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2009年12月28日 (月)

オメガ3系脂肪酸は加齢性の失明を避けるかも

ライフログで取りあげたオメガ3系脂肪酸に関する話題
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オメガ3系:いかに騙されているか(08/06/20)

今日の話題になっている疾患、加齢黄斑変性をLife-LOG(ライフログ)で最初に取りあげたのは2009年5月14日のエントリー「ある種の食事で加齢性の失明は抑えられるかも」である。ちょっとそちらも読んでください。

加齢黄斑変性は、難病指定されているから難病情報センターに詳細が記載されているから気になる人はチェックしてください。

難病情報センター:加齢黄斑変性

「なんだ、難病なんて私に関係ないや!」なんて思わない方がいいだろう。というのも、この疾患、年齢が60歳を過ぎると増えてくる、実際、米国では失明原因の第一位である。日本でも、高齢化社会を迎え、加齢黄斑変性による失明は増えているそうだ。未だ効果的な治療法が無い現状を考えると、予防に力を入れる必要があるだろう。

そうそう現在、日本で保険適用されている加齢黄斑変性に適応がある薬剤は以下の2つだ。
ファイザー株式会社からマクジェン(一般名:ペガプタニブ)
ノバルティスファーマ株式会社からルセンティス(一般名:ラニビズマブ)
両製剤とも直接眼内(硝子体内)に投与して血管新生を抑えることで視力の回復も見られるようだ。私は眼科医ではないので、日本人に対する具体的な治療効果は知らない。今度眼科の先生に訊ねてみようと思う。

じゃあ薬価を見てみよう。
マクジェン硝子体内注射用キット0.3mg = 123,457円
これを6週間隔で投与するんですよ。両眼になれば2倍!
ルセンティス硝子体内注射液2.3mg/0.23ml = 176,235円
これは1ヵ月間隔で3ヶ月連続投与して、維持期は1ヵ月以上開けて続けるそうだ。

これは高いですよね。ちょっと考えてください。製薬会社は難病や癌の治療薬開発に力を入れている。難病や癌になった人には選択肢が無いからだ。こういう患者さんは藁をも掴みたい心境になっているから、どんなに高額な薬でも支払い続けるだろう。支払いが保証されている薬なら製薬会社も高額な開発費を投じ続けられるという図式ができあがってるんじゃないかな。

まあ、この考えは私の考えなんで一般論と思わないでね。高額な薬剤の一部を患者さんが負担しているとはいえ、7割以上は税金が負担しているわけで、加齢黄斑変性のようにこれから患者さんが増えていくような疾患の場合、国民一人一人が予防していく姿勢を持たないと罪になると思う。難病センターの情報に書かれているように、喫煙だって危険因子になっている。私に言わせれば、喫煙は個人の問題ではない、喫煙することで社会がどれだけ損害を被っているか考えなきゃいけないだろう。タバコ税をもっと上げて喫煙者を減らすべきで、国の税収が減っても国民が健康になれば、医療費も減り社会生産性も上がるから将来的にプラスになるはずだろう。

まあ、話題が外れているので、元に戻さなきゃ。今日のエントリーは非常に興味深い。以前取りあげたエントリー「オメガ3系脂肪酸は黄斑変性の進行を抑えるかも(09/06/11)」を読んでみて欲しい。

米国では、加齢黄斑変性が失明原因第一になっていて、保険に入っていない人が多いため高額な医療費のかからない治療が求められている。AMDの予防や治療に関する栄養学的アプローチを模索するため国立衛生研究所が主導の加齢黄斑変性スタティ(AREDS)があり、今日の結果のように、加齢黄斑変性の初期段階であっても病状進行を抑制する結果が出たということはすばらしいことだと思う。

日本でもこうい報告を活用すべきでしょうね。

オメガ3系脂肪酸は加齢性の失明を避けるかも
Omega-3s help stave off age-related vision loss

ニューヨーク(ロイター・ヘルス) - 年齢を重ねても視力は保ちたいよね?健康にいいオメガ3系脂肪酸を含む魚を沢山食べていれば可能かも、という新しい研究報告が示された。

加齢黄斑変性(AMD)の初期症状を示す1,837人の中で、オメガ3系脂肪酸を大量に摂取する人は、摂取量の少ない人に比べて、12年以上の期間を見れば、病態の進行を30%遅らせていた。

メリーランド、ベセズダの国立衛生研究所、国立眼科センターのJohn Paul SanDiovanni医師のグループは、この結果を雑誌American Journal of Clinical Nutritionの12月号で報告した。

AMDは、網膜の変性症であり、米国の高齢者の中で失明の原因として最も多い。

研究者によると、約175万人の米国民、335万人のヨーロッパに住む人は視覚障害のあるAMDを患っている。

薬剤による治療はいくつかあるものの、彼らの説明によると、薬剤には限られた効果しかないし、高価で重篤な副作用も引き起こす可能性がある。AMDの進行には炎症が関与して、オメガ3系脂肪酸は抗炎症作用があるため、この栄養素によって、病態の進行を遅らせることができるかもしれない。

この仮説を調べるため、SanGiovanni医師のグループは、加齢黄斑変性スタティ(AREDS)、予防や治療に関する栄養学的なアプローチを模索するために国立衛生研究所が主体となっている臨床試験から得られたデータを解析した。参加者は少なくとも1年間は進行型のAMDにはなっていなかったが、初期段階の症状を有していた。

12年以上の追跡から、参加者の約20%が、網膜の中心から消失していく"萎縮型"加齢黄斑変性を発症させ、32%の人は、黄斑部に異常な血管が形成される"滲出型"もしくは新生血管形成の加齢黄斑変性を発症させた。

オメガ3系脂肪酸として主要な2つの脂肪酸 - ドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA) -- を最も多く摂取している人は、最も少なかった人に比べ、萎縮型も滲出型のAMDでも発症を約30%抑える結果を導いた。

DHAとEPAを最も摂取するグループは、全摂取カロリーの約11%をオメガ3系脂肪酸から摂っていたけど、最も摂取の少ないグループは、たった1%しか摂れていなかった。

「私たちの結果が他のグループで検証され臨床試験まで持って行ければ、低コストで、導入しやすく、広く受け入れられたAMDの悪化を食い止めるための治療法開発の手立てになるだろう」、とSanGiovanni医師のグループは結論づけた。

OURCE: American Journal of Clinical Nutrition, December 2009.

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コメント

ということは、亜麻仁油やサバ、サーモン、クルミなど(他にもあるでしょうが)を日頃から摂取していればAMDが予防できて、「マクジェン硝子体内注射用キット0.3mg = 123,457円」とか「ルセンティス硝子体内注射液2.3mg/0.23ml = 176,235円」なんていう高額な薬剤を使わずみ済む...のでしょうか?!だとしたらこんな楽なことはないし、嬉しいですよね。

投稿: fumixie | 2009年12月28日 (月) 11時41分

fumixieさんの食生活でいいんじゃないでしょうか。でも必ず予防できるといった訳ではないので、オメガ3系脂肪酸を極端に多く摂るべきじゃないと思いますよ。何事もバランスが重要なんでしょうね。

亜麻仁油って手軽に手に入らないので未だ食したことありませんが、味はどうなんでしょうか?

投稿: 屋台ブルー | 2009年12月29日 (火) 15時56分

僕は、毎食時に大麦若葉の粉末を水に溶かして飲んでいますが、夕食時には、それに亜麻仁油を大さじ1杯入れて、一緒に飲んでいます。味はまったく感じませんね。でも調べてみると、「くるみ系の個性的な味」という感想も出てきます。
おっしゃるとおり、バランスが大切ですよね。

投稿: fumixie | 2009年12月29日 (火) 19時18分

ちょっと調べてみたところ、オメガ3脂肪酸を含む食品としては、
http://www.nutrientreference.com/omega-3_fatty_acids.html
によると、サーモン、いわし、大豆、マグロ、くるみ、かぼちゃの種、亜麻仁油などがあるようです。驚いたのは、ハチミツにも含まれているらしいこと。これは初耳でした。
マーケットでよく「鮭の切り身」と「サーモンのハラミ」が売られていることがよくありますが、なんとなく脂分が豊富なように感じるので、「サーモンのハラミ」の方を買ってしまいます。それにハラミって美味しいんですよね。

投稿: fumixie | 2009年12月29日 (火) 20時35分

fumixieさん、今年もよろしくお願いします。
今年は共同作業の元年としていきましょう。

投稿: 屋台ブルー | 2010年1月12日 (火) 17時06分

こちらこそ、よろしくお願いします。

投稿: fumixie | 2010年1月12日 (火) 18時09分

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