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2011年10月13日 (木)

Hara hatchi bu

文:fumixie <fumixie@gmail.com>

食事については、「心臓に良いものはおおむね脳にも良い」という経験則に従うのがいいだろう。食べすぎるときは「Hara hatchi bu(腹八分)」を思いだしたまえ。

-- "Scientific American" の記事より --

2009年3月3日付けで、サイエンティフィックアメリカン誌"Does Eating Fewer Calories Improve the Brain?" というタイトルの記事が載りました。「摂取カロリーを減らすと脳の働きは良くなるか?」ということですね。

摂取カロリーを減らす効果については、Life-LOG にも 摂取カロリーと寿命の関係(その2) 2010.04.21摂取カロリーと寿命の関係 2010.04.19 といった記事を書きましたが、その意味では第三段ということになります。

この記事では冒頭で、カロリー制限食を与えられたラットは、十分に餌を与えられたラットよりも2倍ほど長生きしたという1930年代の研究に言及して、

「カロリー制限と長寿の関係は、ヒトにおいてはまだ十分に証明されているわけではないが、短期の臨床研究では、CRが健康に関する極めて重要な代替マーカー、たとえば体重や血圧、血糖値、インスリン値、血中コレステロール値、血中中性脂肪値、炎症の程度を改善することがはっきり示されている。
と書いています。

そして、高齢者に記憶障害のリスクが増加し、肥満率が高まっていることを考えると、脳の能力を高いまま維持するうえで食事が持つ役割は重要性を帯びている、と指摘しています。この記事は、超高齢化社会に突入しつつある日本にも当てはまるかもしれませんね。

この記事の関心は、カロリー制限食がヒトの脳に与える効果と、記憶を助けるといわれている他の食事(たとえば健康的な不飽和脂肪が豊富な食事)をとった場合の効果を比較することにあるようです。記事で取り上げているのはドイツ、ミュンスター大学(University of Munster)の神経学者 Agnes Floel らが行った研究です。

この研究では、50歳から80歳までの、平均するとやや過体重気味ながらも記憶力の正常な成人50名を年齢、性別、体重を元にして3つのグループに分けました。そして

グループ1には、重要な栄養素は通常レベルだが一日の摂取カロリーを30パーセント減らした食事が与えられた。栄養不良状態を防ぐため、最低レベルは一日1200カロリーに設定された。グループ2には、総脂質量は変えずに不飽和脂肪を20パーセント増やした食事が与えられた。したがって健康にいい(不飽和)脂質と健康に悪い(飽和)脂質の比率が高くなった。グループ3はコントロールとして通常の食事が与えられた。
のだそうです。

それによると、

  • カロリーを減らしたグループは体重が少し(2.4キログラム)減少したが、他の2グループは体重がやや(1キログラムほど)増加した。
  • カロリーを減らしたグループでは、一覧表に書かれた言葉を思い出す(遅延想起という)能力にきわめて大きな改善(ベースラインより約20パーセント向上)が見られた。それに誤りも減少していた。
  • この記憶力の改善は、血中インスリンおよび炎症マーカー(C反応性タンパク質と 腫瘍壊死因子α(TNFα))の減少と相関関係を示す傾向があった。
  • 他の2グループでは記憶力に変化は無かった。
という結果になったそうです。

そして、低カロリー食が記憶に与える効果を実証するために、高齢者に対して計画された最初の試験という点で称賛に値すると評して、

通常アルツハイマー病のごく初期に最初に低下するある種の記憶(遅延想起)についても改善されることが実証された。
と書いています。

ただ、将来有望な研究だが限界があるとして、次の点を指摘しています。

  • サンプルサイズが小さい
  • 3グループのベースライン特性に大きな違いがある
  • 食事が自己申告なので信頼性が低い
  • 多重比較による偶然の所産という可能性もある
  • グループ内の被験者は社会との接触が多い
  • 食事の厳守にかなりバラツキがある
こういったことから、この研究は予備段階と位置づけるべきだろうと言っています。

そして、さらに大規模な研究がなされるまでは、「心臓に良いものはおおむね脳にも良い」という経験則に従うのがいいだろう。食べすぎるときは「腹八分」を思いだしたまえ。しかし事前に必ず医師に相談すること、と結んでいます。

屋台ブルーさんがときおりネタにしている dietblog にも、"hara hachi bu" などという綴りで、「腹八分」に言及している記事が7本ありますね。

「腹八分」を自覚するには、WebMD に載っている "Slimming Slideshow: 24 Ways to Lose Weight Without Dieting" という記事が役に立つかもしれません。これはスライドショーになっていて、その15枚目にコツが載っています。これをネタにした 食事の「間」を逃すな でもわかると思います。

「腹八分」、恐るべし!!

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コメント

高齢の方の中にもカフェでまったりしながらデザートを食べてる方が増えましたね。

また高齢の方は『カロリーがたかくても好きなものを食べたい!』と言われる方もいるかと思います。

体(認知症)のことを考えれば、カロリーを控えた食事を心がける必要がありますね。

投稿: ten | 2011年10月13日 (木) 21時08分

tenさん、コメントありがとうございます。

おっしゃるとおりですね。私が知っている、とある特別養護老人ホームでは、入所なさっている方でタバコを吸いたい人は自由に吸えるようになっています。

禁煙を強いてストレスになるよりは、好きなことをして楽しく暮らせた方が良い、という考え方のようです。

それはそれでいいと思いますが、若いうちから健康的な生活を習慣づけておけば、あとが楽、ということも言えるかもしれませんね。

投稿: fumixie | 2011年10月13日 (木) 21時22分

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