エクササイズなしの食事だけで糖尿病のコントロールは十分?
文:屋台ブルー <ライフログ・オーガナイザー>
先月の末に米国サンディエゴで開催された第71回米国糖尿病協会年次学術集会/American Diabetes Association (ADA) 71st Scientific Sessionsで発表があった話題を紹介するけど、前置きに、雑誌JAMAで昨年報告された「Effects of Aerobic and Resistance Training on Hemoglobin A1c Levels in Patients With Type 2 Diabetes/2型糖尿病患者におけるエアロビック+レジスタンス・トレーニングのHbA1cへの効果」を紹介しておく。
コントロールグループ(トレーニング無し)、エアロビック・トレーニング単独グループ、レジスタンス・トレーニング単独グループ、もしくはエアロビック+レジスタンス・トレーニングの組み合わせグループに患者を振り分けて、HbA1c(糖尿病のマーカー)の改善度を調べたけれど、エアロビック+レジスタンス・トレーニングの組み合わせ以外は全く効果が無かったという結果になった。
要するに糖尿病のコントロール目的のためにエアロビック・トレーニングもしくはレジスタンス・トレーニングだけするというやり方は効率が悪いどころか無駄だって話だ。どうせ運動をするならエアロビックとレジスタンス・トレーニングを組み合わせる必要がある。
そして今回の話に移るが、2型糖尿病患者に対して食事療法に運動を組み合わせた場合、HbA1cへの影響がどうなったかが発表された。
この発表は、同時に雑誌Lancetにも掲載されたようだ。
この講演は、英国ACTID(Early Activity in Type 2 Diabetes)臨床試験の結果報告だった。初期の2型糖尿病患者 593名を無作為に3つのグループに振り分けている。1つはコントロール・グループとして、従来の治療法、簡単な教育セッションで食事とエクササイズのアドバイスを提供、6ヶ月と12ヶ月目にフォローをしている。2つ目のグループは、食事療法単独ではあるが、かなり詳細な食事指導が含まれていて、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月目の受診時に十分時間をかけた食事指導をしている。そして3つ目のグループは、この食事療法単独グループと同様の食事指導に加えて活動量を増やすことに重点を置いた。今回のケースではウォーキング、1日少なくとも30分間、週に5日間を指導している。モチベーションを維持するための読み物や、万歩計、そして活動記録も取らせた。
臨床試験として、6ヶ月目、12ヶ月目のHbA1cを評価項目にしている。6ヶ月目で、コントロールグループは軽度悪化したが、食事療法単独グループと運動療法を組み合わせたグループは改善していた。しかし、この両者に差は見られなかった。また副次評価項目である体重、インスリン抵抗性、糖尿病薬の量にも変化は無く、1年後の評価でも食事療法単独グループと食事療法+運動療法グループの間に有意差はみられなかった。
最初にとり挙げた雑誌JAMAの報告で言われているようにエアロビックとレジスタンス・トレーニングの組み合わせた運動なら有意差が生まれたかもしれない。
なぜ、運動が効果を示さなかったのか理由を考える場合、運動そのものに焦点を当てるべきじゃないと、この知見を発表したRobert Andrews医師が説明している。腹囲に関連した評価をした場合、腹囲の減少は、中等度の運動の量には相関が見られなかったが、「座っている時間」の短さと関連があったという。まさにこの事から言えることは、中等度の運動をするよりも、座っている時間を減らすことを考えた方がいいといえる。
さらに、可能性として、「トレーディング(取引)」と呼ぶ代償をしているんじゃないかということ。ジムに行って運動をするから甘い物をちょっと食べておこうって話になっているのかもしれない。
理由は何にしろ、予算の事を考えて糖尿病をコントロールするのであれば、治療開始の最初の1年目は運動の指導に力を入れるより食事療法に力を入れる方が賢明だということだ。
糖尿病のコントロールだけでなく、これはダイエットにも言えるんじゃないかな。運動だけでダイエットをしようとするのは間違いだ。体重を落とすために食事療法が最も重要で効果的だ。しかし、これはダイエットを開始した最初だけで、長期的な観点に立てば、運動は必ず必要になる。運動で得られる利点は、今回の評価項目に含まれていなかっただけで、全く無いということではないだろう。
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コメント
食事療法のみによるダイエットに取り組んでいるyasuponです。私も「糖尿病のコントロールの初期には食事療法に力を入れるべき。」との意見に賛成です。ダイエットにおける、「トレーディング」なる言葉も初めて知りましたが、やはり食事と引き換えに運動をするというメンタリティでは一生ダイエットには成功しないと思います。「ダイエットへの道は険し!」というのが古今東西共通ではないでしょうか?
投稿: yasupon | 2011年7月11日 (月) 16時42分
やっぱり食事が大事なのですね!
でも週5日間、30分以上のウォーキングを続けるって大変ですよね。
万歩計や記録することでモチベーションが上がるのかぁ。。
習慣のひとつにならないと続かないですね。
投稿: あんみつ | 2011年7月19日 (火) 21時26分
食生活が偏りがちでジュースをよく飲むせいか、最近Hb A1cの値が上がってきました。糖尿病の末路は本当に恐ろしいので、早く運動と食生活の改善を行わなければと考えています。
投稿: さくらもち | 2012年2月 9日 (木) 12時51分