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2010年10月 7日 (木)

騒音と心臓病

ビジネスウィーク誌の "Workplace Noise Tied to Heart Disease Risk (TUESDAY, Oct. 5)" によると、カナダの研究者曰く、職場で大きな騒音にしつこく晒されていると心臓病のリスクが倍加するそうな。なかでも影響が大きいのが喫煙する若者。それでなくても喫煙は心臓病の危険因子だというのに、という話。


「これは重大な仕事上の健康被害だ。特に若手ほど影響がある」というのは、カナダ、バンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学 School of Environmental Health の Wen Qi Gan 博士。この研究は10月6日付けの Occupational and Environmental Medicine に発表されている。なお、この研究で扱った心臓疾患の根拠は、被験者が医師の診断を自己申告した内容だという点で限界がある。それに循環器系の疾患に関わる他の職業因子、たとえばシフト勤務や空気汚染なども考慮されていない。

しつこい大きい騒音というのは、音楽を大音量で聴いたり大声で話すことではなく、お呼びでない音の類を聞かされることである。この研究では、たとえば鉱山の採掘や木材の伐採、製材などで発生する騒音を産業騒音と定義した。

「騒音に起因する疾患の予防には騒音抑制がきわめて重要になる。今からでも、過大な騒音に晒されないよう、自分を守ってほしい」と同博士は勧告している。

この研究では、1999年から2004年にかけて、U.S. National Health and Nutrition Examination Survey に参加した20歳以上の被験者6307名からデータを収集した。被験者から、ライフスタイルと職業衛生をふくめた健康に関わる事柄を聞き取り、健康診断と血液検査を行った。そして被験者を、しつこい大きな騒音(普通の声で会話できないくらい)を3ヶ月以上我慢している人と比較的静かな職場にいる人に分けた。

その結果、被験者の21パーセントは、自分の職場が9ヶ月以上朝から晩まで騒音でうるさい職場だと言っている。その大半は平均年齢が40歳の男性だった。また静かな職場で働いている被験者と比べると、この被験者らは肥満気味で喫煙している場合が多い。

そして喫煙をはじめとするいろいろな危険因子を考慮しても、騒音でうるさい環境で働いている人は、静かな環境で働いている人に比べて、2倍から3倍重篤な心疾患にかかりやすいことがわかった。

騒音でうるさい職場と心臓病の関係は、年齢が50歳以下になるとより顕著で、3倍から4倍も狭心症や冠動脈疾患になりやすかったし、心臓麻痺を経験していた。血液検査では、このような危険の高い人たちに、心臓病に関係しているコレステロールや炎症性のタンパク質が特に大量にあるという結果は出なかった。しかし最低血圧は通常よりも高かった。これは重い心臓疾患に関係している兆候である。

大きな騒音によるストレスは、急激な強い感情によるストレスと似ており、徐々にそれが原因で化学伝達物質が冠動脈を通る血流を押さえつけるようになる、と研究者らは見ている。

疫学調査では、因果関係、この場合で言えば騒音でうるさい職場と心臓疾患の関係ははっきりしない、という研究者もいる。しかしその研究者にしても「直感的には納得できる。ストレスが循環器系の健康に悪いという見方と符合している」と言っている。「本当に不快な職場環境は、長い目で見て、循環器系にとても悪いのだ」


人工物などまったく無く、耳に入るのは小鳥のさえずりと清涼な小川のせせらぎの音だけ。そして爽やかなそよ風がたまに江戸風鈴を鳴らす、とかいう環境で、腰を据えてじっくり仕事に取り組めたら、さぞかし健康にいいでしょうね。

文:fumixie <fumixie@gmail.com>

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コメント

非常に興味深い内容でした。車の騒音等多くの騒音に囲まれている現代人はこのような事を理解しなければいけないと感じました。

投稿: スワン | 2010年10月 7日 (木) 17時33分

スワンさん、コメントいただき、ありがとうございます。

素人目にも直観的には納得できますよね、この研究は。「静かな環境」というのは、精神的のみならず、肉体的にも健康に寄与するんですね。

投稿: fumixie | 2010年10月 7日 (木) 18時27分

興味深いテーマをありがとうございます。

ストレスといっても種類があるようで
騒音ストレスは物理的ストレスに分類されるようです。

また、
人間の耳に聞こえる音の周波数は20-20000Hzだと言われていて、普通の騒音ではこの範囲内ですが、1-20Hzぐらいの耳には聞こえない低い周波数の音での騒音が超低周波騒音、100Hz以下の騒音は低周波騒音と呼ばれ、通常、両者を共にして、低周波騒音としているそうです。

人は外敵に襲われるような緊急事態においては、交感神経系によって副賢髄質から分泌されるアドレナリンの効果と一致して心拍数増加、心拍出量増加、筋肉血管拡張、呼吸数増加、気管支拡張、筋収縮力増大、血糖値増加などの緊急事態に有効なストレス反応が生じるようなので、
もしかしたら騒音は『外敵』として捉えられる、
特定の不愉快な周波数を含んでいるのかも知れませんね。

投稿: NV-CVM | 2010年10月 8日 (金) 21時02分

NV-CVMさん、コメントいただきありがとうございます。

なるほど、「騒音を外敵として捉える」ですか。これは、目から鱗ですね。周波数なのか、パターンなのか、音量なのか。低音量のホワイトノイズでも、始終それに晒されていると、騒音ストレスになるのでしょうか。ストレスになるような周波数でも、心地よいと感じるリズムで聞こえたら、ストレスになるんだろうか?こう考えると、興味が尽きませんね。

投稿: fumixie | 2010年10月 8日 (金) 21時34分

騒音が集中力や睡眠を傷害していることは自覚していたのですが、心血管系に直接ストレスを与えているとは知りませんでした。以前の職場で原因不明の低周波を時折感じ、とても息苦しい感じを覚えたことがあります。面白いことに他の人には全く聞こえていなかったのが不思議ですが!

投稿: ojalman | 2010年10月13日 (水) 15時58分

ojalmanさん、コメントいただき、ありがとうございます。

今、ふと思ったのですが、べつに職場じゃなくても、滑走路や空港の近辺に住んでいる人たちも、やはりこの「騒音と心臓病」の関係は当てはまるのかもしれませんね。

私の知人にも「人によって聞こえる低周波音」というがあって、それは冷蔵庫から聞こえる低い音なのです。私はなんら気にならない、というか聞こえないのですが、その知人にとっては、どうも神経を逆撫でされるような音に聞こえるらしいです。

投稿: fumixie | 2010年10月13日 (水) 18時40分

人工物などまったく無く,小鳥のさえずりと清涼な小川のせせらぎの音。爽やかなそよ風がたまに江戸風鈴を鳴らす、とかいう環境で仕事ができたとしたら本当に理想ですね。

投稿: E.F野 | 2010年10月21日 (木) 11時19分

E.F野さん、コメントいただき、ありがとうございます。

そうなんですよ、ほんと、理想です。千年前なら、あちらこちらにあった環境なんでしょうね。

投稿: fumixie | 2010年10月21日 (木) 13時03分

普段から車に乗る機会が多く、運転中は自分の車も含め、かなりの騒音を聞いている気がします。
最近はハイブリットカーなどエンジン音が静かな車もありますが、まだまだ車はある程度の音を出すと思います。

産業騒音まではいかないにしても、車を毎日運転し続けるのは心臓になんらかの負担が出るような気がしますね。

投稿: パン子 | 2010年10月27日 (水) 13時21分

パン子さん、コメントいただき、ありがとうございます。

そうですね。自分の車も周囲の車もけっこうな音を発しますよね。かといって耳栓しながら運転するわけにもいきませんから、悩ましいところですね。

車内で心地よい音楽など聴いていれば、ある程度は軽減されるんでしょうかね?

投稿: fumixie | 2010年10月27日 (水) 19時07分

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