副腎-甲状腺の相互関係 パート2:評価と治療の考察
文:Ctom
1月中にアップしようと思っていたのですが、2月になってしまいました。
休日は雪山に行ったりしていたので、心身リフレッシュしていたのですが、その分仕事に追われていて、手付かずという感じでした。
さてさて。前回、前々回に関連した記事をもう一つ掲載します。
その前に、前回・前々回の記事のリンクを張りましょう。
デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)のサプリメントの影響
実は今回の記事は「慢性ストレスがホルモンに与える影響と回復補助」の続きになります。
なので、上記の記事の内容について忘れてしまったorまだ読んでいないという方は一読をおすすめします。
今回の記事はDynamic Chiropractic May 20, 2011, Vol.29, Issue 11よりThe Adrenal-Thyroid Connection, Part 2: Assessment and Treatment Considerationsを紹介します。
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記事に行く前に、予習(?)もしくは復習をしましょう。
甲状腺ホルモンのうち、今回の記事でピックアップされているのはT4とT3です。このホルモンの代謝経路を最初に理解しておきます。
1.視床下部から甲状腺放出ホルモン(TRH)を脳下垂体に送る
2.脳下垂体が甲状腺刺激ホルモン(TSH)を甲状腺に向けて放出
3.TSHが甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)を刺激して、リンを用いてT4とT3を産生する
a. 93%がT4
b. 7%がT3
4.93%のT4のうち、60%が“肝臓”でT3に変換される
a. うち、20%が不活性型T3に変換
b. うち、20%がT3SとT3AC(活性型)に変換
c. 残されたT4は周囲組織内でT3に変換される
5.活性型のT3SとT3ACは胃腸管内で活性型T3に変換されて、T3として放出される
上記のことからみると、脳は別として、臓器の相互関係も重要になります。肝臓・胃腸管の機能が悪い状態になれば活性型T3である甲状腺ホルモンの体内量も減少してしまうでしょう。だって、甲状腺自体は前駆物質であるT4ばかり作っているのだから、アルコール中毒者やアルコールを飲む習慣がある人は甲状腺ホルモンだって減少してしまいます。結果的に、甲状腺ホルモン由来の症状を呈することも考えられています。胃腸管も同様ですよね。
さて、上記を踏まえて記事に入ります。
今回の記事のピックアップは甲状腺と副腎ですので、肝臓や胃腸管との関わりはまた別の機会にて。
では、いってみましょう。
副腎-甲状腺の相互関係パート2:評価と治療の考察
By James P. Meschino, DC, MS
パート1では副腎疲労と甲状腺機能障害間におけるアウトラインを記載し、甲状腺と副腎を補助するためのサプリメントから患者が示すそれらの臓器由来の症状を管理することを提案しました。医師達に将来は副腎疲労とそれに加えて(もしくは)甲状腺機能障害の解明調査を願うとともに、臨床治験の観点から以下の情報を証明してもらいたい。
甲状腺検査
典型的な甲状腺機能低下の検査方法は患者の血中TSH(Thyroid Stimulating Hormone)値を評価するものです。TSHが高い値を示す場合には、甲状腺ホルモンの合成と分泌を促すよう刺激します。従って、高いレベルの血中TSHは甲状腺機能低下の指標になります。
基本的な医師の判断はTSHの正常値を0.2~5.5mU/Lと考え、一部の統合医療従事者は高すぎると考えます。例えば、Life Extension Foundationの前会長のPhilip Lee Miller,MD,はTSHの理想的な値は1.0~2.0mU/Lの間で、2.0mU/Lより上の値では甲状腺機能低下を呈していると提唱しています。このような観点から、多くの患者が甲状腺機能低下の典型的な兆候と症状が表れながらも、甲状腺機能は正常だとされ、甲状腺の問題を見落とされています。
患者を評価する観点から、4.0mU/Lという高い値のTSHを理想的な値である1.0-2.0mU/Lにパート1の記事で紹介した複合的な栄養補助によって下げることが可能ですが、TSHの値が4.0mU/L以上の高値になっている場合にはしばしば甲状腺摘出術が必要になり、残念ながら処方箋を用いることになります。しかしながら、多くの医師はL-サイロキシンやレボチロキシンなどといった様々な種類のT4甲状腺ホルモン合成薬を処方します。統合医療の医師や自然療法家は甲状腺摘出術によって甲状腺合成薬を使っている患者により効果的なアプローチとして確証に基づいて処方される豚由来の甲状腺抽出サプリメントを勧めます。
注意すべき重要なことはT3甲状腺ホルモンは体内でT4から変換され、T3こそが最も活発な形態の甲状腺ホルモンなのです。甲状腺抽出サプリメントにはT3とT4の甲状腺ホルモンの両方が含まれていますが、甲状腺ホルモン合成薬にはT4のみ含まれています。多くの統合医療の医師は多くの甲状腺の問題を持った患者ではT4からより活発なT3に変換することが困難であるため、T3を含めることで結果が向上することから、甲状腺ホルモン合成薬にT3を含めることを求めています。
患者に何ができるでしょうか?
○甲状腺の問題をもつ患者は自身の血液検査結果を家庭医や内分泌科にTSHレベルを見てもらい、より理想的な範囲内に甲状腺の状態を改善できるよう指導を仰ぐ。
○もしTSHの値が4.0mU/L以上であるなら、より包括的な医療を提供するドクターを探して、甲状腺抽出サプリメントの処方を判断してもらいましょう。
○たとえ甲状腺の薬剤(合成薬もしくは抽出薬のどちらか)を処方されても、甲状腺の状態改善を助けるための甲状腺補助サプリメントを用いてください。
○もしTSHの値が2.0~4.0mU/L(甲状腺機能低下状態)の間ならば、甲状腺補助サプリメントを2~3か月間試してみて、TSHの値が理想的な範囲(1.0-2.0mU/L)に下がるかどうか試してください。サプリメントを用いても理想的な範囲に下がらない場合は、甲状腺摘出術後の薬剤(甲状腺抽出サプリメントの方がよいかも)が必要かもしれません。
○また、甲状腺機能低下の患者の血中遊離T4とT3も助けとなります。これらは体組織から得られる遊離サイロキシンレベルです。Dr,Millerによると、遊離T4の理想的な範囲は1.2-1.4ng/dLですが、典型的な医師達は正常な値を0.7-1.53ng/dLとしています。
○同様に、遊離T3の理想的な範囲は2.8-3.2pg/mlと報告されていますが、医師達は正常な範囲を2.6-4.8pg/mlと考えています。
○総合診療医の多くは、遊離T4が1.2ng/dLを下回り、加えて(もしくは)遊離T3の値が2.8pg/nlを下回る場合には甲状腺置換術が必要と言っています。
○多くのケースでは、典型的な医師達が遊離T3や遊離T4の血中濃度を測る検査を行いません。甲状腺症状を有する患者ではTSHの検査に加えてT3とT4の検査が必要でしょう。
副腎とコルチゾールの管理
慣例的な医師によって患者の甲状腺の状態評価を常に行われるわけではなく、ストレスが副腎機能に影響を与えていて、患者の症状が鑑別しにくくなっている際には、血中コルチゾール、DHEA、DHEA:コルチゾール比率を測定することで判断の助けになるでしょう。
血中コルチゾールの理想的な範囲は9-14mcg/dLと報告されています。コルチゾールレベルがこの値を上回っていると、甲状腺合成を妨げたり(もしくは)、細胞レベルで甲状腺ホルモン(T4とT3)の働きを阻害するでしょう;甲状腺ホルモンの分泌は患者自身の甲状腺またはT4を含む甲状腺ホルモン合成剤(L-サイロキシンなど)によって管理されているか甲状腺抽出薬などによって行われてる。
加えて、副腎ストレスの反応が表れているケースではDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)の値が下がっているため、患者の血中DHEA値の計測は非常に価値のあるものです。この現象は副腎がコレステロールからコルチゾールとDHEAを産生しているために起こります。通常この生化学的な反応によってコルチゾールの合成は高まりますが、DHEAの合成は反対に少なくなります。DHEAはテストステロンとエストロゲンの前駆物質であり、副腎疲労時によくみられ、性欲減退、勃起障害、体重減少や腹部脂肪の増大(骨密度における反作用については言及しません)といった一部の症状や兆候は副腎ストレス反応に伴うものです。
DHEAの理想的な値は男性で250-450mcg/dL、女性で150-350mcg/dLと考えられています。DHEAとコルチゾールの理想的な比率は15-25:1と報告されています。DHEAの値そのものやDHEA:コルチゾール比が低い場合、一部の医師はDHEAサプリメントを処方しますが、加齢やストレスによる原因で高いコルチゾンの反作用がみられているかもしれません。DHEAサプリメントの処方は前立腺癌、乳癌、子宮内膜腫といったものを発生させるリスクを増大させることがあるため、注意が必要です。私自身はDHEAサプリメントを最初に処方する方法は勧めません。
個人的には最初に摂取するべきはビタミンB、C、亜鉛、アダプトゲンハーブ(パート1に紹介した副腎補助サプリメントの類です)を勧め、これらは副腎ストレスを受けている患者においてはコルチゾールの分泌を抑制させ、ストレスが原因で副腎機能障害を起こしている患者においてはこれによっていくつかの抗ストレス、疲労回復といった効果が表れます。
唾液コルチゾール検査
副腎機能障害を治療するもう一つの方法は、日中の唾液コルチゾール測定した結果を評価するものです。WHOは唾液テストにおけるコルチゾール値を指標とすることはコルチゾールが全身への影響を図るうえで有用としています。
検査は至ってシンプルなもので、検査キットに唾液を採取するものです。コルチゾールを計測するタイミングは、朝(午前8時)、お昼、夕方(午後4時)と夜(できれば午後11時~正午頃)です。希望すればその他のステロイドホルモンであるエストロゲン、プロゲステロン、DHEAやテストステロンもコルチゾールを採取する午前8時の唾液検査から計測することもできます。
一つのサンプルキットで1回計測ができ、採取用のチューブと分析・送付用のメールツールが梱包されています。検査結果は通常郵送で送られてきて2週間の間に届きます。唾液検査機関はオンライン検索で簡単に見つけることができます。
副腎は24時間常にコルチゾールを分泌しており、日内変動します。コルチゾールの分泌が最も多い時間は起床後1時間ですが、分泌量は減少していき、睡眠中が最も少なくなります。副腎が疲労しきった状態では早朝のコルチゾール分泌が少なくなり、日中も平坦になる傾向にあり、汎適応症候群(はんてきおうしょうこうぐん)の早期では全体的なコルチゾール分泌が一つあるいはいくらか高い状態です。
個人の留意点
多くの患者で甲状腺機能低下あるいは副腎機能障害に伴う症状や兆候を呈しています。一部のケースでは副腎機能障害の原因がストレス由来もしくは甲状腺機能障害を含んでいる問題によって引き起こされています。多くの医師は旧来の数値で甲状腺機能を評価しており、患者自身の血液検査の結果をコピーしてもらい、最適な評価を行ってくれるDr.Millerやその他の正しい判断を行ってくれる医師達、American Academy of Anti-Agingなどを通して判断してもらうべきでしょう。さらに、問題のある患者はTSHの血中の値は、遊離T4やT3の血中の値も含めて甲状腺の評価をしてもらうべきです。
副腎を含めた評価には、血中のコルチゾール、DHEAそしてDHEA:コルチゾール比によって決定されるべきでしょう。唾液コルチゾールも含めて評価することが望まれます。重要なことは高いコルチゾール値が細胞レベルの甲状腺ホルモンの効果を打ち消し、加えて甲状腺での合成と分泌を正常な値にすることが難しくなります。それはつまり、甲状腺と副腎の両方の状態を評価するべきということになります。
アダプトゲンハーブや重要なビタミン、ミネラルを含めた栄養補助はストレスに由来するコルチゾール値の増加や脳機能に対して非常に有効な作用がみられます。これらの栄養素は一部のケースで用いるべきであり、それらのケースはストレス反応が患者の症状と合致するか見合わせることで決められます。また、それらのケースでは甲状腺補助栄養素によって甲状腺機能とT4からT3へ最も効果的な状態の甲状腺ホルモンへと変換を促進します。
TSH値が2-4mU/Lの間で甲状腺機能障害を示すケースでは、甲状腺補助栄養素の組み合わせを用いることのできる唯一の方法です。もし4mU/Lより高いTSHの場合では、甲状腺ホルモン置換(理想的には甲状腺抽出薬)療法が必要でしょう。甲状腺補助栄養素は甲状腺置換療法の効果をより高めるため、甲状腺ホルモン置換療法を受けている患者の付加的な効果を模索して施すべきでしょう。
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日本では難しい現状もあるでしょう。
ですが、確実に潜在的な甲状腺の問題を持っている人も少なくないです。特に食べ物やストレスの問題は大きいところです。
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