COPDの生涯リスクは4人に1人
文:屋台ブルー <ライフログ・オーガナイザー>
COPDと言われても「なんやねん?」と思われた人は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)総合情報サイトを見てください。和田アキ子さんがテレビで宣伝しているから見かけたことあるんじゃない?
前回のエントリーで養老先生と日本禁煙学会のやり取りを紹介したら、愛煙家と嫌煙家の意見は交わらないという意見をコメントで頂いたけど致し方ないでしょうね。しかし、禁煙活動を「おせっかい」レベルに思われると残念なことだと思う。
分煙化がすすんでいるから「喫煙」は個人の嗜好で他人にとやかく言われる筋合いはない!と仰るなら、大麻(戦前は自由だったらしい)、覚醒剤、麻薬など他人に直接影響を与えない薬物はどうして規制されているのでしょう?これを合法にすると、社会・経済的に国にダメージを与えるという表向き(?)の理由を大半の人は支持しているからじゃないかな。アルコールはどうですか?アルコールは社会に受け入れられて多くの人が嗜好品とし飲まれているよね。でも、米国では社会悪として禁酒法(宗教的な意味合いもあったけど)が施行されていた歴史もありました。
多くの研究データの蓄積によって社会通念は変化している。これまでは、タバコの問題もアルコールと同じと捉える人も多かったのでしょう。しかし、蓄積されていくエビデンスを見れば、タバコは公衆衛生上大きな問題を抱えていることが明らかになってきている。今日紹介する雑誌The Lancetに掲載された報告(カナダの報告なんで直接日本人に当てはまらないから注意)をみても分かるだろう。喫煙とCOPDの関連性は否定しがたいもので、日本でもCOPDの治療にかかる医療費はこれから莫大なものになっていくって想像できる。非喫煙者が喫煙者のCOPD治療のために税金を払わなければならないんですよ。
医療費を減らすことが国の義務なら、なぜ国はもっと積極的に禁煙活動に力を入れないのでしょうか?「タバコ1箱1000円」のどこが悪いのでしょうか?1000円にすると喫煙者は激減するけど、タバコ1箱当たりの税金は増え、タバコで得られる税収は変わらないという試算があるから国は困りません。厚生労働省の小宮山大臣の発言が不適切とは思えねいけどね。タバコ1箱を1000円にして困るのは誰?売り上げが減るJTですよ。JTは巨大企業で財務省に太いパイプがあるって話。タバコ税問題は、政治的問題として話し合われているって馬鹿な私でも想像できるよ。国民の健康を考えれば小宮山大臣に頑張ってもらいたいけどどうなることでしょう。
じゃあ今日のニュースを紹介しよう。
カナダの住民ベースの研究によって、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に罹患する生涯リスクは4人に1人以上という見解が、2011年9月8日に雑誌The Lancetに掲載された。
「大規模で、多民族性に富む北アメリカの住民ベースで、COPD発症の生涯リスクを定量化する試みだった」とカナダ、オンタリオ州、トロントにある臨床評価科学センターのAndrea Gershon医師らのグループは話している。
総人口1300万人を抱えるオンタリオ州の複数の行政機関登録の健康データを使って、後ろ向き縦断コホート研究によって確かめられた。
1996年に研究開始時、COPDではない全ての住民を登録して、最長で14年間追跡することで3種類のアウトカムに分類した:医師によってCOPDの診断を受けた人、80歳まで生きられた人、もしくは死亡した人。
80歳より若くCOPDの診断を受けていないオンタリオ州の住民すべてが登録され、35歳以上の人で、過去の検診データからCOPDの診断基準に合致していれば、医者によって診断を受けたというカテゴリーに分類された。
1300万人の住民ベースのデーターベースから、579,466人が研究期間中にCOPDの診断を受けた。最終的に、COPDの生涯リスクは80歳までで27.6%だった。このリスクは男性(29.7%)が女性(25.6%)より高く、社会経済的地位が低い人(32.1%)ほど、高い人(23.0%)より高かった。
住んでいる場所も影響した。郊外に住んでいる人(32.4%)は、都市部に住む人(26.7%)より高リスクだった。
著者が強調していたことは、COPDの生涯リスクは、一般的に人が興味を持つ他の疾患リスクと同等かそれ以上だったということだ。
もう少し詳しく述べれば、うっ血性心不全のリスクに比べればCOPDのリスクは2倍(男性なら29.7%vs16.6%で、女性なら25.6%v11.5%)高かったし、急性心筋梗塞(男性で29.7%vs10.7%で、女性なら25.65vs4.6%)、乳癌(25.6%vs7.6%)、前立腺癌(29.7%vs9.3%)では3〜4倍高かった。他の癌に比べれば7倍ほど高かったという。
「この新しい知見によって、COPDが、どれ程大きな重荷を社会に与えているか人々に感心を向けることができ、この病気と戦うための注意や資源を必要としていることを一般市民に教えることができた」と著者は説明している。
この結果から禁煙プログラムの後押しもできるし、COPDの重荷を減らす何らか対策をすすめる働きかけになると著者は強調して言っている。
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コメント
確かにCOPDの治療のことを考えると、喫煙者の為に税金を払うのは納得いかないですね。。。。
自分の治療費は自分で払う、という意味で1箱1000円は賛成です。
投稿: @K | 2011年9月22日 (木) 12時51分
亡くなった祖父がCOPDを患っていました。
原因は喫煙ということで、元気な頃は『好きなものを取り上げるのはいじめだ。』と言われました。
タバコが値上がりすれば、喫煙率も低下するでしょう。
高くても止めれない人が喫煙を続ければ税収も困らないでしょうし。
元気に長生きしてもらいたい家族としては、値上げは賛成です。
投稿: ten | 2011年9月22日 (木) 17時19分
最近はタバコの値上げで、かなり禁煙ブームが広がったと思います。
私はタバコを吸わないので、仕事関係者や友人から受動喫煙をすることがとても嫌です。
というわけで、タバコの値上がりには賛成です。
投稿: さくらもち | 2011年10月27日 (木) 17時17分