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2010年9月19日 (日)

糖尿病が10年早く分かる血液検査

英テレグラフ紙の "Blood test to predict diabetes 10 years earlier" (19 September 2010) という記事によると、科学者が新たに開発した新しい血液検査を使えば、現在の診断よりも10年早く糖尿病発症の危険が予測できるそうです。

曰く、


この検査方法なら将来2型糖尿病を発症する人の半数ほどは特定できる、と研究者らは英国バーミンガムで開かれた British Science Festival で語った。

この検査では、血液中に含まれる microRNA (MiR) と呼ばれる遺伝に関わる分子の量を測定する。この分子のおかげで、心疾患や動脈疾患の危険が高い人が特定できる。さらに心臓麻痺や卒中、血行不良といった、血管の損傷から来る糖尿病の合併症がこの先進行するかどうかも識別できる。なによりも、糖尿病が原因で血管に与える損傷が直接評価できることが最大の利点である。

MiR-126 という micro-RNA は血管を損傷から保護する働きがある。健康な血管は血中に MiR-126 を大量に放出できるが、血管が損傷を受けると、血管そのものを保護するために MiR-126 をとっておく必要が出てくる。そのため血中への放出量が減るのである。

MiR 検査は従来の検査方法と併用してほしい、と英国ロンドン、キングズカレッジの主任科学者 Manuel Mayr 博士は言っている。

「糖尿病患者に循環器系の合併症を発症する危険があるかどうかを見極めるのは、医師にとってはとても重要なことだ。これまで他の臨床検査では得られなかった新たな情報がこの新しい血液マーカーからわかるといいのだがね」

心臓麻痺や卒中の危険がとりわけ高い糖尿病患者が特定できれば、コレステロールや血圧を下げる早期治療を、もっとも効果が高そうな患者に施すことが可能になる。

Circulation Research誌に発表されたこの研究について、British Heart Foundation の Jeremy Pearson 教授はこう言っている。「これは重要だよ。だって血管の健康状態を監視する簡単で手間のかからない方法が今まで無かったんだからね。病気は症状が現れて初めてわかるものだが、症状が初めて出たときには心臓麻痺のように深刻な状態だということもありうるからね」

10年早く治療が開始できれば多くの人が重篤にならずに済む可能性があるし、それほど早期なら食事療法で治る可能性もあるかもしれませんね。

文:fumixie <fumixie@gmail.com>

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コメント

今回も興味深いテーマを拝見し、コメントさせて頂きます。

血管障害をRNA応答性を調べることによって、10年も前に発病リスクを予測できるのは画期的ですね。

この発表は糖尿病だけでなく、その他の疾患にも応用できる日も近いのではないでしょうか。

ちなみにmicroRNA-126を調べてみると、下記のような研究発表がありました。
このRNAは血管形成の調整因子になるということでしょうか・・・???

J. E. Fish, D. Srivastava, MicroRNAs: Opening a New Vein in Angiogenesis Research. Sci. Signal. 2, pe1 (2009).

血管新生は重要な治療標的でもあり、新たな血管の形成は、組織治癒や移植の際のような再生目的にとっては望ましいものの、糖尿病性網膜症や癌における血管新生のように、病理に関与する可能性がある。血管新生刺激に対する血管内皮の応答は、マイクロRNAと呼ばれるノンコーディングRNAによって調節される。血管内皮細胞に特異的なマイクロRNAであるmicroRNA-126(miR-126)は、血管内皮増殖因子(VEGF)または塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)などの血管新生性増殖因子に応答し、シグナル伝達経路の負の調節因子を抑制することによって血管新生を促進する。他のマイクロRNAについても、血管新生のさまざまな側面の調節に関与していることがすでに示されている。このように、マイクロRNAの発現を標的にすれば、脈管構造の過剰または不足が関係する疾病の新たな治療法につながるかもしれない。


投稿: NV-CVM | 2010年9月21日 (火) 00時52分

NV-CVMさん、コメントいただき、ありがとうございます。

テレグラフ紙の記事やNV-CVMさんが調べてくださった情報が、糖尿病をはじめとする疾患の治療にとってのブレイクスルーを表している、というのは私のごとき素人の目から見ても充分感じられます。

NV-CVMさんが調べてくださったこの研究は、平たく言えば「血管が新しく作られるというのは、ヒトにとっては、いわばもろ刃の剣であって、どこに、どういう風に血管を作るかを制御しているマイクロRNAの操り方がわかれば、画期的な治療法につながる可能性がある」という理解でいいでしょうか?

投稿: fumixie | 2010年9月21日 (火) 10時06分

糖尿病を発症した時点で既に有効な膵β細胞の数は半分になっているとの報告がある通り、糖尿病の発症抑制につながるような研究結果ですよね。日本においてもいくつかの大学病院などが遺伝子外来なるものを行っていて、糖尿病になりやすいかどうかを判定していると聞きますが、このような検査が早く保険適応になれば、もっと糖尿病患者を減らせるんでしょうね。将来の医療費抑制のためにもこのような検査が早く広まればいいですね。

投稿: yasupon | 2010年9月21日 (火) 17時25分

yasuponさん、コメントいただき、ありがとうございます。

方向性としては、やはり将来有望なんですね。

そうですか、「遺伝子外来」なんてものがすでにあるんですか。知りませんでした。

治療よりも予防の方が手間もお金もかからないでしょうから、おっしゃるとおり、こういう検査は公的なお金でどんどんやるといいんですよね。そして糖尿病になりやすければ、早期に生活スタイルを改めることが可能になります。実際改めるかどうかは、また別問題ですが f(^^)

投稿: fumixie | 2010年9月21日 (火) 19時18分

どこに、どういう風に血管を作るかを制御しているマイクロRNAの操り方がわかれば、画期的な治療法につながる可能性がある」という理解でいいでしょうか?

⇒はい、上記の通りで間違いありません。
 ご回答ありがとうございました。

投稿: NV-CVM | 2010年9月21日 (火) 20時31分

医学はものすごいスピードで進んでいるのだな~と思う記事でした。

つい先日、臍帯血で癌の治療ができるという学会での発表がありましたが、糖尿病の治療も進んだら平均寿命がかなり延びるんでしょうね。私は100歳まで(無理だとは思ってますが)生きてみたいと思っているので、将来的には決して難しいことではなくなるのかもしれませんね。今後が楽しみです。

投稿: はるうらら | 2010年9月28日 (火) 12時37分

はるうららさん、コメントいただき、ありがとうございます。

そうですか、「臍帯血で癌の治療」とは。副作用などまず考えられない、安全、安心な治療法ですね、きっと。

私も100歳以上生きていたいと考えています。火星にコロニーができるのを楽しみにしています。生きているうちに、できれば一度は宇宙に行ってみたいじゃないですか。

投稿: fumixie | 2010年9月28日 (火) 15時42分

10年先の病気までわかるようになると、治療の幅がかなり広がりますね。これから普及して医療貢献されることを期待します。
私も血糖値が高いといわれたことがあるので、検査してみたいですね・・・。

投稿: @K | 2010年9月29日 (水) 17時26分

@Kさん、コメントいただき、ありがとうございます。

10年先の病気までわかれば、治療の医学よりも予防の医学の方が、ウエイトが高くなるのでしょうね、きっと。治療よりも予防の方が、時間もお金も手間も少なくてすむでしょうから、おっしゃるように、どんどん普及してほしいです。

投稿: fumixie | 2010年9月29日 (水) 19時29分

興味深い話題ですね。血管に対してのマーカーは色々ありますが、10年先の病気がわかるとなると画期的ですね。糖尿病は、これから益々増加する疾患ですから、先の一手が打てるといいですね。

投稿: REDMEN | 2010年9月30日 (木) 10時14分

REDMENさん、コメントいただき、ありがとうございます。

先にも書きましたが、10年先にかかりそうな病気がわかれば、それはもう「予防医療」の領域ですよね、きっと。生活習慣や食事の改善で対応できれば、副作用の強い薬を使わずにすむ可能性が高まるでしょうから、歓迎すべき流れですね。

投稿: fumixie | 2010年9月30日 (木) 21時52分

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