歯の健康と全身の健康の関わり
2010年5月18日付の英国 The Independent紙 に "How flossing can save your life" という記事が載りました。歯の健康は全身の健康と深く関わっていて、身体の他の部分が健康でも歯に病気があると心臓麻痺を起こすことだってあるという内容です。
歯医者のあの「キュイーーーーン」というドリルの音を聞くと「どうもねえ...」と感じて尻込みしてしまう人も多いでしょうが、歯の病気のせいで心臓病や卒中になるよりはマシでしょうから、身体の健康診断同様、歯も定期的にメンテナンスする方がいいのではないでしょうか。私は先ほど、ちょうど歯医者の予約を入れたところ f(^^)
ざっと要約すると、次のような内容です。
歯の健康は全身の健康にどれほど関わっているだろうか。「口は一つの部屋のようなもので、身体の他の部分とは無関係だと考えている人が多いが、到底理屈に合わないね」というのは、英国ロンドン UCL Eastman Dental Institute の修復歯科学教授イアン・ニードルマン。
先月発表された研究では歯の数の減少と記憶力の低下の関係が示唆された。米国ケンタッキー大学の研究者らは、79歳から90歳までの被験者に、10個の単語を見せてから5分後にどれだけ思い出せるかというテストを3年間にわたって受けてもらった。被験者の学歴は同程度だったが、結果にはばらつきが出た。1回目のテスト結果は、歯の少ない人の方が成績が悪かった。そしてその被験者らの成績は、その後急速に悪化していった。
「画期的な研究だ。口腔衛生が全身に幅広く関わっていることがまた裏付けられた」と言うのは、British Dental Health Foundation の理事ナイジェル・カーター博士。これまでの研究から、歯の健康悪化とアルツハイマー病、心臓病、卒中、糖尿病、肺疾患、はては流産や早産まで関係することがわかっていた。
この口腔衛生と全身の健康の関わりは、歯医者のみならず、一般の医師の間でも感心が高まっている領域である。口が身体の入り口なら歯を健康に保つ必要があるというのは当然のことだが、ではどのように関わっているのだろうか。「バクテリアさ。問題なのは歯の周囲に付着する歯垢だよ」とニードルマンは言う。
歯垢にはバクテリアが700株も存在するが、歯垢が溜まったままにしておくと歯周病や歯肉炎の原因になる。すると歯茎は腫れて充血し、歯を磨くと出血する。そのまま放置しておくと歯周炎になる。そうなると歯とアゴの間の組織にまで炎症が広がる。
口腔内が腫れ出すと問題は急速に拡大し、心臓まで関わってくる。「口が炎症を体全体に拡大する。それが引き金となり、メディエーターと呼ばれる化合物が大量に放出される。心臓病に関係する炎症が起きるのも原因は同じだ」とニードルマンは言う。英国ブリストル大学の研究者らが行った2008年の研究から、口腔内のバクテリアが歯茎から血流に入ると、血液中の血小板と結合し血栓になり、これが心臓に到達すると、他が健康な人でも、これが原因で心臓麻痺になる可能性があることがわかった。
口から全身にバクテリアが拡がる2つ目のルートは、集中治療室にいる患者がかかる酸素吸入器が絡む肺炎である。歯垢が貯蔵庫になり、そこに肺炎の原因になる菌が溜まる。それが空気の流れに乗ったり酸素吸入器のチューブを通るのだ。もっと一般的な肺炎を起こしかねない証拠もある。
先週発表された英国エジンバラ大学の研究では、歯周病と糖尿病の関連が確認されたようである。口腔内の炎症による化学変化が原因となりインスリンの効き目が弱くなる。その結果、2型糖尿病患者の血糖値を調整するのが困難になる。
「今では歯は長持ちしてるし歯磨きもうまくなってる、それに喫煙も減っている。しかも突然だが、そういうことがすべて関連していることがわかった。どういうわけか、社会経済的な面から健康問題の拡がりを考えると、悪化するのはいつも貧困層だ。糖尿病や心臓病にかかりやすい人は、口腔衛生も悪い場合が多いのだ」とロンドン大学ユニバーシティ・カレッジの上級講師で歯科公衆衛生コンサルタントのポールバチェラーは言う。
歯周病の予防は簡単ではないが、治療は簡単なのが普通だ。大切なのは早期発見だ。「見逃している人が多すぎる。歯茎からの出血は典型的な初期兆候なのだが、些細なことと見逃すことが多い。歯周病の症状が現れるのは、病状が進んで歯がぐらつき、ものを食べることが困難になってからだ。この段階になると治療はもっと込み入ってくる。重篤なケースだと手術して消失した歯茎の一部を再生ないし再構築し、骨を結合する必要が出てくる」とニードルマンは言う。
口腔衛生のために
記事の最後に歯の健康を保つためのアドバイスが載っています。「定期的に歯医者に診てもらいなさい」とか「大切なのはまんべんなくブラッシングすること。上も下も表も裏もだ。そして歯と歯茎の境目をしっかり磨くこと」といった、ごく普通のアドバイスに加えて、こういうアドバイスもありました。
電動歯ブラシを使っても丁寧なブラッシングをすることにはならない。ちゃんとした歯磨きの方法を実践しなければダメ。しかし電動歯ブラシで歯をキレイにしようとする気持ちになれるなら、それもよし。
歯と歯茎の間に溜まった歯垢は歯ブラシでは取れない。歯間ブラシを使うこと。
実ももっともなアドバイスです。
歯の病気になると、なによりも食事に影響が出ますよね。おいしく食べられなくなるし、食事することが辛くなります。そうなると栄養バランスも崩れるでしょう。歯の健康と全身の健康は密接に結びついていることを頭の片隅に置いておくのも悪くはありません。
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コメント
口腔内の状況がまさか心臓病や脳卒中に関連しているとは・・・。
学生時代は年1回歯科で検診を受けていましたが、今はそんな時間もなく放置されています。
歯科検診も検討しなくてはいけませんね(汗
投稿: @K | 2010年5月24日 (月) 15時26分
@Kさん、コメントいただき、ありがとうございます。
そうなんですよね、歯垢がばい菌の住処になっているというのはテレビのコマーシャルなどで知られていると思うのですが、それが思わぬ大病を引き起こす場合があるなどということは知りませんでした。それに歯の間の汚れは毎日の歯磨きでも取りきれません。
やはり定期メンテナンスが必要なんでしょうね。なるべく長いこと自前の歯で食事したいですよね。
投稿: fumixie | 2010年5月24日 (月) 15時40分
この手の話を以前、オーストラリアのドクターから聞いたことがありましたが、それを後押ししてくれる話でした。
歯が体のそれぞれの筋肉との関わりがあると言う話がずっと古い論文でありましたが、内臓器や体表の痛みとも関係があるということですね(lll゚Д゚)
健康と切っても切り離せない話で、興味深いところです。歯はまだまだ知られざる身体との関係がありあそうですね
投稿: Ctom | 2010年5月28日 (金) 15時03分
Ctomさん、コメントいただき、ありがとうございます。
そうでしたか。この記事は、私も個人的に充分うなずける話です。というのは、来年80歳になる私の母が、現在でもすべて自前の歯で頑張っていて、認知症の気がまったく無く、髪も7割がた黒いんですよ。ありがたいことだと思っています。
おっしゃるとおり、歯も奥深いんですね。歯は外界と接している体内の出先機関のような感じですね。
投稿: fumixie | 2010年5月28日 (金) 15時45分