BMI と WHR はどちらがいい? - 屋台ブルーの補足
皆さん、お久しぶり。今日のエントリーは、ゲストライターのfumixieさんの記事に関する補足です。オリジナルの「BMI と WHR はどちらがいい?」も併せて読んで下さいな。
集団の中から健康障害リスクを持っている人を見つけるため(スクリーニング)に、簡便で安価な手段が望まれる。対象が集団全員になるから、検査にコストがかかると全費用は馬鹿にならない。
BMIは体重計と身長計だけで算出できて、検診時等に調べるのに適している。BMIで基準値があれば、それだけで高リスクな人を選び出せる。
WHO(世界保健機構)はBMIの高いグループと健康障害の関連性に関する報告(欧米が中心)を検討して、30以上を「肥満」と定義して注意を呼びかけている。2005年9月、WHOは世界の人口60億人のうち10億人以上が太りすぎという推計を発表して、BMI30以上の人口比率の高い国を「肥満注意国」と指定したけど、この時、日本は含まれなかった。
肥満を原因とした疾患(糖尿病、心臓病、脳卒中)の増加は日本でも無視することができない。「肥満」を単に身長と体重というパラメーターで定義できないってことだ。
BMIの問題点は、以前からとり挙げられている。2002年9月、雑誌Obesity Reviewに掲載された記事「Asians are different from Caucasians and from each other in their body mass index/body fat per cent relationship.(BMIと体脂肪率の関連性をみれば、アジア人は白色人種と異なる)」を見るといい。
ここでとり挙げられているアジア人(インドネシア人、シンガポールの中国人、マライ人、インド人、香港の中国人)に日本人は含まれていないけど参考になるだろう。白色人種と比較すると、アジア人はBMIが低く、体脂肪率が高い。要するに、同じBMIならアジア人の体脂肪率は3~5%高く、同じ体脂肪率ならBMIは3~4ポイント低いってことだ。
人種によって体格は異なるから肥満の定義も異なってくる。体脂肪(内臓脂肪+皮下脂肪)で肥満の評価をするのも不十分かもしれないけど、現在は、アジア人の場合、BMIが25以上で肥満という基準になっている。
しかし、内臓脂肪の評価はされていない、結局、BMIだけで肥満と言いにくい。内臓脂肪を評価する方法が望まれた訳で、WC(Waist Circumference/腹囲)やWHR(ウエスト・ヒップ比)を測定するという手段が生まれてきたんだ。
何度も言うけど、ここで重要なのは、どちらもコストがかからないってことた。スクリーニング検査としてBMIよりもリスク評価に優れているから、現在、研究報告が数多く発表されてきている。
fumixieさんが、BMIとWHR(ウエスト・ヒップ比)に関する話題提供をしてくれたけど、今年の初めに、雑誌European Journal of Clinical NutritionでWCとWHRに関する特集が組まれていた。ちょっと内容を紹介しておこう(現在文献はフリーなので興味がある人は読んでみるといい)。
日本人の特性として、同じBMIやWCなら、白色人種に比べて体脂肪率は高めになる。したがって、WHOの推奨する日本人のWCは、男性なら85~90cmで、女性は78cm~86cmになっていた。これは現在国内で使われているメタボリック症候群の基準(男性85cm、女性90cm)と異なる。ということは、今後、国内で使われているメタボリック症候群の診断基準、特に女性の腹囲は変更される可能性は高いだろうね。
WHRに関して言えば、日本人を対象にしたエビデンスは皆無のため、今回基準値は示されなかった。白色人種に比べて、同じWHRでも日本人の体脂肪率は高いという予備的な報告もあるので、白色人種で使われている男性0.9、女性0,8という基準値では過小評価されてしまうかもしれない。
さて、fumixieさんも言及しているけど、WHRやWCにも問題点はある。あくまでも内臓脂肪過多を予測する手段として、BMIより優れているというだけのこと。WHRに関して言えば、日本人のエビデンスは無いので、一般的な指標として使うべきじゃないかもしれない。
もう一度、最初に触れたことを繰り返して言うけど、BMI、WC、WHRも、単にスクリーニングの手段である。リスクのある人をコストのかからない方法で見つける方法であり、問題のある人の目標値じゃない。同じ日本人を見ても体格の差は大きく、肥満は個別に対処しなければならないだろう。内臓脂肪の過多が見つかれば、他の手段(血液検査や画像診断)で評価して対処する必要があるだろう。
と、ここまでは肥満について話してきたけど、fumixieさんのエントリーのコメントの中でBMIが14の人の話題がありましたね。実は低体重でも考え方は同じです。あくまでもBMIはスクリーニングの道具であり、「14」ということは低体重にカテゴライズされているというだけ。要するに、問題を抱えているかもしれないけど、これが問題という意味ではないよ。
コメントから見れば、妊婦さんのようで、ちゃんと内科や産婦人科に受診されて問題なしと言われているのであれば問題ないんじゃないかな。
妊婦である現在、バランスの取れた食事を摂って、母胎環境が飢餓状態で無いことを胎児に示せれば、生まれてくる子供に問題は起こりにくいでしょう。ただ、妊娠前から無理なダイエットをしていたり、妊娠をしてからダイエットをするような場合、問題があるかもしれませんよ。妊娠中の食事に注意して下さい。
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最後に、低体重による健康障害の報告として骨粗鬆症 との関連性はあります。感染しやすくなるとか癌が増えるとかいう話もありますが、これはまだコンセンサスが得られていません。どちらにしろ今のところ問題はないかもしれませんが、将来的に問題が生じてくるかもしれません。普通の内科や産婦人科で未病は診てくれないので他の専門家にコンサルトしてみるのもいいかもしれませんね。
文:屋台ブルー
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コメント
私のように元々痩せたいる人は なんの指標にもなりりません 20歳くらいの時の体重からどのくらい増えたかを
計算しないいと 意味がないですね
個人個人違うのですから 私は173cm 20歳くらいの時の体重は52kg 現在ダイエットして63kg→58kg
家族は痩せこけて見えるって言うのですが 52kgに落ちた時は 血液検査では基準値ないにおさまっていました
まあ58kgが妥当なラインだと思っています
尿酸値も7.6~8.6だったのが5,3に下がりました
できれば運動を取り入れればもっと各数値は期待できると思います
投稿: エコピーマン | 2010年7月16日 (金) 10時59分
再度拝見致しました。まだ私は妊婦ではないのですが、将来的に子供を授かりたいと思っております。参考になる情報があり大変役に立ちました。今から、食生活+運動に更に気をつけたいと思います。ところで胎内が栄養が十分か否かというのはどうすればわかるのでしょうか?また内容がそれてしまいましてすみません
投稿: やまね | 2010年7月16日 (金) 22時54分
ハイリスク患者のスクリーニングとは別の話になりますが、ダイエットの目標を体重だけに置いてしまうのはやはり問題があると思います。個人的にはどの様な体型を維持したいのか、どの位の体力を身に付けたいのかが重要だと考えます。その意味では内臓脂肪が反映されるWCやWHRの方が現実的に思えます。
投稿: ojalman | 2010年7月19日 (月) 10時46分
BMIに関しても、WHRに関しても、精密な検査が必要ないというメリットもありながら精度・エビデンスに関しては問題が山積みですね。
体脂肪計の体脂肪率やらなんやらと数値を目にする機会が沢山ありますが、それらの数値がどのようなものを示しているのか?また、問題点に関してもちゃんと理解しておく必要があるように思います。
投稿: @K | 2010年7月21日 (水) 17時27分
ご意見を参考にさせていただきました。数字はわかりやすいですが、そこにとらわれすぎてしまうとだめですね、しかしながら適度に数値も気にしつつ、日々の食生活、運動等頑張りたいと思います。今後も色々参考にさせてください
投稿: やまね | 2010年7月22日 (木) 23時01分
コストのかからない指標としてBMIやWHRは有効なのだと再度認識しました。また、「問題のある人の目標値じゃない」というご意見にハッとさせられました。あくまで指標であり日々食事と運動を積極的に行う必要性を痛感しました・・・
投稿: ぶ~ | 2010年7月29日 (木) 17時39分
先日健康診断へ行ってきたのですが、お腹まわりの数値が大変なことになっておりました。最近夜の食事の機会が増えたためだと思います。少し考えなければ・・・
人種によってもことなるとありましたが、日本人はBMIが低い代わりに糖尿病になる確率が高いということをきいたことがあります。欧米人に比べてインシュリンの働きが悪くなりやすく、日本人は脂肪になりずらいということみたいですね。将来糖尿病にならないためにもしっかりとした健康管理をしようと思います。
投稿: はるうらら | 2010年8月 3日 (火) 08時50分