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2012年4月26日 (木)

乳酸菌の種類や健康への影響

文:Ctom


先日、仕事をしている中で、ある乳酸菌含有飲料の効果について質問された。
というのも、その方は過去に大腸以外の部位に腫瘍が見つかり、手術で取り除いている背景がある中で、その乳酸菌含有飲料が癌の抑制に効果があると謳っていると聞いたらしく、それを摂り続けることで効果があるのかないのか聞きたい様子だった。


僕は乳酸菌をコントロールすることで、“大腸がん”の予防や抑制については知っていたけれど、他の部位の腫瘍の予防に効果があるのかは聞いたことがなかった。そこで、その乳酸菌含有飲料について少し調べることにした。結果としては、その飲料の広告は確かに“がんの予防に”という感じで広告を出しているように思えたが、どの部位かは記載がなかった。

含有している乳酸菌の種類についても、その製品の名前からは全くわからず、調べなくてはいけないものだった。
とはいえ、少し調べればすぐに出てくるのだが、日本語のHPなどではその会社のものばかり出てくるので、海外の文献などを調べたところ、確かにガンの抑制に効果がある様子だった。が。

研究報告の中では“ラットの大腸がん”の抑制に効果があった。

というものだった。ヒト研究においては不明であるばかりか、全身の腫瘍に効果があるとは思えない代物だった。しかも、研究では乳酸菌のサプリメント(プレバイオティクス)として摂取しているのだが、この製品はプロバイオティクスという類に入るものだったので、効果の是非はかなり薄くなるように思えた。


そんなことがあって、これは重要な話なんだけれど、まだ紹介していなかったので、導入の記事をここで載せておきたいと思います。読んだ後で、ちょっと記事が古かったな。と思ったけれど、基本的な考えとしてはそんなに変わっていないと思うので、紹介したいと思う。プレバイオティクスとプロバイオティクスの概念と、乳酸菌の影響の大きさについて知ってもらえたらと思う。

では、いってみよう

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今回の記事はDynamic Chiropractic – December 15, 2003, Vol. 21, Issue 26から紹介したいと思います。


記事はそんなに長いものではないけれど、簡単にまとめと予備知識を先に述べておきましょう。


腸というのは第二の脳としても重要な機能を持っている臓器になってきます。
腸管といえば、小腸と大腸を指していますが、厳密には3つのパートに分かれていて、それぞれが異なった機能を有していることに注意してください。


小腸とは、空腸と回腸に分けられています。主に、栄養吸収を行う場であって、小腸の機能が損なわれれば、栄養吸収は著しく損なわれます。また、下痢などをすると、小腸粘膜が剥がれ落ち、下痢や便秘を繰り返す人は栄養吸収に大きな問題を持っていることになります。

一方で、大腸には多くの常在細菌(乳酸菌、バクテリア)が存在しており、主には水分の吸収が行われる場であります。もし、回腸と大腸の境目は回盲部と呼ばれ、特に常在細菌が集中しやすい場所になります。


ヒトの体では、乳酸菌とバクテリアは常に存在し続けていて、その分量のバランスいかんでも大きく腸の働きはことなってきます。また、抗生物質を使うと、バクテリアも乳酸菌も同時に死滅してしまうため、プレバイオティクスの必要性が出てきます。多くの人が抗生物質を用いたことがあるかと思いますが、その後のケアや使用中の腸管内のケアに気を付けたことがあるでしょうか。日本ではまだまだプロバイオティクスが主流ですが、プレバイオティクスにも目を向ける必要性は今後高まってくるでしょう。


今回の記事では、乳酸菌の一部を紹介しています。日本でよく聞くカゼリ菌やビフィズス菌についても少し紹介がありますが、ラクトバチルス属やストレプトコッカスの重要性もよく耳にします。乳酸菌を摂取するうえで、気をつけなくてはいけない点についても紹介があります。この記事ではすでに販売されているプレバイオティクスサプリメントについてはほとんどが死滅している状態で売られているというのも注目すべき点です。去年、読んでいた本の中で乳酸菌のサプリメントについて注意点があったのを覚えていますが、冷蔵保存の必要性があり、フリーズドライ製法によって作られたサプリメントが良いという話がありました。この点については、今回の記事では紹介されていませんが、現在の市場は少し変化しているかもしれません。

日本でプレバイオティクスは少ないですね。プレバイオティクスの製品がありますが、常温で売り出されている点、ほとんどが死滅した状態なのかもしれません。とはいえ、死滅したサプリメントに全くの効果がないというわけではないことにも注意してください。


さて、下記から本記事を読んでいきましょう。


                       


プレバイオティクス:腸内乳酸菌を増やすより確かな方法
Dynamic Chiropractic – December 15, 2003, Vol. 21, Issue 26
By James P. Meschino, DC, MS

多くの論文が腸内の乳酸菌とバクテリアのアンバランス(少なすぎる乳酸菌状態)が様々な健康状態を悪化させる原因となることを報告しています。そのうえ、サプリメントがいくつかの乳酸菌を増やして、下痢、過敏性腸症候群、湿疹、潰瘍性大腸炎などの様々な症状軽減のための助けになるとされており、潰瘍性口内炎や膣カンジダ症の減少、そして免疫機能の向上に働きかけます。乳酸菌には次のような菌があります。ラクトバチルス・アシドフィスル、L・ブルガリクス、L・ロイテリ、L・プランタルム、L・カゼイ、バシラス・ビフィダス菌、ストレプトコッカス・サリバリアス(S. salivarius)、S・サーモフィラス(S. theromophius)、サッカロミセス・ボラージ(saccharomyces boulardi)

最近の研究では、ランダム試験において市販されているプロバイオティックサプリメントが市場に届くころにはほとんどすべての乳酸菌が死んでいることがわかり、プロバイオティックサプリメント(乳酸菌を含んでいるサプリメント)を摂ることでその効果を得ることは難しいと報告されました。これらの乳酸菌は死ぬ前まで限られた回数ですが、分裂して増殖することができます。従って、ほとんどのメーカーのプロバイオティックサプリメントは購入した時にはいくつかの乳酸菌しか生きていません(逆に言えば、ラベルで保障されている乳酸菌の数は工場出荷時の状態を示しています)。

近年、プレバイオティクスには腸管内乳酸菌を集中的に増やすことができることが示され、これらのサプリメントの摂取によって乳酸菌とバクテリアの比率を、より良い状態に変化させるであろう方法として提唱されています。ヘルスプラクティショナー達は生理学や臨床研究でプロバイオティックサプリメントを用いることで、臨床で用いるプレバイオティクスが統合され、乳酸菌が生きる環境にできることに気が付くでしょう。


プレバイオティックの一般的な特徴

“プレバイオティクス”は短鎖多糖類(炭水化物)に関連しており、腸管内で完全に消化されるわけではなく、食物の供給によって大腸に乳酸菌が送られ(ビフィドバクテリアや乳酸杆菌)、乳酸菌の成長や細胞分裂を促進しています。プレバイオティクスの公式定義は、“難消化性食物成分が宿主(人体)に健康的に作用し、大腸内乳酸菌の一種類もしくは限られた数のいくつかの種類の乳酸菌の成長を刺激します”。

人体研究ではフルクトオリゴ糖(FOS)摂取がビフィドバクテリアと乳酸杆菌の菌叢を腸管内で増やし、同時に悪玉細菌叢を減らします。次の二つのプレバイオティクス摂取でも同じ現象が見られます。イヌリンとグラクト・オリゴサッカライド(GOS)。

FOSとイヌリンはフルクトース分子短鎖の成分から成っています。GOSはガラクトース分子短鎖から構成しています。一日のFOSの食事から摂れる平均摂取量(多くは野菜から)は800mgです。サプリメントの研究では1日に2,000~3,000mgのFOSを大腸の乳酸菌の状態に応じて調整して加えた研究が多数あります。高濃度摂取により2型糖尿病患者において、コレステロールの減少、中性脂肪や血糖値の改善の助けになりました。

ジェネラルウェルネス(健康アドバイザー?)の見解では、プレバイオティックとプロバイオティックサプリメントには一部の栄養素の消化と吸収を促進する効果が見られたと言います。小腸粘膜細胞の解毒機能を高め、大腸の突然変異細胞や発がん細胞の集中を減らし、排泄を手伝い、腸管及び全体的な免疫機能を促進した結果表れたものだと考えています。これらプレもしくはプロバイオティックスによる腸管内の乳酸菌が増殖することであたえる影響はよい変化です。免疫機能の調整は、食物の不耐症による影響を軽減し、自己免疫のコントロール維持、食物不耐症による二次反応で表れる皮膚の反応を改善させます。

プレバイオティックスで重要な将来への影響として大腸癌の発生率を低くし、北米における癌による死亡原因を低くすることでしょう(男女の統計データを組み合わせても)。人体実験ではプレ/プロバイオティックスの両方で乳酸菌の成長を促進する結果が表れました(Lactic Acid bacteria: LAB)。実験的なデータといくつかの疫学上の検証では乳酸菌が大腸癌の発達を防ぐ効果が増加を示しました。実験的なデータでプレバイオティクスの発酵や他の線維によるものを通して、乳酸菌の爆発的増殖が起こり、短鎖脂肪酸の生産増加や低い腸管内pH値、より酸性環境に近づけることになりました。様々な研究では、低い腸管内pHが大腸癌の発生リスクの減少し、酵素が腸管内発がん物質の減少と関連を持っています。

人体における研究ではプレバイオティクスがヒト腸管細胞の遺伝毒性凝集を減少します。酪酸エステルは正常な細胞の増殖を促進し、癌化細胞の増殖抑制も同時にみられました。この短鎖脂肪酸はまた実験下において大腸癌細胞のアポトーシス(細胞死)を誘発しました。これは大腸細胞にとって重要な燃料であり、論文でも提唱されており、様々な発がん性物質にさらされた際に、十分に酪酸エステルを供給して悪性細胞に変換するのを抑制させます。酪酸エステルはまた大腸細胞内でグルタチオントランスファーゼ酵素の凝集を増加させること見られました。「酪酸エステルが酵素を導入したか、プレバイオティクスによって微生物層が活性化され、おそらく大腸癌の発がん物質抑制につながったものだろう」と報告されています。


臨床応用とメカニズム

1. 消化不良、食物過敏と不耐症、自己免疫疾患、関節リウマチと肌の問題: プレバイオティクスを使って大腸内の乳酸菌(ビフィズス菌、ビフィダムとロンダム、そしてラクトバチルス・アシドフィルス)が増えるでしょう。これらの状態では、2,000~3,000mgの量を一日に摂取するか、その他のプレバイオティクス(イヌリン、GOS)を一般的に用いられます。

2. 脂質低下プレバイオティクスは大腸のバクテリア、酪酸エステルのような短鎖脂肪酸によって代謝されます。酪酸エステルは肝臓コレステロール合成を抑制し、ヒトの大腸内上皮細胞にエネルギーを与えることが知られています。一部の研究論文では、8~15mgのプエバイオティクスを供給することで血中コレステロールと中性脂肪の低下が特に見られました。この際、矛盾のない結果が表れていました。

3. 二型糖尿病: 一部の論述でプレバイオティクを8~15mg/日投与した際に二型糖尿病患者において血中グルコースの調整の助けになったと提唱しています。その他の研究ではそのような効果は見られていません。従って、追跡調査によって正しく効果の是非を問わなければなりません。

4. 総合的な健康寄与: 健康増進の目的(例えば、大腸内の発がん物質の凝集減少や消化や排泄、免疫機能の改善など)では500~1,000mg/日の摂取を勧められます。


副作用と毒性

大まかには、オリゴサッカライドの不耐症です。個人によっては腸内ガスが貯まる場合があると報告されています。とても多くの量(40mg)のFOSとその他のオリゴサッカライドが下痢を引き起こす場合があります。


薬物に対する相互作用

薬物との同時服用においてFOSやその他のプレバイオティクスで相互作用は報告されていません。

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