高齢者はビタミンDがどれだけ必要?
注) ビタミンD:1IU(国際単位)=0.025μg
スイスに "International Osteoporosis Foundation (IOF)" という組織があります。この団体は、世界から骨粗しょう症を無くすことを目的として活動する非営利、非政府組織の財団で、ヨルダンのラニア王妃も後援者に名を連ねているようです。この財団から、高齢者向けビタミンD推奨摂取量に関する新しい意見書が5月10日づけでリリースされました。
ご承知のとおり、ビタミンDは骨や筋肉の維持、成長、機能に重要な役割を果たしています。そのため、骨の強度維持、転倒と骨粗しょう症性骨折の予防に必要欠くべからざるものです。それに最近はどこでもビタミンD不足が叫ばれているようで、至るところでビタミンD不足とさまざまな疾患との関係が取り沙汰されています。この意見書では、
ビタミンD不足を防ぐことは転倒と骨粗しょう症性骨折に大きく影響する。ビタミンDの不足にともない高齢者は筋肉が弱まるが、補えば手足の力の衰えは改善されるし、転倒の危険も下がる。ビタミンDは骨代謝と転倒の危険にも効果があることから骨折する危険に対しても影響を及ぼす。
と書かれています。
そのような中、 "Osteoporosis International"誌 に"IOF position statement: vitamin D recommendations for older adults" というタイトルで IOF の新しい意見書が発表されました。それによると、
体内でビタミンD がどういう状況にあるかを映し出す最適なものは血中の 25-ヒドロキシビタミンD の量で、この量の主な決め手になるのがビタミンD の摂取量と日光をどれだけ浴びているかだ。加齢にともない血中 25-ヒドロキシビタミンD 量は減少するが、ビタミンD3に対する反応は、加齢によっても食事でカルシウムを摂取しても影響は受けない。
そうです。
そしてどれだけ摂取すればいいかというと、
- ビタミンDの推定平均必要量は、高齢者の場合、一日あたり20μg ないし 25μg、つまり800 ないし 1000IU。
- 肥満の人、骨粗しょう症にかかっている人、日光をなかなか浴びられない人、吸収不良の人については、一日あたり50μg、つまり 2000IU 必要。
- 危険度の高い人は血中 25-ヒドロキシビタミンD の量を測定し、不足していたら治療する方がいい
とのことです。
実際に不足しているかどうかは検査しないとわかりませんが、実生活でいざ対応しようと思うと、どうしても食事から摂取することになります。しかしビタミンDはどういう食材に含まれているのでしょう。そしてどれだけの量を食べればいいのでしょう。
このサイトの情報によると、日常目にする食品でビタミンDが含まれているものはほとんどなく、わずかに魚と卵くらいなものです。このサイトに掲載されているビタミンDの含有量は食品100gあたりですが、もっとも大量に含まれているのは「あんこうの肝 110μg」。しかしあんこうの肝を日常食べるかというと、たぶんそんなことはないでしょう。
他を見ると、半乾燥のしらす干し(61μg)、これなど値段的には手頃です。それから 丸干しいわし(50μg)、身欠きにしん(50μg)、紅鮭(33μg)、しろ鮭(32μg)、スモークサーモン(28μg)、塩鮭(23μg)、にしん(22μg) もスーパーマーケットの鮮魚コーナーでよく見かけます。鶏卵の卵黄にも6μg含まれているようです。ただ 100g あたりの量であることを考えると、毎日しらす干しや卵を 100g 食べるのはかなりきついです。魚の切り身 100g くらいならなんとかなる量でしょうが、毎日となると、ちょっと考えてしまいます。
ということは、食品から摂取するのに加えて、30分かそこら自然を散策しながら日光浴して、体内で自動的に生成するという合わせ技にする方が現実的かもしれません。それでなくても 自然を散策するのは心身の健康を保つうえで有効 ですから、そのうえビタミンDも作れれば鬼に金棒かも!
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コメント
ビタミンDを作るには日光に当たることが必要ですが、現在は日焼け防止のためにできるだけ日光に当たらないようにといった流れがあります。
ビタミンD不足納得できますね・・・。
適度に日に当たって、適度に食事でまかなうのはベストな選択ですね☆
投稿: @K | 2010年6月 8日 (火) 16時48分
@Kさん、コメントいただき、ありがとうございます。
そうなんですよね、日焼けしないように、そして皮膚ガンにならないようにという観点からのようです。でも、個人的には、あくまで「個人的には」ですが、その点を考慮しても、やはり適度に日光浴するメリットは大きいのではないかと感じています。ただ難点は、どれくらい日光に当たると、体内でどれくらいのビタミンDができるかわからないことです。個人差(皮膚の色やビタミンDの生成能力など)や地域差(緯度や日光の強さ、気象条件、他)がかなり大きく影響するでしょうから。
投稿: fumixie | 2010年6月 8日 (火) 17時13分
先日の記事といい、今回といい、日光浴の重要性を再認識させられました。ビタミンDを日光浴と食事からバランス良く取ることが必要ですね。
ゲームばかりしている今の子供が、高齢者になったとき、骨粗しょう症がどれだけひどくなっているか考えるだけでゾッとします。
投稿: REDMEN | 2010年6月10日 (木) 13時18分
REDMENさん、コメントいただき、ありがとうございます。
そうなんです。調べれば調べるほど、日光浴って意外と大切なんだって思えるんですよ。ビタミンD生成以外にも、日光を浴びるメリットはあるようで、2007年10月21日付けの英 independent 紙には "Sunlight cuts risk of many cancers"(日光で多くのガンのリスクが減る)という記事が載っています。
日光も自然の一部ですから、積極的に利用しましょう。
投稿: fumixie | 2010年6月10日 (木) 15時28分