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2010年6月24日 (木)

「冬眠式[プラス]ハチミツダイエット」発売

-----2011年1月5日追記-----
昨年の12月16日発売の 雑誌ゆほびか2月号に「ハチミツ冬眠ダイエット」として紹介されています。雑誌に関する話題もライフログでとり挙げているのでご覧ください。
2011年1月4日エントリー:ハチミツ冬眠ダイエット
-----ここまで-----

 皆さん、こんにちは。長らくご無沙汰していました。ここライフログにゲストライターを迎えてから、少し甘えがあったかもしれませんね。最近、私の記事が少ないと、お叱りを受けました。

 実は、色々と水面下で動いていて、今は、「超10」プロジェクトへの関わりが、地元、高松での予防医学推進の主軸になっている。告知も宣伝もしなかったのですが、「超10大学」の講師として、先週末、6月19日(土)に「今日から実践『予防医学のすすめ』」というテーマで話をしてきました。私の話をシリーズ化する話も出ているので、興味のある人は、当ブログおよび「超10」を定期的に覗いてください。

 その前の週末は、国立京都国際会館で開催された第10回日本抗加齢医学会総会に参加してきました。抗加齢医学会の提唱する「アンチエイジング」とは、不自然に加齢を止めるのでは無く、様々な外的因子によってバランスの崩れた老化に調和をもたらし、健康寿命を平均寿命に近づけていくという考え方。あれ、なんか良く理解できないかもね?一般の人は混乱するかも。ということで、私は相変わらず「アンチエイジング」という言葉は誤解しやすいので好きになれません。

 アンチエイジングでも、食生活、運動習慣、そしてメンタル(ストレスマネージメントを含む)が3本柱になっている。これは「健康生活」の三本柱と同じですよ。私の言う「ダイエット・トリニティ」のこと。アンチエイジングは、この上にベースサプリメント、アンチエイジングサプリメントが積み上げられていく。すると、学会の話の中心は、サプリメントや薬剤になってしまうよね。まあ一般に求められているし、研究対象として扱いやすいから仕方ないことかも。

 しかし、私は、あくまでも健康的な生活を送るためにサプリメントはいらないという立場を貫きながら話を展開したい。まあ少しずつ考え方は変わってきてるけど、あまりに幅を利かしているサプリメント信奉に違和感を感じている次第だ。

 ここから今日の話題に入るけど、数年前にゲストライターのfumixieさんと出会った。彼の健康生活への取り組みが私のと一致していたから情報交換をするようになり、その当時、彼が実践していた(今でも彼は続けているけど)The Hibernation Diet(ハイバネーション・ダイエット『冬眠式ダイエット』)を教えてもららい、本を読んだ経緯がある。

 実は、その本、今回、fumixieさんを含めた翻訳グループによって邦訳され、「冬眠式[プラス]ハチミツダイエット」というタイトルでバベルプレスから出版されることになったんだ。実は、私自身も宣伝文を書いていたりする。

 そういう訳で、ライフログでもこの本の特集を組むことにする。

 タイトルを見たら、「リンゴ・ダイエット」や「キャベツ・ダイエット」と何ら変わりのない「ハチミツ・ダイエット」を連想してしまうかもしれないが、このダイエットの本質は別のところにある。

 健康生活の三本柱、食生活、運動習慣、メンタルに含まれていないが、もう一つ考えなければならないファクターがある。「生活習慣」がそれだ。運動習慣は、生活習慣の一部に当たるが、嗜好品(アルコール・喫煙・コーヒー等)も生活習慣と言える。そして、この本がタイトルにしている「ハイバネーション(冬眠)」は生活習慣の要、睡眠に関わってくる。正常な生体リズムを刻むために睡眠は重要になるって事は想像しがたくない。ダイエット法にこの生活習慣の是正を取り入れて論じている点が評価に値する。

 fumixieさんの詳細なレポートを紹介するので読んでいただきたい。また、興味がある人は是非手にとって読んでみてはどうかな。

文:屋台ブルー

冬眠式 [プラス] ハチミツ ダイエットの手引き

fumixie <fumixie@gmail.com>


 

                                                                                                                               
目次
1. はじめに 冬眠式 [プラス] ハチミツ ダイエットの紹介
2. やり方 冬眠式 [プラス] ハチミツ ダイエットの基本と実践方法
3. 特徴 冬眠式 [プラス] ハチミツ ダイエットの特徴
4. シナリオ 冬眠式 [プラス] ハチミツ ダイエットを支える考え方
5. 徐波睡眠と代謝のことなど 冬眠式 [プラス] ハチミツ ダイエットの背景1
6. 成長ホルモンについて 冬眠式 [プラス] ハチミツ ダイエットの背景2
7. 徐波睡眠が乱れるとどうなるか 冬眠式 [プラス] ハチミツ ダイエットの背景3
8. リンク 冬眠式 [プラス] ハチミツ ダイエットの関連情報

1. はじめに

  眠式 [プラス] ハチミツ ダイエット (英語名 "The Hibernation Diet") というのは、英国の薬剤師で栄養学の専門家 Mike McInnes 氏が生み出した、肝臓とハチミツを結びつけて、人間なら誰でも持っている生理機能に着目した画期的なダイエット手法です。原書の表紙に "It works while tyou sleep!" (寝ている間に効く) と書かれているのはこのためです。

  眠式 [プラス] ハチミツ ダイエットの特徴を「風が吹けば桶屋が儲かる」式に言えば、  

    寝る前にハチミツを飲めば、
寝ている間に体脂肪がどんどん燃えるし、身体もたくさんのメリットを享受できる  

  となります。

の手引きは、前置きはいいから、とにかく「冬眠式 [プラス] ハチミツ ダイエット」を体験したい人向けに、最低限何をすればいいのかをまずお話しし、そのあとで概要やら特徴やら背景となる考え方などを順次説明しようと思います。

お、ここで一つだけ注意点があります。

 


糖尿病をはじめ、なんらかの病気にかかっていたり投薬治療しているなど、
医療機関を受診なさっている方は、あらかじめ主治医にご相談なさってください。

詳しくは をお読みください。

2. やり方

  チミツとダイエットがどう結びつくかの説明は後回しにして、実際何をすればいいかをまずお話しします。

  眠式 [プラス] ハチミツ ダイエットに難しいことは何一つありません。

ず、どのダイエットにも共通する2つの大原則を踏まえましょう。つまり、  

       
  • 消費カロリー以上にカロリーを摂取すると太る
  •    
  • 健康的な食事を心がける
  •  
  ということです。いずれもしごく当たり前のことです。とりわけ健康的な食事を心がけるという点は重要です。量や質の面で食事が極端にならないよう気をつけます。

  の大原則を踏まえたうえで実践することはただ一つ、  

寝る前、できれば就寝の1時間ほど前にハチミツを食べる  

  ことです。できれば毎日実践しましょう。量は人それぞれ違ってくるでしょうが、だいたい大さじ1杯から2杯の間が目安になるでしょう。ハチミツは、何も混ざっていない100%純粋のハチミツならなんでもかまいません。

  とはぐっすり寝るだけです。簡単でしょ?!

なみに食べ方はいろいろです。ただし寝る前に食べるわけですから、目がパッチリ開いてしまうような食べ方では本末転倒です。直接口に入れてもいいのですが、小さじ1杯ならともかく、大さじ1杯とか2杯となると直接口に入れるのはちょっとツラいものがあります。そこで私の場合はぬるま湯に溶かして飲んでいます。どうしてぬるま湯かというと、冷たい水ではなかなか溶けないし、かといって熱湯では、せっかくのハチミツの栄養が壊れてしまいかねないからです。

詳しくは をお読みください。

3. 特徴

  でに述べたように、冬眠式 [プラス] ハチミツ ダイエットの実践方法は非常に簡単です。この他にもこのダイエットには次にような特徴があります。  

   
運動せずにすむ
   
      

このダイエットの特徴はいくつかありますが、個人的には、運動しなくても体脂肪が燃えてくれる点が最大の特徴だと思います。普通ダイエットというと、運動しないと体脂肪は燃えないとよく言われます。ということは、ダイエットしたいけど、なんらかの事情で運動できない人はダイエットとは無縁だということになります。       

      

しかし冬眠式 [プラス] ハチミツ ダイエットと運動の関係は少々異なります。冬眠式 [プラス] ハチミツ ダイエットでは、運動は必須ではありません。オプションです。運動していけないわけではなく、運動すれば効果はさらに高まりますが、あえて運動しなくても効果があるのです。それは、冒頭で述べたように、誰の身体にも備わっている自然の生理機能に着目しているからです。ですから、運動せずにすむというこの特徴は、ダイエットはしたいのになんらかの理由で運動できない人にもメリットかもしれません。        

長続きしやすい
   
      

また、健康的な食事を基本に据えれば、あとは寝る前にハチミツを食べるだけなので、生活サイクルに組み込みやすい、つまり毎日の生活習慣にしやすい点も大きなメリットでしょう。習慣になるということは長続きするための重要なポイントです。       

   
   
手軽に手に入る
   
      

他にも特徴はいくつかあります。使うのがハチミツですから、近所のスーパーマーケットなどに行けば簡単に手に入ります。水飴など混ざり物がない純粋のハチミツならOKです。それに「これを食べなきゃ体重は減らない!」などというダイエット方法とは異なり、純粋なハチミツならいいのですから、自分の予算や好みなどに応じて好きなものを選べる点も見逃せません。       

   
   
食べて安心
   
      

なにしろハチミツですから安心して食べられます。おまけにハチミツに含まれるビタミン、ミネラルをはじめとするたくさんの栄養もとれます。       

   
   
無理のない食生活が送れる
   
      

食事によるダイエットというと、普通は特定の食品を食べつづけるとか、特定の食品群を食事から取り除くなど、食生活にシワ寄せがおよびがちです。       

      

しかし食事の点で冬眠式 [プラス] ハチミツ ダイエットに必要なのは健康的な食事をとることだけです。ダイエットの2大原則を踏まえていれば、食事のバリエーションは自由です。       

   
   
身体に無理がない
   
      

最後にもう一つ重要なこと。このダイエットが基本にしているのは、もともと誰の身体にも備わっている生理機能です。ですから身体に無理がかかりません。       

   
 
 

    「どういう食事をすればいいの?」
「どういう運動をすれば効果が増すの?」
「他にはどういうメリットがあるんだろう?」
など、さまざまな疑問が湧いてきたら をお読みください。  

4. シナリオ

 

  眠式 [プラス] ハチミツ ダイエットを支えているのは、「良質で充分な睡眠」、「健康的な食事」、「ハチミツ」の3つです。どうしてこれが柱になるのかとというと、冬眠式 [プラス] ハチミツ ダイエットの基本原理が、人の身体にもともと備わっている生理機能に基づいているからです。

  こで、基本原理の説明に入る前に、冬眠式 [プラス] ハチミツ ダイエットで脂肪が燃えるシナリオをざっと眺めておきましょう。  

   
          
  1. 寝ていようが起きていようが、脳は常にエネルギーを必要としています。
  2.       
  3. 脳にはエネルギーを蓄えることはできません。
  4.       
  5. 脳に必要なエネルギーの第一の供給源は肝臓です。
  6.       
  7. 肝臓に蓄えられるエネルギーはわずか75グラム程度 (数時間分) しかありません。
  8.       
  9. 一方睡眠中は、骨や皮膚、筋肉などの細胞を作るため、および生命維持に欠かせないすべての機能を働かせるためにエネルギーが必要です。
  10.       
  11. 睡眠中にこういったことをするよう指示を出すのは、身体の回復を担うホルモン、つまり成長ホルモンを作る中心となる下垂体です。
  12.       
  13. 身体は肝臓の働きによって、このようなカロリーが必要な作業すべてを睡眠中(徐波睡眠中)少なくとも4時間はこなしています。
  14.       
  15. 睡眠中、この作業のカロリーとして使われるのが体脂肪です。
  16.       
  17. ところが、脳に必要なエネルギーが足りなくなる (血糖値が下がる) と、脳はエネルギーを確保するため、コルチゾンやアドレナリンといったホルモンを放出する指示を出します。
  18.       
  19. コルチゾンやアドレナリンは骨や筋肉を分解してブドウ糖(脳のエネルギー)を確保しようとします。
  20.       
  21. そうなると徐波睡眠中に身体を回復させるという成長ホルモンの働きは邪魔されます。
  22.       
  23. 成長ホルモンの働きが邪魔されると体脂肪は燃えなくなります。
  24.       
  25. 睡眠中は当然ながら何も食べないので、寝る前に肝臓にエネルギーを補給しておかないと、脳に供給するエネルギーが不足する可能性があります。
  26.       
  27. したがって寝る前には肝臓にエネルギーを補給しておく必要があります。
  28.       
  29. そのために最適なのがハチミツです。
  30.    
 
  以上が冬眠式 [プラス] ハチミツ ダイエットのシナリオです。

  まり冬眠式 [プラス] ハチミツ ダイエットというのは、  

    徐波睡眠中に行われる成長ホルモンの働きを最大限に活用するために、
何も食べない睡眠中の血糖値を安定させてなんとか脳をなだめて、
コルチゾンやアドレナリンといった危険なストレスホルモンが出ないようにする方法  

  とも言えます。原書の表紙に "It works while tyou sleep!" (寝ている間に効く) と書かれているのは、こういう背景があるからです。そして特徴の一つとして挙げた「誰の身体にももともと備わっている生理機能だから身体に無理がかからない」というのもこのことを指しています。

  すから次のうち一つでも該当するものがあれば、  

       
  • 夜寝ていても、決まって目が覚める
  •    
  • なかなか寝つけない
  •    
  • 寝汗をかく
  •    
  • 寝ている間に胃酸が逆流する
  •    
  • 寝ている間に何度もトイレに行く
  •    
  • 朝目が覚めても疲れが残っている
  •    
  • 早朝は吐き気がする
  •    
  • 朝は喉がカラカラ
  •    
  • 夜よく痙攣を起こす
  •    
  • 早起きは苦手
  •  
  それは睡眠中に必要なエネルギーが肝臓に貯まっていないためかもしれません。脂肪を燃やし、筋肉を回復させる代わりに、睡眠中にストレスホルモンが大量に作り出されている可能性があります。

  しそうなら、  

       
  • 寝る前に、脳に与える充分なエネルギーを肝臓に補給する
  •    
  • 夜間のエネルギー補給にはハチミツを使う
  •    
  • 必ず質の高い睡眠を充分にとる
  •    
  • 身体と心を総合的に考えた食事をとる
  •    
  • 過剰に精製されたり加工度の高い食品は避ける
  •    
  • 軽い負荷のかかる運動を取り入れて効果を上げる
  •    
  • 身体の能力を活用して溜まった脂肪を燃やす
  •  
  というようにしてみてはどうでしょう。

  しくは をお読みください。


  う少々詳しく言うとこのようになります。

  は体重の2%を占めるにすぎませんが、消費するエネルギーは他の組織の20倍に達します。しかもそのエネルギー源はブドウ糖だけです。一方肝臓は、脳に供給するブドウ糖の蓄積と放出ができる唯一の臓器です。

  たり前のことですが睡眠中は何も食べません。ですから肝臓が空のまま寝てしまい、脳に供給するエネルギーが不足すると、脳は筋肉などを分解してブドウ糖を作り、それを使って生き残りを図ろうと、アドレナリンやコルチゾンといったストレスホルモンを出すよう指示します。ストレスホルモンは、過剰生成されると、体重を減らそうとする私たちの努力に抵抗するよう作用するばかりか、長期的には健康障害を引き起こします。ですから、夜何も食べずにいる睡眠中の8時間、充分間に合う量のグリコーゲンを肝臓にしっかり蓄えることが決定的に重要になります。

  て身体が燃やすエネルギーには、  

       
  • 体脂肪
  •    
  • 筋肉組織内に蓄えられた脂肪
  •    
  • 肝臓に蓄えられたグリコーゲンから得られるブドウ糖
  •    
  • 筋肉に蓄えられたグリコーゲンから得られるブドウ糖
  •  
  の4種類があります。そしてエネルギーの燃焼比率でいうと、運動中はブドウ糖の方がよく燃えるのですが、睡眠中は脂肪の方がたくさん燃えるのです。そして睡眠中の身体の回復に関わる生理機能に必要なエネルギーは、筋肉の脂肪ではなく体脂肪から供給されます。

  臓が空のまま寝て何が問題かというと、ストレスホルモンが活動を始めるということ、そしてそれが脂肪の燃焼を邪魔するということです。肝臓がエネルギー満タンなら翌朝スッキリ起きられるところが、いくら寝ても疲れがとれない、などということになります。

  臓にエネルギーを貯めないと、人にとってはストレスが増えることになります。  

       
  • 血糖値が下がる
  •    
  • 副腎がコルチゾンのような危険なホルモンを大量に作り出す
  •    
  • 筋肉や骨が分解される
  •    
  • 病気の感染に弱くなる
  •    
  • 記憶細胞が減少する
  •    
  • 再生機能が働かなくなる
  •    
  • 回復ホルモンの生成が止まる
  •  
  その結果、本来の目的から言えば睡眠中に回復できるはずが、逆に体脂肪は使われずに残ることになります。

  すが、寝る前にハチミツを食べるという簡単なことで肝臓に充分なエネルギーが補充できます。そうすれば何も食べずに寝ている8時間ほどの間、脳に安定してエネルギーが供給できます。

  詳しくは をお読みください。

5. 徐波睡眠と代謝のことなど

  スコミや健康・栄養の専門家、教育関係、およびオピニオンリーダーなどへ、科学に基づいた食物の安全性と品質、および健康と栄養に関する情報を消費者にわかりやすい形で提供する非営利団体 European Food Information Council (EUFIC) のサイトに "Sleep deprivation and metabolic consequences" (睡眠不足と代謝への影響)という、睡眠と代謝の関係がわかりやすく書かれている記事があるので要約してみます。  

   

      

睡眠は生きるうえで必要不可欠であり、組織の修復、成長、記憶の固定、学習など多くの機能を支えている。そして一晩の睡眠時間が7時間に満たない日が続くと、脳や身体に悪影響をおよぼす場合がある。       

      

睡眠と代謝は鶏と卵のような関係にあり、どちらが原因でどちらが結果か決めがたい場合がある。身体を活発に動かしても甲状腺が高進しても深い睡眠は長くなるし、甲状腺の機能が低下すると代謝が遅くなり、深い睡眠は短くなる。       

      

逆に言えば、代謝活動の悪化には睡眠不足が関与していることがわかる。たとえば睡眠不足になるとコルチゾンの血中濃度が上昇するし免疫反応にも影響がおよぶ、さらにブドウ糖の処理能力が低下するし食欲の調節機能も障害を受ける。同様の変化は睡眠パターンが乱れている人にも見られる。       

      

臨床検査や疫学研究から、睡眠時間の短縮は糖尿病患者や肥満の増加に関係しているようである。この関係の背景には、ブドウ糖代謝の変化と食欲の増加、およびエネルギー支出の低下が関与している。

 
睡眠とブドウ糖代謝
 
   

      研究によると、長期間にわたって睡眠時間を一晩6.5時間未満に制限すると、それによってブドウ糖耐性が40%低下する。そして血中のコレステロール濃度が上昇する。睡眠中のように何も食べない状態で血中のブドウ糖とインスリンの濃度が高いということは、ブドウ糖の処理が不充分だということである。このように、ブドウ糖耐性の低下は2型糖尿病のリスク要因になる。    

 
 
食欲の増加
 
   

      大規模な調査の報告によると、睡眠時間が短くなると肥満度指数 (BMI) が上昇している。睡眠時間が短いとホルモンに変化が生じた。食欲を抑えるレプチン濃度が下がる一方、食欲を刺激するグレリン濃度が上昇したのである。睡眠時間が8時間を下回ると影響が現れる。さらに睡眠時間が4時間前後になると、炭水化物の含有量が多い高カロリー食品(甘いお菓子、塩辛い食べ物、でんぷん質の食べ物)に対する欲求がきわめて高まった。こういったことから、睡眠不足は肥満のリスク因子だと考えられる。    

 
 
エネルギー支出の減少
 
   

      睡眠が足りない人は身体を動かすことが少なくなり、エネルギー支出が低下することになる。    

 
             

体重を管理するうえで睡眠が重要な役割を担っているのは、睡眠不足により食欲が増加し食べ物への痛烈な欲求が生まれ、活動量が減少するからである。       

      

このように、質の高い睡眠が不足すると、エネルギーバランス、つまり食欲、空腹、エネルギー支出に悪影響がおよぶ。さらに睡眠不足はブドウ糖の処理能力に悪影響をおよぼし、2型糖尿病のリスクを高める。       

   
 

 


  "MedicalNewsToday.com" に掲載されている "What Is Metabolism? How Do Anabolism And Catabolism Affect Body Weight?"(代謝の意味と、同化作用、異化作用が体重に与える影響)という記事には、代謝、そして体重との関係がわかりやすく説明されています。そしてその中の "How is metabolism linked to body weight?" という部分で、代謝と体重の関係が説明されています。その内容を要約するとこのようになります。  
   

      

体重というのは、平たく言えば、体内で生み出されるエネルギーから消費されるエネルギーを差し引いたものだ。そして余分なエネルギーは脂肪またはグリコーゲンとして蓄積される。       

      

一般に、痩せている人は代謝率が高くし太っている人は代謝率が低いと思われているが、北米と西欧で行われた研究によれば、代謝率が低い、つまりなんらかの基礎疾患があるから肥満になっているというケースはきわめて稀である。簡単に言えば、太りすぎの原因は基礎疾患のせいではなく、ほとんどはエネルギーのアンバランスが原因である。       

      

したがって、たとえば筋肉量を増やすなどすれば、長い目で見て最終的には安静時の基礎代謝率が多少は変わるだろうが、それよりも自分の身体に必要なエネルギー量を基準にして、生活スタイルをそれに合わせる方が、体重に与える効果ははるかに速い。       

   
 

  らに、体重に影響を与える「運動」、「食事」、「睡眠」のうち睡眠と体重の関係については、米コロンビア大学の科学者の研究を引用して、次のように述べています。  

   

      睡眠時間が短すぎると糖耐性が低下し、インスリン感受性が乱れる。これは交感神経系の活性度が高まる結果、夜間のコルチゾル量が増加し、脳のブドウ糖利用率が低下するためである。これにより、余分な体重が増えるリスクが大幅に高まる。それに2型糖尿病のリスクが増えるのは言うまでもない。しかも疲れやすくなるため、運動もしたくなくなる。      

  こで、質の良い睡眠を得るコツとして、この記事では以下の方法を提案しています。  

       
  • 毎日決まった時間に寝る
  •    
  • リラックスして眠れる環境を作る
  •    
  • 寝室は静かで暗く、やや涼しめにしておく
  •    
  • 毎晩、途中で起きることなく、7時間ないし8時間寝るようにする
  •    
  • カフェインが入った食べ物や飲み物はとらない
  •    
  • 就寝直前に満腹になるほど食べない。しかし空きっ腹でも寝ない
  •    
  • 就寝の4時間前(専門家によっては6時間前)になったらきつい運動はいっさいしない
  •    
  • 毎朝決まった時刻に起きる
  •    
  • 週末や休日なども就寝時刻と起床時刻は守る
  •  

6. 成長ホルモンについて

  コロラド州立大学の www.vivo.colostate.edu/ というページ生物医科学の用語集 があります。そこに 成長ホルモン のことがわかりやすく書かれているので、そこから少し抜粋、要約してみます。

 

   

      成長ホルモンは、脳下垂体前葉の成長ホルモン産生細胞という細胞で合成、分泌される、190個ほどのアミノ酸からなるタンパク質ホルモンである。成長と代謝を含む複雑な生理プロセスのいくつかを制御するうえで中心的な存在である。成長ホルモンはヒトと動物の両方で使われる薬剤としても大きな関心の的である。    

   

      成長ホルモンには異なる2種類の効果がある。       

直接の効果
 

    これは、成長ホルモンが目標の細胞上にある受容体と結合した結果生じる。たとえば脂肪細胞 (adipocyte) には成長ホルモン受容体がある。成長ホルモンは脂肪細胞 (adipocyte) を刺激してトリグリセリドを分解させ、脂肪細胞が体内を循環している脂質を吸収して蓄積するのを抑える。  

間接の効果
 

    これは成長ホルモンに反応して肝臓をはじめとする組織から分泌されるインスリン様成長因子-1 (IGF-1) というホルモンが主に仲立ちする効果である。成長ホルモンによる成長促進効果の大半は、実は IGF-1 が目標の細胞に作用する結果である。  

      
       

      身体の成長を刺激するうえで成長ホルモンが果たす大きな役割は、肝臓やその他の組織を刺激して IGF-1 を分泌させることである。IGF-1 からの刺激により軟骨細胞が増殖する。その結果骨が成長する。成長ホルモンは軟骨細胞の分化を刺激することで、骨の成長に直接影響を及ぼしていると思われる。    

   

      成長ホルモンはタンパク質、脂質、炭水化物の代謝に大きな影響がある。成長ホルモンが直接影響を与える場合もあれば、IGF-1 を重要な仲立ちにして影響を与えていると考えられる場合もあり、その両方の影響が現れている場合もある。       

タンパク質代謝
 

    一般に成長ホルモンは、多くの組織のタンパク質同化を刺激している。これはアミノ酸の吸収量が増加してタンパク質の合成量の増え、タンパク質の酸化が減っていることを示している。  

脂質代謝
 

    成長ホルモンは、脂肪細胞内でのトリグリセリドの分解と酸化を刺激して、脂肪の利用を促進する。  

炭水化物代謝
 

    成長ホルモンは、血糖を通常水準内に維持する働きをする一連のホルモンの一つである。成長ホルモンには抗インスリン作用があるとよく言われるが、それは、末梢組織にブドウ糖を吸収させ肝臓でブドウ糖合成を促進するというインスリンの力を抑えるからである。  

      
     

このように成長ホルモンは代謝に関しても重要な役割を果たしています。

7. 徐波睡眠が乱れるとどうなるか

  シカゴ大学医療センターNewsroom" に掲載された 2007年12月31日付けのプレスリリース "Lack of deep sleep may increase risk of type 2 diabetes" によると、徐波睡眠が減少すると血糖値の調整能力が大幅に低下し、2型糖尿病のリスクが高まるそうです。

  のプレスリリースを要約すると、  

   

 

わずか3日間徐波睡眠だけを妨げただけで若い成人被験者のインスリンに対する感度が25%低下した。同量のブドウ糖を処分するのに必要なインスリンは増えているのに、インスリンの分泌量は増えず、感度が低下した分を埋め合わせることはなく、血糖値が23%上昇した。その結果、ブドウ糖への耐性は低下し、2型糖尿病のリスクが高まった。このインスリン感受性の低下は、体重が20ポンドないし30ポンド、つまり約9キログラムないし13.6キログラム増加した場合に相当する。       

 

睡眠時間が減少するとブドウ糖代謝および食欲調整が損なわれることはこれまでの研究で明らかだったが、この研究は、睡眠の質と糖尿病リスクの増加を関連付ける初めての証拠だ。       

 

研究を率いたシカゴ大学医療センターの准教授 Esra Tasali MD は「ブドウ糖制御を正常に保つうえで徐波睡眠が果たす役割は明白だ。徐波睡眠が大幅に減少すると、インスリン感受性と糖耐性に即座に深刻な悪影響がおよぶ」と言う。       

 

「慢性的な睡眠不足と食欲の変化、代謝異常、肥満、糖尿病には多くの関連がある。今回の研究でそのことがより確実になったうえに、睡眠の質が果たす役割もわかった。これは加齢とも関連することだ。慢性的に眠りが浅くなってインスリン感受性が低下し、糖尿病のリスクが高まるのは老化するとよく見られることだ」       

 

 

  medicalnewstoday.com に掲載された 2008年6月21日付けの記事 "Physical Decline Hastened By Too Little Deep Sleep" によると、そのタイトルから分かるように、深い睡眠が少なすぎると、加齢にともない身体の衰えが早まるそうです。

  カゴ大学の研究チームが行ったこの研究は、徐波睡眠の減少がヒト成長ホルモン分泌量の低下の一因となる初めての証拠であり、高齢者に見られる筋肉の減少と体脂肪の増加の要因になっているそうです。

  の記事によると、      

      

まず、二晩普通に睡眠をとったあと、24時間にわたって採取した血液サンプルからヒト成長ホルモン量を測定。そのあと三晩の間、徐波睡眠に入らないような音を鳴らして睡眠をとり、それからヒト成長ホルモン量を測定した。全体の睡眠時間は変わらないが徐波睡眠の時間は一晩あたり平均で90分減少。       

      

この実験によると、3日間深い睡眠が妨げられると、ヒト成長ホルモンの24時間平均生成量は当初の 863ng から 668ng に減少した。       

      

この研究を率いたシカゴ大学医学部の Esra Tasali 博士は「徐波睡眠の減少によりヒト成長ホルモンの生成量が低下すると、体脂肪が増加し除脂肪体重が減少すると考えられる」と言っている。       

      

睡眠と加齢の専門家でピッツバーグ大学生物心理学者 Martica Hall 博士はこの研究を絶賛し「規模は小さいが非常にエレガントな研究だ。それに研究したのは、この分野ではわが国でトップクラスの研究チームだ。徐波睡眠の減少は生理機能に影響を及ぼすのではあるまいかという考えがしばらく前から持ち上がっていたが、それが事実だということがこのデータで実際に明らかになったのだ。まったく胸踊る気分だ」と言っている。       

   
 

8. リンク

                                                                                                                     
お役立ちリンク
"The Honey, Insulin, Melatonin Cycle"原書 "The Hibernation Diet" の著者マイク・マッキネスが書いた "The Hibernation Diet" の基礎に関する記事 (foodconsumer.org)
"The Hibernation Diet Explained"原書 "The Hibernation Diet" の著者マイク・マッキネスによる "The Hibernation Diet" の説明ビデオ (YouTube)
"How to Sleep Off Weight Along with your Hangover"原書 "The Hibernation Diet" の共著者マギー・スタンフィールドが書いた "The Hibernation Diet" に関する記事 (ezinearticles.com)
"Sweet dreams of a new slimline start to the year
(Published Date: 10 January 2005)"
"The Hibernation Diet" に関するスコットランドの新聞 Scotsman紙の記事
"eガイア書店"「冬眠式[プラス]ハチミツダイエット」 を販売しています。

  以上。

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コメント

屋台ブルーさん、お忙しいところ、本当にありがとうございました。

投稿: fumixie | 2010年6月24日 (木) 18時59分

屋台ブルーさんの投稿、楽しみにしておりました。
「食生活」「運動習慣」「メンタル」「生活習慣」

健康生活の四本柱を意識して生活いたします。

投稿: E.F野 | 2010年6月28日 (月) 16時01分

普段甘いものは食べませんが、ハチミツなら
いけそうです。
ぬるま湯の変わりに牛乳じゃだめでしょうかね?

投稿: MK | 2010年6月29日 (火) 09時56分

E.F野、コメントいただきありがとうございます。

禁煙を始めることは簡単ですが禁煙し続けることは大変ですよね。健康もきっと同じなのでしょう。健康を維持することは充分に意味のあることだと思います。

投稿: fumixie | 2010年6月29日 (火) 12時48分

MKさん、コメントいただき、ありがとうございます。

人肌に温めた牛乳なら眠りを誘う効果も期待できそうですから、それに大さじ1杯のはちみつを溶かして飲めば鬼に金棒かもしれません。冷たいものだとはちみつがなかなか溶けないし、胃が刺激されて眠れなくなりそうですね。

投稿: fumixie | 2010年6月29日 (火) 12時52分

冬眠式+はちみつダイエット、なんとなく理解できました。ワールドカップのせいか最近睡眠時間も短くなって中々疲れがぬけません。簡単な方法ですし実践してみます。ところでグレリンも成長ホルモンの重要な誘導因子と聞きますが、グレリンを抑制することは何か問題があるのでは?そこのところ教えて頂ければ!

投稿: ojalman | 2010年7月 1日 (木) 15時59分

ojalmanさん、コメントいただき、ありがとうございます。

当該研究の焦点は、「グレリンが増えるから食欲が増して肥満の原因になる」という点にあると思いますが、グレリンは、wikipediaによると、「胃から産生されるペプチドホルモン。下垂体に働き成長ホルモン (GH) 分泌を促進し、また視床下部に働いて食欲を増進させる働きを持つ」とありますし、おっしゃるとおり、このダイエットにとっては痛し痒しかもしれません。

原書の "The Hibernation Diet" でもグレリンに関しては言及が無いのですが、私の個人的な意見としては、このダイエットの基本は成長ホルモンの働きを邪魔しないような体内環境を作ることですから、グレリンを抑制して成長ホルモンに影響が出るとすれば本末転倒だと思います。

投稿: fumixie | 2010年7月 2日 (金) 01時03分

余談ですが、お酒を呑んだ夜は、寝る前にハチミツを食べておくと、翌朝スッキリ目覚められます。(実体験より f(^^) )

投稿: fumixie | 2010年7月 2日 (金) 10時18分

私は、自分が3年半実践してきて、ある一定の効果をあげたこの方法が、他の人にも効果があるかもしれない、その可能性を分かち合えればと思っています。この方法は、屋台ブルーさんもおっしゃっているように生活様式を見直すこと、そして生まれながらに自分の身体に備わっている機能を最大限に活用して身体をいたわることが主眼になっています。またこれは、そのことを通じて Well-being な生活を取り戻す一助にしてはいかがですか、というお誘いでもあります。

「寝る前のハチミツ」、皆さんのアンテナに触れましたでしょうか。

投稿: fumixie | 2010年7月 2日 (金) 20時37分

「徐波睡眠」や「成長ホルモン」がまさか脂肪燃焼に関係するとは全く知りませんでした。はちみつを摂取するだけでこのような誰もが気づかない体の奥深い機能を改善させる事ができてしまうのですね!。私はダイエットとは基本は「気合と根性」としか思っていなかったのですが、これなら誰もが気軽に始められる手法ですね!

投稿: yasupon | 2010年7月 5日 (月) 12時04分

yasuponさん、コメントいただき、ありがとうございます。

この本にも書かれてますが、「人類最古の**天然**甘味料ハチミツ」には秘められたパワーがあるんですね。それに工業的に生産された製品を摂取するよりははるかに安全、安心だと個人的には感じてます。

余談ですが、このサイト は、私が実践している「冬眠式プラスハチミツダイエット」の記録のブログです。グラフも載せてますので、興味のある方は覗いてみてください :-)

投稿: fumixie | 2010年7月 5日 (月) 12時57分

ハチミツダイエット面白そうです!

最近、生活習慣を見直して、ゆっくりと湯船につかることから始めました(夏はついシャワーになりがちなので・・)
「眠り」のほうはあまり意識していなかったので、ハチミツを使って実践してみたいと思います。

投稿: イロイロパンダ | 2010年7月 7日 (水) 10時57分

イロイロパンダさん、コメントいただき、ありがとうございます。

「冬眠式プラスハチミツダイエット」が勧めているのは製品ではなく、「寝ている間に脂肪が燃えやすくなる」(食生活を含めた)生活スタイルです。その意味では、湯船にゆっくり浸かるというのは私も大賛成です。先日NHKの「朝一」という番組で取り上げた重曹に使い方の一つに、湯上がりがサッパリする方法というのがありました。これは使えるかもしれませんね :-)

睡眠は「冬眠式プラスハチミツダイエット」を支える重要な柱の一つです。それに睡眠不足はさまざまな疾患の原因になるようですから、質の良い睡眠を追求することは、努力に充分値することだと思います。

2、3週間ないしひと月くらい経ったら、ぜひ感想をお聞かせください。楽しみにしています。(^^)/

投稿: fumixie | 2010年7月 7日 (水) 11時32分

こちら では、「冬眠式プラスハチミツダイエット」の体験談(完全版)が無料で配布されています。実践するうえで参考になるかもしれません。

投稿: fumixie | 2010年7月 7日 (水) 11時42分

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