ACS "Guide to Quitting Smoking"(禁煙の手引き)より(その1)
米国癌協会 "American Cancer Society" のサイトに "Guide to Quitting Smoking" というページがあります。「禁煙の手引き」といったところでしょうか。手引きといっても中身は、
- What do I need to know about quitting?
禁煙について知っておくべきこと - Why is it so hard to quit smoking?
禁煙がこんなに難しいのはなぜか - Why should I quit?
どうして禁煙した方がいいのか - Help is available
救いの手はある - Help with the mental part of addiction
中毒の心理面に対する救いの手 - Help with the physical part of addiction: Nicotine replacement therapy and other medicines
中毒の物理面に対する救いの手(ニコチン置換療法などの治療法) - Other methods of quitting
その他の禁煙対策 - A word about quitting success rates
禁煙成功率について一言 - How to quit
禁煙のしかた - Some special concerns
その他の懸念材料 - Where can I go for help?
どこへ行けば助けてもらえるか - Additional resources
その他の情報源
と、情報満載です。
そこでこの手引きを最初から順を追って、少しずつ中身を要約しながら見ていこうと思います。ただし、もともと米国内向けの情報なので、そのまま紹介しても意味がない箇所もあります。その場合は端折ることもあります。
まずは最初の2つくらいを要約してみましょう。要約部分は「斜体字」で示すことにします。
禁煙について知っておくべきこと
ここには米国公衆衛生局長官の言葉が載っています。
"Smoking cessation (stopping smoking) represents the single most important step that smokers can take to enhance the length and quality of their lives."
禁煙(喫煙をやめること)とは、命を永らえ人生の価値を高めるうえで喫煙者が取りうる唯一最重要手段のことである。
禁煙はけっして簡単ではありませんが達成できます。そして長続きする禁煙を達成するには、
- 自分が何に直面しているか
- 自分に何ができるか
- どこに行けば助けが得られるか
を知ることが大切です。
禁煙がこんなに難しいのはなぜか
ここでは禁煙の難しさを表現するために、冒頭であのマーク・トウェインの言葉を引用しています。曰く、
"Quitting smoking is easy. I've done it a thousand times."
タバコをやめるのは簡単さ。千回もやめたんだから。
どうでしょう。難しいのはやめることよりも「やめ続ける」ことなのですね。なぜやめ続けることが難しいか。それはニコチンのせいです。
ニコチン
ニコチンというのはタバコに元から含まれている、ヘロインやコカイン同様に中毒性がある物質です。時間が経つと身体も心もニコチンに依存するようになります。ですから禁煙するということは、心身両面でニコチンへの依存性に対処しなければならないのです。
ニコチンはどこからどこへ行き、いつまでいるのか
体内に吸引されたタバコの煙は肺の奥深くに入り込み、そこから即座に血流に溶け込み、全身に送られます。
ニコチンの影響範囲は、心臓、血管、ホルモン、代謝、脳など多方面に及びます。女性喫煙者の場合は母乳、それに子宮頸管粘液にすらニコチンが見つかります。ニコチンは、妊娠中、胎盤を自由に通り抜けるので、羊水や胎児の臍帯血からも見つかっています。
直接喫煙は無論のこと、"second hand smoke" も "third hand smoke"(これとか、これとか、これ)も、赤ちゃんにとっては本当にいい迷惑ですよね。お母さんのお腹にいるときからニコチン中毒にされたのでは、たまったものではありません。
ニコチンがいつまで身体に留まっているかは多くの要因に左右されますが、一般的な喫煙者の場合、禁煙後も3日ないし4日くらいは体内に留まっています。
ニコチンと喫煙者の関係
ニコチンは吸う人をくつろいだ気分にさせるうえに鎮静剤のような作用もあることから、自然と吸う本数が増えていきます。すると血中のニコチン量が増加します。実際静脈から投与された薬剤よりもニコチンの方が早く脳に到達します。しばらくするとニコチンに対する耐性ができてくるので、ますますタバコの量が増えます。そしてニコチンの作用を維持しようとして、タバコを吸いつづけるのです。
ニコチンの禁断症状のせいでタバコを吸ってしまう
ニコチンの禁断症状は心身両面に及びます。タバコをやめると数時間以内に禁断症状が現れだし、ニコチンやその副産物が大部分身体から抜けた2,3日後に山場が到来します。禁断症状は数日から長いと数週間続きますが、タバコを吸わずにいれば、日々回復していきます。
禁断症状としては以下のような症状が挙げられます。
眠りにくくなり、夜目が覚めてしまう。夢にうなされたり悪夢を見る
こういったことから、禁煙しても、血中のニコチン量が増加して禁断症状が出なくなるまで再度吸いつづけるようになるのです。
それからタバコを吸っていると、通常よりも速く体外に排出されてしまう薬があります。ですから禁煙前から服用している薬があったら、その中で禁煙後に調整や変更が必要なものがないかどうか主治医と相談する必要があります。
--- 続く ---
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コメント
私の周りにも喫煙者は沢山います。
学生の頃は少なかったのですが、入社してから喫煙者と接する機会が増え、最悪なことにタバコの煙に慣れてしまいました。
喫煙をしている妊婦さんも時々見かけますし、知り合いも何度も禁煙の継続を失敗しています。
体に悪いのは分かり切っているのに、ニコチンは怖いですね・・
投稿: イロイロパンダ | 2010年5月13日 (木) 10時08分
コメントいただき、ありがとうございます。
おっしゃるとおり、ニコチンは恐ろしいですよね。中毒性はヘロインやコカインと同等だといいますし、なにより手軽に入手できますからね。
私の場合は、今を去ることずーっと以前、ひと月ほど禁煙したことがありました。そのときは酒の席でつい吸ってしまいました。それからずいぶん経って、今から数年間に2度目の禁煙を始めて今に至っています。
現在タバコを吸っている人も、心中「やめなきゃなあ」とは思いつつも、「誰か背中を押してくれないかな」という心境なのではないでしょうか。でも禁煙を諦めたら健康は手に入りません。
仕事をしている環境で、あるいは客先で受動喫煙をどう防ぐか、これはかなり難しいですよね。特に後者の場合は、ある意味防ぎようがないのかもしれません。「タバコの煙を通さないマスク」なんていうのがあればいいかもしれませんね。それでも "third hand smoke" は防げませんけど。
投稿: fumixie | 2010年5月13日 (木) 11時28分