クランベリーの臨床的価値
文:Ctom
女性に多い疾患の中に尿管感染症(Urinary Tract Infections)があります。
細菌が尿道から侵入し感染性疾患を引き起こしてしまう病態です(ざっくりとした説明ですが)。
この手の疾患と似たものにはカンジダ症もありますよね。公衆浴場で感染することがあるこの疾患です。
どうしても女性は尿道や性器が男性と比較して長さが短く細菌も“比較的“容易に侵入し、増殖することが可能なことから、尿管感染症というものが存在しています。
さて、軽度であれ、この病態を改善・予防させるためによく指導されることがあります。それは、“レモン”と“クランベリー”です。
レモンに含まれるサポニンという成分が改善・予防のために重宝され、この疾患に対して指導されることがあります。一方、クランベリーでは、それに含まれるプロアンチオシアニジンという成分が同様に効果を示すとされています。
今回の記事はこのクランベリーの臨床的効果を検証した論文がありましたので、紹介したいと思います。
あまり、一般的に面白い内容ではないかもしれませんが、個人的に興味があったものですから、とりあげました。
では、いってみましょう☆
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今回の記事はARCHIVE of INTERNAL MEDICINEのCranberries vs Antibiotics to Prevent Urinary Tract Infectionsという記事を参照しています。ただ、Journal WATCH specialtiesのCranberries vs. TMP-SMX to Prevent Urinary Tract Infectionsにも原文を取り上げた記事がコメント付きで紹介されていました。
論文調査は閉経前の221人女性(平均して35歳)を二重盲見法を用いて調査されました。一方のグループにはクランベリー抽出物、一方のグループには抗生物質を用いて1年間の追跡調査が行われています。
大方の予想通り、抗生物質の方がクランベリーよりもより確実に症状軽減及び感染症の改善が行われていますが、クランベリーでも多少の変化が出ています。研究調査からすればクランベリーを用いたほうが効率的ではないかという印象を持つ内容ですね。
Journal WATCH specialtiesの方の文章のコメントには以下のように掲載されています。
コメント:クランベリー抽出物摂取群ではUTIsの発生が前年度よりも少なかったのですが、TMP-SMXではより効果的でした。しかしながら、抗生物質を服用していた女性の群の85%以上の大腸菌が抗生物質抵抗性を示す菌として発達したのに対し、クランベリー抽出物摂取群では30%より少ない結果となりました。残念ながら、細菌の研究ではクランベリージュースは偽薬よりUTIsを予防したという結果には至りませんでした。結局のところクランベリーもしくはクランベリー中の成分が臨床的に役立つかどうかは不明瞭なままです。
ここでのクランベリージュースというのは、基本艇にフレッシュな状態であることに注意してください。
日本で売られているほとんどは濃縮還元法を用いたジュースですので、期待される成分はほとんど含まれていないことが推測されています。
細菌の抗生物質抵抗性を示すのは問題がありますが、一方で、クランベリーを用いた方法というのも効果のほどに不満の残る結果となったわけです。
クランベリーが効果的という通説はこれから覆るかもしれません。
ちなみに、レモンの摂取を行う目安の一つに両方のスネの部分の筋(前脛骨筋部)が“つる”と訴える場合に効果を示す時があります。軽度の尿道感染症に罹患しつつある場合に反射的にこのような反応が現れることがあるようです。この場合に1日に3個のレモンを絞って(苦味が出るくらい)飲んで、3日程度で改善すると言われています。
もし、身に覚えのある場合にはトライしてみるとよいかもしれません。
Ctom
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コメント
元来、ST合剤は耐性が出易いと学習した記憶が…。クランベリーで予防出来れば、効果的ですね!
投稿: | 2011年8月22日 (月) 14時08分
クランベリーが尿路感染症に対して有効というのは海外ではけっこう知られているみたいです。僕もその話を聞いた際にドクターに聞いたのですが、フレッシュジュースでないと効果が出ないと言われていました。日本では難しい話だなぁと思っていました。
投稿: Ctom | 2011年8月22日 (月) 15時15分
クランベリーで効果が期待できることは画期的ですね。
病気を患ってしまうと、薬で治療というイメージですが、自然にある食材で予防できるのであれば、おいしく、楽しく摂取できるのでいいですね。
ぜひ試してみようと思います。
投稿: ten | 2011年8月29日 (月) 15時13分