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2012年1月15日 (日)

果物と野菜をもっと食べるべき理由がまた増える

文:fumixie <fumixie@gmail.com>

Medical News Today に載った "Link Between Diet, Nutrient Levels And Cognitive Ability, Brain Shrinkage(2012年1月4日付け)(食事や栄養と認知機能および脳の収縮のつながり)という記事によると、数種類のビタミンとオメガ3脂肪酸の血中濃度が高い高齢者ほど、知力テストの結果が良く、アルツハイマー病によく見られる脳の収縮も少なくなる一方で、「ジャンクフード」を食べているとちょうど反対の結果が生まれるそうです。

この研究を行ったのは、米国オレゴン州ポートランドのオレゴン健康科学大学(Oregon Health and Science University)とオレゴン州立大学(Oregon State University)ライナス・ポーリング研究所(Linus Pauling Institute)の研究者らで、この結果はNeurology誌に、 "Nutrient biomarker patterns, cognitive function, and MRI measures of brain aging" というタイトルの論文で発表されています。

これまでは食べ物に関するアンケート調査といった正確さにかけるデータに基づいていましたが、この研究は、広範囲の栄養素の血中濃度を具体的に測定した初めてのもので、その結果、ビタミンB、C、D、E、および魚にもっとも多く見られる健康に良い脂質が多いと好ましい効果が得られることがわかりました。

被験者は、平均年齢は87歳、記憶力にも知力にも特に危険因子の無い被験者104名で、血中の栄養素バイオマーカー30種類を検査し、42名についてはMRI検査を行い脳の大きさも測定しました。

この論文の抄録をざっとまとめると、

これは認知症にかかっていない高齢者の栄養状態と脳の健康の関連を調べる研究で、血漿中のバイオマーカー30種類が分析された。そして主成因分析から栄養素バイオマーカーパターン(NBP)が作られ、回帰モデルによって関係が評価された。

その結果、好ましい影響を与えるNBPが2種類浮かび上がった。一つはビタミンB(B1, B2, B6, 葉酸, B12)、C, D, E。もう一つはオメガ3脂肪酸。

一方、認知機能と大脳の大きさに対して否定的影響を与えるNBPとして浮かび上がったのはトランス脂肪。

抄録の結論によると、認知機能と脳の大きさのばらつきについては、かなりの程度は、血漿に検出された特徴的なNBPによって説明できる。

ということだそうです。

ライナス・ポーリング研究所の主任調査員で本研究の共著者 Maret Traber はこの研究について

「この研究から、良かれ悪しかれ、実際の栄養濃度に関わる生物学的および神経学的活動がはっきり示されている」

「食事で摂取するさまざまな果物や野菜、魚から得られるビタミン類と栄養素は、血中のバイオマーカー(生体指標)として測定される。このような栄養素は、脳を保護しその働きを良くする、高い潜在能力を間違いなく秘めている」

「研究の対象となった人たちは、アメリカ人の平均的な食事を取っている普通の人たちだ。食生活を改善するぞという新年の誓いを立てようと考えている人には、果物と野菜をもっと食べるべき理由がまた増えるのは間違いなかろう」

と言っています。

この記事では、

  • 認知面と脳の大きさでもっとも好ましい結果が出たのは、海産物の脂肪酸が多い場合とビタミンB, C, D, E の量が多い場合の2種類。
  • 認知面で結果が常に悪かったのは、焼いた食品と揚げ物(たとえばマーガリン、ファーストフードをはじめとする健康的とは言えない食事)に含まれるトランス脂肪の摂取量が多い場合。
  • 年齢、性別、教育程度、喫煙、飲酒、血圧、体格指数(BMI)などさまざまな要因を考慮した。
  • 血液分析を用いたので、食事内容に関する曖昧な記憶や吸収された栄養素の個人的変動性といった問題が除去できた。
  • 知力のテスト結果の変化は大部分が年齢や教育程度といった要因に影響されているが、思考と記憶のテスト結果の17パーセント、および脳の大きさの変動の37パーセントは栄養状態で説明がつく。
  • 食事の種類によって認知機能が変化するのは、脳の大きさと循環器系機能に影響を与えるためではないか。

だそうです。

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コメント

いつも大変興味深く拝見しています。
果物・野菜や魚などは健康に良いと良く言われますが、認知機能にまで影響するとは驚きました。
今年こそ食生活を改善したいと思います。

投稿: Y.S@ | 2012年1月18日 (水) 17時10分

Y.S@さん、コメントありがとうございます。

"You are what you eat."(人は食なり)というのは、ある意味名言ですよね。日々のちょっとした改善を、「長く」続けていくのが手間もお金も時間も節約できるし、効果的なのでしょうね。

投稿: fumixie | 2012年1月18日 (水) 19時05分

認知機能と野菜、果物。関連しているのですね。非常に興味深く読ませていただきました。私も毎日の食生活を改善した方が将来よさそうです。特に、果物は剥く作業が面倒で敬遠してました。反省です。
貴重な情報ありがとうございました。

投稿: tommy | 2012年1月30日 (月) 17時07分

tommyさん、コメントありがとうございます。

私も、リンゴなど、昔は皮ごと食べていた記憶がありますが、今ではそういうことはまったくなくなりました。栄養がある部分なのに残念です。オーガニックなら大丈夫でしょうが。でも、最近小型のミキサーを手に入れたので、たまには野菜と果物を入れた「自家製ジュース」を楽しんでいます。

投稿: fumixie | 2012年1月30日 (月) 23時43分

みなさんそうだと思うのですが、食生活を改善しなければならないことは分かっているのですが、子供のころから続いている食生活を変えることはなかなか難しいですね。食生活を変えるのではなく、料理の材料を栄養のあるもので今までとは見た目は変わらない料理にするしかないのではないのでしょうか?例えば豆腐でハンバーグを作るような・・・

投稿: はるうらら | 2012年2月13日 (月) 15時01分

みなさんそうだと思うのですが、食生活を改善しなければならないことは分かっているのですが、子供のころから続いている食生活を変えることはなかなか難しいですね。食生活を変えるのではなく、料理の材料を栄養のあるもので今までとは見た目は変わらない料理にするしかないのではないのでしょうか?例えば豆腐でハンバーグを作るような・・・

投稿: はるうらら | 2012年2月13日 (月) 15時02分

はるうららさん、コメントありがとうございます。

食生活を含めて、習慣、それも「長年の」習慣となると、その「慣性」はとても大きいですから、変更するのは至難の業ですよね。よくわかります。

うちの近辺では、週一回豆腐屋が車で豆腐や納豆、豆腐コロッケなどいろいろ売りに来るので、私はちょくちょく利用しています。豆腐コロッケは直径3,4センチと手頃な大きさで、味もあっさりしていて美味しいです。

先日NHK「コロンビア白熱教室」の最後の部分をチラッと眼にしたのですが、こういう意味の言葉が印象に残りました。

「今の自分を、明日なりたい自分に向かわせるのは『選択』しかない」(シーナ・アイエンガー教授)

補足するとすれば、この「選択」は1回こっきりでは無意味ですね。「選択し続ける」のが大切なんでしょうね。

投稿: fumixie | 2012年2月13日 (月) 15時12分

大変興味深く読ませていただきました。
野菜や果実は頭のタメに重要なんですね。うちのメニューには最近野菜スープが増えました。豆類を多めに入れ、白菜、キャベツ、パプリカ、トマト…ナスを入れます。味はトマトだったりカレー、中華風と飽きないようにしてます。どうしても肉っ気が欲しい時は鳥肉を入れると更に美味しいです。ゴハンを少量混ぜて煮込むとリゾットにもなります。大人も子どもも美味しく野菜がたくさん採れますよ。

投稿: mills | 2012年11月 9日 (金) 08時29分

millsさん、コメントありがとうございます。

野菜スープですか、季節柄、これからは御馳走ですね。
野菜たっぷりなら最高!
リゾットにもなるというのが「ミソ」でしょうか。
すばらしいレシピ、美味しそう。

投稿: fumixie | 2012年11月 9日 (金) 18時12分

最近流行りのスムージ―は身体にも脳にもいいんですね。寒い冬には少しつらいスムージーですが、継続して頑張ろうと思います!

投稿: まりおん | 2014年12月12日 (金) 18時18分

まりおんさん、コメントありがとうございます。

継続・・・いい言葉です

習慣になってしまえば、頑張る必要もなくなって、続けるのがもっと楽になるかもしれませんね。

投稿: fumixie | 2014年12月12日 (金) 21時12分

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