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2011年11月12日 (土)

サプリメントはビタミンD中毒の原因になる

文:屋台ブルー <ライフログ・オーガナイザー>

今日のエントリーを読んで、世にはばかるサプリメント信奉者は慌てるかも、というか慌てるべきだ!

サプリメントに関して日本の少し先をいく米国から学ぶべき点は多い。国立衛生研究所の調査によると1970年代に米国民のサプリメント使用率は20%以下だったが、2003-2006年の報告によると約50%に増えている。しかしながら、医師にサプリメント服用を伝える人は30%と少ない。食品と考える人が多いからだろう。最近、米国ではサプリメントの弊害に関するニュースが増えている。前車の轍を踏まないためにも、我々は注目して考えるべきだ。

先日、ライフログでもとり挙げたが、サプリメント服用と死亡率増加の関連性が報告されている「ビタミン・サプリメントで死亡リスク上昇?」。数あるサプリメントの中、マルチビタミン、ビタミンB6、葉酸、鉄、マグネシウム、亜鉛、銅のサプリメント7種類は、死亡率増加と関連性が示された。疫学調査の結果なので因果関係までは分かっていないが、漫然と長期間サプリメントを服用する危険性は明らかになった。

理由も色々と考えられ、その1つに粗悪なサプリメント製造過程がある。適量のビタミンを摂取しているつもりでも、実際は過度になっていたため問題になったという報告がある。雑誌The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism[September 14, 2011 jc.2011-1443]で報告されていた記事を10月20日のロイターヘルスのニュースでとり挙げていたが、衝撃的な内容なので紹介する。

最近日本でも注目されているビタミンD欠乏症は米国でも一般的なうえ、骨粗鬆症、癌、心血管疾患、糖尿病のリスク上昇と関連性も示されたため、米国におけるビタミンDサプリメントの売り上げは急上昇している。服用者が増えると事故が増えるのは何処でも同じで、法規制の甘い日本でも同様の問題に出くわす可能性があるだろう。

参考:ビタミンD欠乏症に関する治療ガイドライン

サプリメントはビタミンD中毒の原因になる
Supplements Can Be Source of Vitamin D Intoxication

ニューヨーク(ロイター・ヘルス)10月20日 - サプリメントのラベルにいい加減な情報を記載しているため、二人の患者がビタミンDの過剰摂取を引き起こしていた。二人ともビタミンD中毒の原因がすぐに分からなかった。

彼らは米国で製造されたサプリメントを服用していた。

9月14日に雑誌Journal of Clinical Endocrinology & Metabolismのオンライン報告で主要著者だったLisa G. Newman医師が電子メールでロイター・ヘルスのインタビューに答えている。「高カルシウム血症の鑑別診断として医師はビタミンD中毒を考慮しなければならないだろう。必要ならば、適切な病歴情報を引き出すために何度も繰り返して患者に訊ねなければならない。患者は、ビタミン剤を中毒を引き起こす可能性がある薬と思っていないからだ。」

ニューヨークの ベス・イスラエル・メディカルセンターのNewman医師らのグループは、まず最初に58歳の男性患者に関する症例報告をしている。特記すべき既往歴は無かったが、数週間にわたる倦怠感、過度な口渇と多尿、知的レベル低下を訴えて来院した。Newman医師が診察した時、患者は不活発で血清カルシウム値が15.0mg/dl(基準範囲8.5-10.5mg/dl)、血性クレアチニン値(腎障害や筋肉障害)は1.78mg/dl(基準値(男性)0.6-1.2mg/dl)になっており、中等度の貧血も呈していた。

当初この患者は薬の服用を完全に否定していた。繰り返して質問を重ねた結果、2ヶ月前からマルチビタミンを服用していたことを話してくれた。このマルチビタミンは医師によって処方されたものだった。

紫外分光光度法と高速液体クロマトグラフィを使って調べたところ、1カプセルにはラベルに記載の1600IUではなく、186,400IUのビタミンD3が含まれていた。さらに、効能書きには日に1個の服用すべきところを記載ミスから10カプセルの服用を勧めていた。

何を意味するか説明すると、この患者さんは2ヶ月間毎日、ビタミンD3を180万IU摂取していたことになる。患者が信じて服用している量の実に1000倍以上の量を摂取していたことになる。

高カルシウム血症(ビタミンD過剰摂取の副作用)は、生理食塩水、利尿剤、カルシトニン含有の点滴によって是正された。

二人目の患者は、40歳の男性で、嘔気、嘔吐、そして血清カルシウム値は13.2mg/dLだった。彼は過度の口渇、多尿と筋肉痛を訴えていた。

彼の場合も同様に繰り返して質問することで、1月間毎日複数のサプリメントを摂取していることが分かった。その中の1つにビタミンD3を1000IUと記載されているサプリメントがあったが、実際は970,000IU含まれていた。この患者もラベル表示量の1000倍以上の量を摂取していたことになる。

カルシウム値は点滴投与のみで是視され、その後、水分補給、低カルシウム食、そしてビタミンDの含有していないサプリメントを服用して退院となった。

二人とも25(OH)D[*注]が正常化するまで薬1年以上かかったけど、400ng/ml以下に低下したら、血清カルシウム値は基準値にもどり後遺症も残さず無症状になった。

ビタミンD欠乏症はどちらかと言えば一般的で、骨粗鬆症、発癌、心血管疾患、糖尿病のリスクと関連性がもある」とNewman医師は電子メールで説明している。「したがって、ビタミンDサプリメントの売り上げは急上昇している。不必要な中毒症状を避ける優れたサプリメント製造工程を整える必要がある。」

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コメント

サプリメントというと街中にあふれていますし、気軽に服用してしまうイメージがありますが、このような症例が報告されているとは。。。
勉強になりました。

投稿: Y.S@ | 2011年11月17日 (木) 09時50分

この記事を読んで改めてサプリメントの過剰摂取の怖さを思い知りました。街中の薬局を除けば数多くのサプリメントが陳列され、どうしてもサプリメント=体に良い物というイメージが定着している自分があります。やはり過ぎたるは及ばざるが如しといったところでしょうか?

投稿: yasupon | 2011年11月17日 (木) 15時36分

恐ろしい話ですね。健康につながると思って飲んでいるもので健康を害するんですもんね。知ってると知らないでは大きく違う、知識は宝ですね!とても勉強になりました。気をつけます!

投稿: | 2011年11月22日 (火) 11時43分

恐ろしい話ですね。健康につながると思って飲んでいるもので健康を害するんですもんね。知ってると知らないでは大きく違う、知識は宝ですね!とても勉強になりました。気をつけます!


投稿: タケノコ | 2011年11月22日 (火) 11時45分

私はプロテイン愛用者です。こちらのサプリメントも気をつけた方が良いですよね…。

投稿: kirichan | 2011年11月30日 (水) 17時57分

サプリは日常的に使うものではなく、一時的、緊急的な場合によって使うものであると考え改まる必要があると思います。
やはり、サプリよりも野菜や動物などを副主食(副食)にして過ごした方が無難ですね。
アメリカにはサプリメントに頼る傾向が強いのは経済的な問題と知識層との関連性があるでしょうね。

投稿: n | 2013年5月 2日 (木) 11時57分

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