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2011年4月18日 (月)

え?汚い空気の方が喘息が発生しにくい?

<文:Ctom>

空気汚染の問題はいつの時代も深刻な問題であると思います。ただ、時代と共に私たちの意識もずいぶん変化してきているように感じます。

あるいは、それだけでなく、細菌に対する嫌悪感というか抵抗感というか。そういった感情も多くの人がもっていて、数年前では考えられないくらい敏感になっているようです。そういった中で誤解も数多くあることでしょうが、逆説ロンも数多く展開されています。

今回の記事はThe NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINEExposure to Environmental Microorganisms and Childhood Asthma Feb.24 2011の記事に対して医師が意見を述べているものです。

この記事、意外と多くの人が翻訳していて、ブログなどで私見を述べています。
その中でも分かりやすく記事を翻訳・分析している方がおられますので、参考までにご紹介します。

NEJM abstract 環境微生物暴露で小児喘息のリスクが減少する!?


では、それを踏まえて、今回の記事です。
Journal WATCH より、Don't Just Eat Dirt, Breathe Dirt!April, 1st 2011のものです。

内容はそんなに長くありませんので、ふーん。という感じで読んでみてください。
衛生環境を整える中で、何でもかんでも滅菌したほうが子供たちにとって“良い”と考えておられる方や、滅菌が過剰過ぎて子供たちの抵抗力が弱まっているのではないか。と考えている方。


そういった意見を持った方々の参考の一つにという感じです。
あまり、深く考えすぎず、この手の話はまだまだ議論の余地がありますね。そもそも、公衆衛生学というもの自体がまだまだ歴史が浅いので、どういったものが正しいのかというのはほとんどわかりません。


私たちのいろいろと考えるところがあるかと思います。
では、いってみましょう!


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Don't Just Eat Dirt, Breathe Dirt!


幼少期の早い時期に様々な種類の細菌がコロニー形成することは実は免疫の正常な発達において非常に重要なことです。


研究によると、細菌のコロニー形成は喘息になる危険性を減らすことに関連していたり、あるいは出生早期にそういった細菌の刺激を経験して先天的な免疫システム構築するのかもしれません。これらのデータはいわゆる衛生学上の仮説を支持するものになるでしょう(参照: N Engl J Med 2002: 869, 347:930)

最近では、ドイツの研究者たちが多くの細菌にさらされる農場地域の子供たちとヨーロッパ中央部の非農場地域の子供たちという二つの大きな対照群を比較分析しました。

6843人の被験者によるPARSIFAL研究では、子供部屋のマットレスの埃のサンプルより細菌のバクテリアを抽出したのですが、これらは培養法では測定できない細菌を検出しています。9668人の被験者によるGABRIELA研究では、子供の部屋の空気中の埃から培養法を用いて細菌群と真菌の評価を行った。どちらの研究結果においても農場地域で育った様々な種類の環境細菌に触れる子供たちの方が喘息やアレルギーなどの罹患率が少ないものでした。多様な細菌は喘息に罹患するリスクとは逆な関連を持っています。様々な種類の細菌や真菌にさらされることは、喘息発生率とは逆の関係を持っています。アトピーにおいては、農場地域の子供たちでは細菌多様性による影響が少なかったです。


コメント:これらの研究結果は、肺には肌や腸管と一緒で無菌状態ではないことを思い出させます。幼少期の早期に多様な種類の細菌に触れることは、免疫機能の発達において重要なことです。免疫機能の発達に必要なメカニズムには、細菌の体内でのコロニー化もしくは共生なのですが、免疫の発達に必要な“良い”細菌株を摂ろうとすれば、“悪い”細菌の感染も伴うかもしれません。これら両方の刺激が私たちの体にあることで、先天的な免疫システムやTh1、Th2のシステムがバランスよく発達します。

※Th1/Th2システムについて詳しいことはこちらを参照してください。

長期間にわたってGABRIELAやPARSIFALで子供たちを評価したことは興味深いとしています。もしもこの研究の衛生仮説が正しいならば、農場地域にすむ子供たちは自己免疫疾患(例えば、糖尿病、セリアック病、クローン病など)の罹患率は非農場地域に住む子供たちに比べて少ないものになります。


私たちはすべての子供を農場で育てることができないからと言って、都心部で育てている子供たちをもっと“汚れた”環境で育てるべきでしょうか。農場環境で育った子供たちはワクチン接種を減らすべきでしょうか。親として、また一人の医師としてさらなる研究調査を望みます。
— Mary Wu Chang, MD
Published in Journal Watch Dermatology April 1, 2011

                           ※

確かに私たちが子供の頃はこんなにまで抗菌に気を使うことがありませんでした。しかし、今の私たちは喘息疾患を持っている人も多いし、花粉症も多くの人が持っている。

この研究がどこまで影響しているのかは定かではありませんが、たくさんの微生物が存在する環境の人たちが元気そうに見えるような気もします。気のせいかもしれないけど・・・。


アレルギーに関する歴史も浅いし、ちょっと前までは花粉症と風邪の違いがわからなかったんだから、アレルギーに関することは今後に注目ですね。

僕もちょっとアレルギーに関することはいろいろと見ていきたいと思っているところでした。

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コメント

いつも楽しく拝見させていただいています。
最近は子供の衛生面に敏感な方が多いようですね。
確かに、『外から家に帰れば手洗い、うがい。』、そういったことは必要です。しかし、『汚れるから動物に触れてはいけない。』というようなしつけをしてしまえば、子供が体験し、成長する環境を制限してしまうことにつながってしまうような気がします。

投稿: RIE | 2011年4月20日 (水) 11時42分

衛生面の充実は大切だというのはよく耳にする話ですが、ある程度抵抗力をつけるために不衛生な環境も必要なのかも知れませんね。今後もいろいろなデータが出てくるのか楽しみです。

投稿: タケノコ | 2011年4月21日 (木) 10時49分

RIEさん。コメントありがとうございます。

僕も同感です。動物や他の生物が汚いからと言って避けるよう教育するのはRIEさんの言うように脳や考え方、性格などに大きく影響してるように思えます。

今後も環境に関してはよい研究が出てほしいですね。

投稿: Ctom | 2011年4月21日 (木) 11時14分

タケノコさん。コメントありがとうございます。

アレルギーの発症には栄養的な側面も否めないところですが、環境的な部分ではまだまだわからないところが多いですよね。人工的な汚染された環境は人や生物にとっていいことはないのでしょうが、自然環境がどれほど生物に影響しているのかは今後に注目ですね。

投稿: Ctom | 2011年4月21日 (木) 11時17分

いつも勉強させてもらっています。
母が『最近の子供は恵まれすぎてるから風邪もよくひくし、弱くなるのよ!』とよく言っていたのを思い出しました。
最近は高性能の空気清浄機なんかもありますが、細菌などに過敏になりすぎても良くないんですね。

投稿: n.i | 2011年4月22日 (金) 16時06分

以前、アレルギー性鼻炎と喘息に適応のある薬剤を扱っていましたので、今回のテーマは思い当たるところがあります。

田園風景の広がる空気のきれいな新興住宅地なのに、担当のエリアでは小児喘息とアトピー性皮膚炎が増加傾向にありました。
特に強いアレルゲンがあるわけでもなく、むしろ都会部よりもクリーンな環境です。
小児科のDrが仰るには、外刺激に対して免疫が過敏に反応しすぎる事が原因とのことで、アレルギーの典型でした。

ただ分からなかったのはなぜ埃、花粉、黄砂で反応するのかという事です。本来、免疫反応は強力なウイルスや菌に対抗する力を持っているはずで、この程度では反応しないのではと考えました。

この疑問に対して今回の一文がとても参考になりました。
『これら両方の刺激が私たちの体にあることで、先天的な免疫システムやTh1、Th2のシステムがバランスよく発達します。』
バランスが崩れた状態で免疫系が発達すると、Th1、Th2シグナル伝達系が異常を来すのではないでしょうか。
つまり、弱いアレルゲン【刺激】でも強力な免疫反応のトリガーとなるシグナル伝達が行われるのではと考えてみました。

アレルギーに苦しむ人々はとても多く、即座に治癒する薬剤を開発できればノーベル賞級です。
人を取り巻く環境はここ50年で大きく変化しました。
しかし生物の遺伝子が突然変異する為には100万年かかると言われています。
圧倒的に環境の変化が早く、適応できていない現象がアレルギー反応なのではないでしょうか。


投稿: NV-CVM | 2011年4月23日 (土) 22時28分

はじめてコメントします。先生の言う通り、環境とアレルギーについては解明したらノーベル賞ものだと聞いたこともあります。それほど難しいのだと思います。実は私も喘息の予備軍のようなもので大人になってから気管支が弱くなりました。小児喘息や成人喘息の方にとって、どのような環境が最適なのかはとても考えさせれます。

投稿: Deep | 2011年4月27日 (水) 12時21分

いつも機知に富む記事を有難うございます。最近では喘息だけでなく、子供の花粉症も増えて来ているといいますし、衛生的な環境も子供達にとっては良し悪しといったところでしょうか。確かに、私が子供の頃はよく公園の砂場等で遊んで、公園の水を飲んで丸一日を外で過ごすような日々でしたが、最近の子供は砂場遊びも殆どしてないような気が致します。なにしろホームセンターでは抗菌処理済みの砂が売っている位ですもんね・・・。抗菌グッズもおおはやりの時代にあってはアレルギーも宿命といったところなんでしょうね・・・?

投稿: yasupon | 2011年4月28日 (木) 10時47分

n.iさん。コメントありがとうございます。

n.iさんがおっしゃる通り、成長にとって悪い刺激というのは逆にそれに抵抗するために発達する機会になりますね。

先日、指先に泥のついた手をした80代の方々をたくさんみました。手を洗っても泥が落ちないほど土を触ることの少ない子供たち、汚れることに抵抗を持っている世代には警笛と感じてほしいですよね^^

投稿: Ctom | 2011年5月 6日 (金) 09時50分

NV-CVMさん。コメントありがとうございます。

いつも多角的なコメントをありがとうございます。いい刺激になりますね^^

免疫サイクルの発達において栄養的な影響(特にトランスファットによるもの)に関する記事をよく見かけています。環境刺激に過敏になる体を作ること、子供の頃からの環境によるもの、とても様々な因子が入り混じっているように感じる今日この頃です。

しかし、まだまだ治療のアプローチにおいては一面をピックアップした方法しか存在しないので、もっと様々なアプローチが将来的に必要になるのではないかと思いました。もちろん、原因を予防する方法を見つけることも急務ではないかと思いますが・・・。

投稿: Ctom | 2011年5月 6日 (金) 09時54分

Deepさん。初コメントありがとうございます。

大人のアレルギー性喘息に関わる記事がMedical news todayにいつだったか出ていました。子供の頃の発疹が大人になってからの花粉症やアレルギー性喘息に関連するという記事でした。

アレルギーの分野はまだまだ初期的な段階でしかありませんが、掘れば掘るほど原因になるのでは?というものが増えている状態ですよね。今後もアレルギーに関係する記事は追っていきたいと思っています。

投稿: Ctom | 2011年5月 6日 (金) 09時57分

yasuponさん。コメントありがとうございます。

yasuponさんが感じておられる通りだと思います。抗菌が増えるほどに子供たちの体は弱っている状態です。

実は、今後将来的な見通しの中で癌やアレルギー性疾患は増加するだろうと懸念されています。このどちらも食事性因子が大きく関わるからです。

食事の中で金属摂取のバランスが悪い人たちが増えていますが、それには加工食品に含まれる金属の栄養素のせいで重金属中毒という問題が多々見られています。これらの影響で体の中の様々な代謝サイクルが崩れていることが一つ指摘されています。肝臓がんといったものも食事との影響が切っても切り離せません。

今の、加工食品中心の生活は癌やアレルギーを助長するとこの十数年警笛をならされています。こういったことは人はもっと理解を深めないといけない分野ですね。

投稿: Ctom | 2011年5月 6日 (金) 10時02分

はじめてコメントさせていただきます。
先生のおっしゃる通り、たくさんの微生物が存在する環境の人たちが元気そうに見えると私も思います。
以前、インドへ旅行した友人がお腹を壊して滞在中動けなかったという話を聞きました。また、1年間日本へ留学していたインド人の友人も、帰国した途端に2週間腹痛に苦しんだそうです。
特に日本は衛生環境が整っているので、逆に子供たちの抵抗力も海外に比べると弱いのでしょうか。私も将来自分の子供が生まれたら、アレルギー・喘息・・・と今から心配です。

投稿: さくらもち | 2011年5月12日 (木) 11時31分

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