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2010年3月27日 (土)

異性化糖 "High Fructose Corn Syrup" はメタボのもと?

でパッケージに入った食品を買ったら裏の成分表示を確認するのが習慣になっているが、そこでいつも気になっていたのはブドウ糖果糖液糖いう表示。ほとんどありとあらゆる食品に入り込んでいるこの怪しげな代物はいったい何だろう、と常々思っていたところに、今回おもしろい記事を見つけた。米プリンストン大学3月26日付け News at Princeton に載っていた A sweet problem: Princeton researchers find that high-fructose corn syrup prompts considerably more weight gain (March 22, 2010; 10:00 a.m.) という記事である。

ブドウ糖果糖液糖って何?

ころでこのブドウ糖果糖液糖なるものだが、wikipedia によると、どうやら異性化糖という糖の一種類らしい。では異性化糖はというと、「ブドウ糖と果糖を主成分とする液状糖で、原料はトウモロコシやジャガイモ、あるいはサツマイモなどのデンプン」とある。そして成分の含有率によって以下のように分類されているようである。

ブドウ糖果糖液糖: 果糖が50%未満
果糖ブドウ糖液糖: 果糖が50%以上90%未満
高果糖液糖: 果糖が90%以上
砂糖混合異性化糖: 上記の各々に10%以上の砂糖を加えたもの

は "high fructose corn syrup" の方はどうかというと、これまた wikipedia によると、果糖とブドウ糖の混合比率によって "HFCS 55"(果糖55%、ブドウ糖45%)や "HFCS 90"(果糖90%、ブドウ糖10%)など、いくつか種類があるようである。

ちなみに、引用元の記事で使われている "high fructose corn syrup" がどれに当たるかわからないと、日本でいう前述のどれに相当するか決められない。しかしあいにく、引用元の記事では単に "high fructose corn syrup" と称しているだけである。そこで、どう転んでもいいように、この記事では異性化糖という用語を使うことにする。

性化糖(ブドウ糖果糖液糖)については、屋台ブルーさんがHFCS(ブドウ糖果糖液糖)の真実という記事を書いておられるので、そちらもぜひ参照していただきたい。

異性化糖をとりすぎるとどうなるか?

用元の記事が言わんとしているのは、手短かにまとめれば、異性化糖を過剰に摂取すると、人間で言えばメタボリック症候群に相当する症状が実験動物に現れたということである。

の研究を行ったのは米国プリンストン大学の研究チーム。その研究から、「全体の摂取カロリーを同じにしても、グラニュー糖を摂取したネズミよりも異性化糖を摂取したネズミの方が著しい体重増加を示した」ことが明らかになった。研究者らによれば、異性化糖は実験動物の著しい体重増加の原因になるうえに、長期間摂取すると、とりわけ腹部の体脂肪の異常な増加につながり、中性脂肪という体内を循環している血中脂肪の上昇を招く。食欲と体重、糖分依存に関する神経科学の専門家バート・ホーベル心理学教授によれば、

異性化糖だって他の甘味料だって、体重増加や肥満についてはなんら変わらないと言い張る人もいるが、少なくとも我々の試験環境下ではまったく違う。それはこの実験結果からはっきりしている。ネズミが摂取する異性化糖が炭酸飲料に含まれている量よりはるかに少ない場合でもそのネズミは肥満になる。それも一匹残らずだ。例外はない。高脂肪の餌を与えたネズミだってこうはならない。体重が増えないネズミだっているんだよ。

究チームは2種類の実験を行った。まず一つは、2つに分けた実験用のネズミの一方には標準的な餌とグラニュー糖で甘くした水を与え、もう一方には同じ餌と異性化糖で甘くした水を与えた。糖分の濃度はグラニュー糖の方は市販のソフトドリンクの糖分濃度と同じ。そして異性化糖の方は一般の炭酸飲料の糖分濃度の半分にした。その結果、異性化糖で甘くした水を与えたネズミの方が著しく体重が増加した。

2つ目は半年間という長期間の実験。この時は一方のネズミにはネズミ用の餌だけを与え、もう一方には異性化糖をたっぷり与えた。そして「6ヶ月にわたり異性化糖を与えたネズミの体重増加、および体脂肪と中性脂肪の量が観察された。ネズミ用の餌だけを与えられた方と比較すると、異性化糖が豊富な食事を与えられたネズミは、体重や血中の中性脂肪の増加、沈着する脂肪、特に腹部回りの内臓脂肪の増加など、人間のメタボリック・シンドロームにあたる危険な症状に特徴的な兆候が現れた。とりわけオスのネズミの太り方は激しく、異性化糖を与えられた方は、普通の餌を食べた方よりも体重が48%も重かった。」研究者の一人はこう指摘する。

このネズミたちはただ太っているだけじゃない。腹部脂肪や血中中性脂肪の相当量の増加など肥満の特徴がある。人間でこれと同じ所見があれば、高血圧や冠動脈疾患、ガン、糖尿病などの危険因子になるところだ。

ただ、異性化糖を与えると中性脂肪や体脂肪が増加し、結果として肥満になった理由についてはまだ不明らしい。それでも引用元の記事によれば、次のような説明がある。

異性化糖もショ糖も、いずれも果糖とブドウ糖という単糖類を含んだ化合物だが、両者は少なくとも2つの点で異なっている。まずショ糖を構成するこの2種類の単糖類は量が同じである。果糖が50%、ブドウ糖が50%である。しかしこの研究で使われた一般的な異性化糖には、ややバランスが崩れているという特徴がある。果糖が55%、ブドウ糖が42%である。残りの3%は高分子サッカライドといって、糖分の分子がもっと大きい。第2に、異性化糖は、製造工程を経た結果そこに含まれる果糖分子が遊離し非結合性を帯びるため、すぐに吸収、活用される。それに対して、サトウキビ糖やテンサイ糖から得られるショ糖は、そこに含まれる果糖分子が1つずつ対になるブドウ糖分子と結合しているため、余分な代謝プロセスを経ないと利用できない。

こうなると非常におもしろい謎が生じる。プリンストンの研究に使われたネズミが肥満したのは異性化糖を飲んだからで、ショ糖を飲んだわけではないからだ。食欲や代謝、遺伝子発現のどういう違いが決め手になってこの現象が起きているかはまだ判明していないが、過剰な果糖は代謝されて脂肪になり、ブドウ糖は大部分が代謝後エネルギーになるかグリコーゲンという炭水化物として肝臓と筋肉に貯蔵されるという事実が関係しているかもしれない。

こうなるとパッケージに入っている食品には手を出しにくい。そうなると自然、選択肢は生野菜と鮮魚ということになるが、まさか養殖魚に HFCS なんか与えてないだろうなあ。

文:fumixie <fumixie@gmail.com>

屋台ブルーによる追記:2010年3月29日

今回、fumixieさんに「ブドウ糖果糖液糖」と「HFCS」の相違点を詳しく解説してもらいました。感謝です。私の表記では問題になりそうなところがあるので、過去の記事も訂正していく。

HFCSは、「High Fructose Corn Syrup(高果糖コーンシロップ)」からわかるように「果糖」がフューチャーされている名称である。日本の場合、ブドウ糖の含有量が多い「ブドウ糖果糖液糖」がよく使われているという理由で、「HFCS」の訳語に当てていたけど、果糖の含有量が多い、「果糖ブドウ糖液糖」も、実際、多くの食材で使われている。したがって、「果糖ブドウ糖液糖」と訳した方が望ましいだろう。

実は、もう1つ理由がある。最近、「果糖」に問題があるという説があり、HFCSの問題を果糖の問題と同義にしている場合が多い。そんな理由から果糖の含有量の多い、果糖ブドウ糖液糖という表記の方が望ましいでしょう。

ライフログで紹介していない3月19日のヘルスデイ・ニュースを紹介しておく。

果糖ブドウ糖液糖と肝線維化の関連性
High Fructose Corn Syrup Linked to Liver Scarring

この記事の後半に、「人では果糖によるNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)の発症は証明されていないし、NAFLDの患者は、既に多大な健康障害を持っているから、果糖摂取となんら関係ない。」という記載がある。HFCSと聞けば、果糖の問題として考えているようだ。

この報告で言えることは、相関があるかもしれないだけで、因果関係を議論するレベルには達していない。さらに研究を進め、実際にフルクトースで肝障害が引き起こすかどうか調べなきゃならんでしょうね。

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コメント

何気なく dietblog を覗いてみたら、なんと同じ元ネタの記事がありましたね。 "High Fructose Corn Syrup Makes You Fat" なんていう、そのものズバリのタイトルです。

投稿: fumixie | 2010年3月29日 (月) 22時56分

英語版 wikipedia の "High-fructose corn syrup" の項には、HFCS の定義と用途について、次の記述があります。

The most widely used varieties of high-fructose corn syrup are: HFCS 55 (mostly used in soft drinks), approximately 55% fructose and 45% glucose; and HFCS 42 (used in many foods and baked goods), approximately 42% fructose and 58% glucose.[10] HFCS-90, approximately 90% fructose and 10% glucose, is used in small quantities for specialty applications, but primarily is used to blend with HFCS 42 to make HFCS 55.

"high-fructose corn syrup" のうち用途がもっとも広いのは次のとおり。HFCS 55(ほとんどがソフトドリンク向け)は、ほぼ 55% が果糖、45% がブドウ糖。HFCS 42(多くの食品と焼き菓子類)は、ほぼ 42% が果糖、58% がブドウ糖。HFCS 90 は、ほぼ 90% が果糖、10% がブドウ糖で、用途が限られ使用量も少量だが、基本的には HFCS 42 と混ぜて HFCS 55 を作るのに用いられる。
この記述の定義と用途だけでは、HFCS が文面に表れても、それが「ブドウ糖果糖液糖」なのか「果糖ブドウ糖液糖」なのかは微妙で判断しがたいですね。日本語の用語は果糖 50% が境目ですから。

というわけで、"High-fructose corn syrup" の訳語は、屋台ブルーさんのおっしゃるように、国内での利用状況とか果糖の問題を考慮していずれかに決め打ちするか、日本語には訳さず HFCS と表現するか、あるいは文脈に応じて適切な用語を選ぶか。

決め打ちにして、おかしなケースがあったら、その都度考えるということでしょうか。

投稿: | 2010年3月29日 (月) 23時59分

い、いかん。名前を入れるのを忘れた ↑

投稿: fumixie | 2010年3月30日 (火) 00時00分

fumixieさん、提案ありがとうございます。

「HFCS」を訳さないという手もありますが、国内の読者にとって馴染みが薄いのでそのまま使用するのはよしましょう。

追記でも述べているように、「果糖」の問題性を意識して「果糖ブドウ糖液糖」で統一していこうと思います。よろしくお願いいたします。

投稿: 屋台ブルー | 2010年3月30日 (火) 00時31分

「果糖ブドウ糖液糖」: 了解しました!

投稿: fumixie | 2010年3月30日 (火) 09時09分

かなり詳しい説明をUCSFの先生が講義しています(英語ですけど)。

http://www.youtube.com/watch?v=dBnniua6-oM

投稿: kj | 2010年7月10日 (土) 10時39分

kjさん、コメントいただき、ありがとうございます。

教えていただき感謝します。ただいま視聴中です。ただ学生を卒業して四半世紀以上経った今、1時間半集中してこの講義を聴くのはツラいものがありますね :-) 特にヒアリングが不得手だと。

投稿: fumixie | 2010年7月10日 (土) 14時12分

私の聞き間違いでなければ、HFCS とスクロースはまったく同じもので、両方とも「危険」で「poison」だと言ってますね。

投稿: fumixie | 2010年7月10日 (土) 14時34分

この「Sugar: The Bitter Truth」は非常に有名な講義です。
インターネットを探せば日本語のサブタイトル版も見つかりますよ。( たぶん... 私は必要ないので、どこにあるのか分かりませんが)

果糖「フルクトース」を摂りすぎると毒になるので
HFCSも砂糖もどちらも「Poison」になるんですよ。

彼の話の面白いところは、米国民が肥満になっている理由に
政治的な潮流があるってところ。

HFCSは、1966年、佐賀大学のTakasaki先生が開発したようですね。

1975年に米国に入っだけど、第二次世界大戦に負けた仕返し
だって言っていますね。でも今じゃ日本人もHFCSで苦しんでます。

投稿: 屋台ブルー | 2010年7月16日 (金) 00時12分

屋台ブルーさん、コメントありがとうございます。

その HFCS、食品パッケージの成分表示を見ると、別の名前でそれこそいたるところに登場してますよね。HFCSフリーな食生活をしようと思うと、生もの(生鮮食品)だけになっちゃいそうです。

HFCS = 「毒」

投稿: fumixie | 2010年7月16日 (金) 09時40分

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