixie | 2012年9月18日 (火) 23時12分
ほどほど、難しいです…
日本酒二合を毎日となると、なかなかの飲兵衛な気がします。
毎日発泡酒一本なら大丈夫かな!?
投稿: ねこ | 2013年6月24日 (月) 16時58分
ねこさん、コメントありがとうございます。
たしかに「ほどほど」は難しいですよね。
「腹八分」が健康にいいのはわかっていても、気がつくと満腹になるまで食べてしまっていることがしばしばです。
でも、トライする価値はあると思います。
禁煙でも、「中盤に差し掛かってから」と「やり始め」では、心構えが異なるように、ほどほどを目指す場合でも、「さあ、これから」という場合と「よし、このまま続けるぞ」という段階では、別々の心構えが必要になる気がします。
いずれにしても、価値のある目標になると思います。
投稿: fumixie | 2013年6月24日 (月) 23時08分