栄養補助がクローン病や腸疾患を緩和するかも?
腸疾患を持っている人は年々増えているという話があります。以前から、学生の頃は学年に数人は腸の問題を持った子供がいたように今では思います。
メラトニンと過敏性腸症候群の記事内でも書きましたが、睡眠と腸は関係が深い。けれども、気がついていない人は結構いるのではないでしょうか?
今回の記事はCrohn's Disease: Nutritional Consideration(Dynamic Chiropractic January 29, 2011, vol.29, issue 03)を紹介します。
直訳すると「クローン病:栄養的考察」と言う感じでしょうか。
内容の感じとしては、クローン病に限らず、様々な腸の問題に関しても参考になりそうな話が載っています。
では、いってみましょう☆
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今回は長い文章なので、最初に要約を載せます。
クローン病は原因不明の腸の疾患です。
腸が炎症を繰り返す問題なのですが、意外と持っている人は多いのではないでしょうか?
腸を刺激する要素になるものは、多々あります。それらは医師や栄養士などによって指導されているかと思いますので、割愛。今回は、それに加えて摂りたい栄養素として紹介しています。
クローン病は繰り返す腸の炎症疾患です。その頻度は人によって様々ですが、栄養の補助によって明らかにその頻度をや期間、程度を減らすことが可能なようです。
まず、注意しなくてはいけないことがいくつかあります。
1.担当医師や栄養指導師によって体の状態を管理されていること
2.栄養補助は炎症が起きていない時期に行うこと。
3.炎症が起こっている時期は、医師の指示に従うこと
あくまでも栄養は補助的な役割です。それを踏まえて、以下の栄養を摂ってみるとよいという内容です。
マルチビタミン/マルチミネラル
特に亜鉛、葉酸(ビタミンB)、ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンE、鉄の吸収不良があります。
クローン病を持っている一部の患者は亜鉛の減少によって手足のしびれや皮膚の異常があるかもしれません。
必須脂肪酸
ルジリサの種油、亜麻仁油、魚油などのα―リノレン酸を摂取してください。
1日に12,000~36,000mgを推奨
自然の抗炎症物質
柳の樹皮の抽出物、クルクミン、生姜、ボスウェリアの4つの組み合わせが自己免疫疾患の炎症性サイトカインの産生を予防します。
消化酵素とプレバイオティクス
プレバイオティクスとは腸内細菌を増やすことです。逆にプロバイオティクスとは、腸内細菌を育てたり、活性化させたりすることを指します。プレバイオティクスには腸内細菌がフリーズドライされたサプリメントを摂ることも方法の一つです。この記事ではイヌリンとFOSが薦められています。
L-グルタミン
L-グルタミンには腸内細胞の修復や代謝を正常化し、栄養の吸収を向上します。生のキャベツなんかにも多く含まれていますが、熱に非常に弱いです。
この記事では1日に3回、500mgを薦めているようです。
グルコサミン硫酸塩
グルコサミン硫酸塩は血管からの物質の異常な漏出を防ぐ働きがあります。血便の原因や腸の炎症を予防するために摂取することを薦めているようです。1日に3回、500mgの摂取
上記の他にもトランス脂肪を避けることや、揚げ物、ソテーしたものなどを避けることも重要だと述べられています。使用する油においてもオリーブオイル(理想的にはエクストラバージン)やキャノーラ油を薦めています。
この記事は、おおよそ炎症に関わることの改善のための栄養指導に重点を置いているような記事でしたが、私たちの生活には大きな問題がたくさんあります。クローン病を持っていても、調子のよい時はついついトランス脂肪を摂ってしまう事も多いことでしょう。この記事の事を気をつけることで、症状の少ない時期が長く続けばとても素晴らしいことだと思います。
続きの記事も出ていたので、また、次の機会に載せたいと思います。
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以下、記事の全文
クローン病:栄養学的考察
クローン病は通常、大腸の炎症から始まり、最終的に小腸(回腸)の炎症が起こり続ける病態です。しばしば血便や吸収不良の問題を引き起こします。最も一般的な症状は下痢に伴う腹痛、発熱、食欲の減退、体重減少、そしておなかの張りなどを慢性的に感じています。おおよそ3分の1の人々が肛門の亀裂(肛門の縁に沿って線上の潰瘍)もしくはろう孔(直腸肛門の内壁面に通常にはない穴のような通り道ができる現象)などのクローン病の既往歴を持っています。
※ろう孔:腸内のヒダにできる穴で、繰り返す炎症などの結果生じるもの
クローン病の原因は完全には解明されていません。この病態の治療計画には栄養士や医師の指導を受ける必要があり、クローン病特有の急性炎症(周期的な悪化)が人生の質を脅かすこととなるので、患者には入院も必要かもしれません。炎症が悪化している状態の際には食事管理が重要な役割を持っており、患者の家庭医と栄養士とが提携して病気に対抗していきます。クローン病のようなケースの場合には様々な栄養学的治療方法が必要であり、おそらく患者それぞれに対して個別の食物過敏性を確認する必要があります。
残念ながら、通常のクローン病に対する治療は医師や栄養士によって行われますが、栄養サプリメントは用いられることは少なく、いくつかの栄養補助に関する研究報告ではクローン病による炎症の予防や減少が報告され、健康的な腸壁細胞を増やしたり、栄養吸収を増加したり、いくつかの望ましい健康的な効果が得られたと言っています。例えば、ホリスティックヘルス専門家はクローン病患者に対して栄養補助食品の利用(食事の変更に加えて)を炎症期間でない次期に提案します。それには頻繁に炎症を繰り返してしまうことを予防し、患者の身体全体においても補助効果を与える意味があります。
栄養補助の提案
マルチビタミン/ミネラルの高い有効性。研究によると多くのクローン病患者は亜鉛、葉酸(ビタミンB)、ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンE、鉄の吸収力が低下しており、しばしばこれらの栄養素は基準値以下になっています。これらの一部の患者では、葉酸の欠乏によって痛み、しびれや刺痛などを指や足先に感じることになります。
一般的にクローン病患者は亜鉛が欠乏しています。例えば湿疹や乾癬(かんせん)といった状態のようないくつかの皮膚異常を経験してしまいます。いくつかの研究では、多くのクローン病患者の実例において亜鉛の栄養補助によって湿疹や乾癬の両方の肌の問題と見た目にも改善がみられたことから、推奨されています。この中のいくつかの研究では、クローン病を持つ患者ではビタミンEが通常と比較して少ない低レベルであることも重要な項目としてあげています。亜鉛、葉酸そしてビタミンB12はクローン病による腸管の細胞のダメージを修復するのに必要な栄養素です。ビタミンAは小腸と大腸における細胞の成長と修復に必要な栄養素です。このように、「高い有効性を持つマルチビタミン/ミネラル」によるとこれらのケースにおいて栄養補助を提案していますので、下記にその内容を載せます。
○ビタミンBコンプレックス:ビタミンBを50mgと共に葉酸を400マイクログラム
○ビタミンE:400IU(ビタミンEコハク酸塩エステル)
○ビタミンD:400IU(患者は個別に1,000~2,000IUのビタミンDを加えてとることもよいです)
○鉄:6mg
○亜鉛:15mg
○ビタミンA:2,500IU
○ビタミンC:1,000mg
必須脂肪酸(ルジリサの種、亜麻仁や魚油:1,200~3,600mg/日)の摂取。一部の研究報告では、クローン病を持つ患者はオメガ3脂肪酸が足りていません。臨床報告において、オメガ3脂肪のサプリメントの摂取でクローン病をもつ被験者の一部で再発頻度が減少しました。必須脂肪酸はホルモンに変換され炎症が起こる過程を抑制してくれます。これらルジリサの種、亜麻仁や魚油の組み合わせは炎症が起こる過程を抑制して、いくつかの身体状態を助けると考えられます。
自然の抗炎症作用剤。柳の樹皮抽出物、クルクミン、生姜やボスウェリアの組み合わせには、炎症物質であるプロスタグランジンやロイコトリエンの合成を阻害し、炎症性疾患を有するすべての身体状態において鍵となるものです。加えて、クルクミンと生姜の成分(ギンギロール)は不確かな隠れた因子であるカッパβと、多くの自己免疫疾患における炎症性サイトカインの最初の転写因子の放出促進をブロックします。
クルクミンはまた、マクロファージやその他の免疫細胞の腫瘍壊死因子α(TNF-α)の過剰分泌を抑制します。腫瘍壊死因子αは自己免疫疾患とすべての身体炎症の事実上の原因となります。これら自然の抗炎症剤の複合には非中毒性で、薬剤を用いない様々な影響があります。したがって、これら4つの(柳の樹皮抽出物、クルクミン、生姜、ボスウェリア)自然の薬剤(基準に基づいて薬効のある最適量を摂取した場合)を摂ることは炎症を抑制するのに望ましい方法の一つです。
消化酵素とプレバイオティックス。一部の研究では効果が高いと提案されているものですが、消化酵素を混ぜ合わせたもの、プレバイオティクスフォス(FOS)とイヌリンを共に摂取することは数多くの消化器系の不具合に対して重要なこととなります。消化酵素は体内に入ってくる食物をより完全に分解して、栄養素の吸収量を増加します。それによって消化管内の不十分な食物の消化による問題を予防する助けとなり、また、消化酵素の働きによって消化を刺激することができます。FOSとイヌリンは善玉腸内細菌を育成し、腸管内の消化と排泄昨日の向上、そして身体の免疫系をより整える助けとなります。健康的な微生物相を作ることで、上記のものは微生物調整剤のような働きによって、様々な自己免疫疾患と炎症性疾患が改善を示します。
L-グルタミン(1日に3回500mgの摂取)。体の中で消化管は最も広くアミノ酸であるL-グルタミンを消費しています。小腸の細胞は他の臓器に比べてより多くのL-グルタミンを吸収し、第一のエネルギー源として使っています。このように、L-グルタミンの栄養補助は腸内細胞をより健康的に強化する手助けとなり、クローン病のケースにおける鍵となります。
グルコサミン硫酸塩(毎日3回500mg)。動物実験においてグルコサミン付随物質が不足することで腸の炎症状態がより悪化するかもしれないとしています。グルコサミンは体内の血管からの物質が出て行くことを防ぐ補助物質を作るのに必要であり、他の組織に異常な(正常には漏出することのない)物質の漏洩を予防しています。血液が腸管内に漏れてしまうことは、炎症性腸疾患の一般的な特徴です。
※訳注:血管には小さな穴が開いており、常に様々な物質がその穴から出て行くことで組織に栄養を供給しています。異常な状態では、もっと大きな物質(赤血球や白血球など)が漏出してしまいます。
逸話的な話であり、実験による論証では、加工されていないグルコサミンの摂取をすると、血管におけるいくつかの物質の結合をサポートするため、血管内を物質が通過することが少なくなることから、グルコサミンの栄養補助を行って、腸の炎症の再発が減少するかもしれないと報告しています。グルコサミン硫酸塩のサプリメントは自然の抗炎症物質(例えばブロメライン、クレセチン、MSM)を含んでおり、このサプリメントを使うことで腸管における血管が補強されて炎症状態にある体の状態を助けるでしょう。
その他の食事の提案
上記の栄養補助の提案に加えて、クローン病を持っている患者では炎症を促進させるアラキドン酸(リノール酸はアラキドン酸に変換されます)を高濃度で含む食品や、炎症性サイトカインを分泌促進させる食べ物を減らすことを薦めます。したがって、クローン病を持っている患者は動物性脂肪が少ない(魚は除く)食事やトランス脂肪を避けるとともにフライパンでソテーしたものや揚げ物も避けるように教えてください。また、患者はコーン油、ひまわり油、紅花油や植物混合油などを使うのを避けて、オリーブオイルもしくはキャノーラ油を用いてください。また、一部の患者ではグルテンを含まない食事を行ったことで改善がみられたことから、患者はグルテンを含む食品を避けることでより健康的になるかもしれません。
共有する上での鍵となるポイント
クローン病の発作的な炎症が起こっている期間は、患者はすべての栄養補助食品を摂るのをやめてください。この炎症期の間は注意して、患者の担当している専門医や管理栄養士に問題の治療計画を厳重に管理してもらう必要があります。緩解期の間では、ホリスティックヘルス専門家が患者に栄養補助食品と栄養素の改善を指導することによってクローン病の医学的治療効果を増大するとともに、患者自身の全体的な健康状態の増進と発作性の炎症を減らすことができるでしょう。
この記事の栄養補助食品の利用は数週間あるいは数カ月にわたって用いるものです。一つのサプリメントを1週間患者に紹介し、サプリメントを摂った患者が悪い反応がでなければ指導したサプリメントを優先に用いてください。一度にすべての栄養素を摂取してしまった際に、腸管の炎症やそれがキッカケになってクローン病の炎症期間が発生してしまうことがあるため、栄養を摂取した際に患者の腸管のショックや腸管壊死などが起こらないことは重要なことです。
文:Ctom
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コメント
とても勉強になりました。
現在はクローン病に対する薬物治療もBio製剤など、
非常に進歩してきていますが
まずは適切な栄養療法が最も大切であると改めて感じました。
投稿: E.F野 | 2011年2月24日 (木) 16時49分
E.F野さん。コメントありがとうございます。
この記事では代替医療従事者(と呼んでいいのかな?)が栄養に関する指導をするというような内容が書いてありますが、それほど海外に置いてもメディカル・ドクターは投薬治療がメインとなっているように感じています。ですが、このブログを観ている方々はそれ以上のことをしようと努力されているように感じています。
日本でも栄養に詳しい方々が医師と連携してアドバイスをしたりしているケースもあるようですが、医師が包括的なアドバイスを患者さんにできたなら、もっと効率よく症状が緩解したり、患者さんからの信頼も向上するように思えました(^^
E.F野さんのような柔軟にとらえておられる方はとても信頼されているイメージを持ちました。
投稿: Ctom | 2011年2月25日 (金) 10時06分
初めてコメントさせて頂きます。
転勤により怠っていたランニングを再開しようと、四国のランニングコースを調べているとこちらにたどり着きました。
学が足りず、本日の記事の1割も理解できていませんが、これからも参考にさせて頂きたいと思いますので宜しくお願いします。
投稿: あんこ太郎 | 2011年2月26日 (土) 02時28分
あんこ太郎さん。コメントありがとうございます。
僕が学生の頃、初めて生理学の本を手にした時に同じようなことを思いました(僕の場合は1割どころか全く分かりませんでしたが ^^;)
見たり聞いたことのない横文字が並ぶとめまいがしてきそうです。
この記事は少し特別ですが、他の記事は比較的理解しやすいものも多くあると思います。面白いことに他の記事を読んでいるうちに知識が深まり、よくわからなかった記事を読んだ際に以前よりも意味がよくわかるようになるかと思います^^
是非、今後ともこのブログを通してあんこ太郎さんにとって健康を作る上で一助となれば幸いに思います。
投稿: Ctom | 2011年2月26日 (土) 09時17分
あんこ太朗さん、初めまして。私が走っている屋台ブルーです。
3/1のエントリー「 第13回UMMLマラニック四国大会のおしらせ」をご覧下さい。参加しませんか?
投稿: 屋台ブルー | 2011年3月 1日 (火) 15時16分
現在、恋人がクローン病が悪化し入院中です。普段から食事管理には気をつけていたのですが、仕事のストレスが増える時期になると病状が悪化し、数年に一度入院しています。症状は炎症型で狭窄などはありません。
退院後はしばらくメニューにもかなり気を使うのですが、肉、キノコ類、根菜、豆類、貝類を使わないので、やはり栄養面に不安があります。
以前、私はスペインに住んでいたことがあるのですが、グルテンフリーの食材を多く見かけましたし、ラクトサ(ラクトース)抜きの牛乳も各牛乳メーカーが必ず作っているのでスーパーで選べるほどあり、スペインではアレルギーに対処された食品が多く売っていました。
その事を思い出し、グルテンやラクトサもクローン病の悪化に関係するのではないかと思い、検索していたらこちらにたどり着きました。
退院して、病状が落ち着いたらグルコサミンも試してみようと思います。
ちなみに彼は、梅干しを食べると調子がいい感じがすると言っていました。
私が数ヶ月に一度、皮膚科で高濃度のビタミン注射をしてもらっているのですが、クローン病を抱えている彼にも良いのでしょうか?
一緒に連れて行こうか迷っています。
投稿: Eri | 2017年1月30日 (月) 01時15分
Eriさん。コメントありがとうございます。
パートナーのクローン病が悪化しているということで、気苦労もあるかと察します。どうにか病状が悪化しないようにコントロールしてほしいところですね。
ビタミン注射ですが、内容物の割合や質についてコメントできかねるので難しいところですが、大まかな指標は記事内を参考にしてみてくださいね。
文章が長いですが、細かな点にも配慮して読んでいただくと幸いです。
投稿: Ctom | 2017年1月30日 (月) 17時15分