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2009年10月17日 (土)

魚を食べても心不全の予防にならないかも - オメガ3

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久しぶりの「オメガ3系」脂肪酸のニュースだ。なんたって、ここはオメガ3系脂肪酸の専門ブログのように、「オメガ3」をキーワードにして来られる人が多いからね。右欄の検索フレーズランキングを見てよ。上位をキープしたまま。昨日のアクセス数は14。彼らのニーズに応えておかなきゃ。

私は専門家じゃないけど、色々調べていると詳しくなって楽しいよ。まあ医療ニュースを追いかけているだけなんだけどね。

本当にオメガ3系脂肪酸に関心があるなら、上記の記事を上から順番に読んでみるといいだろう。オメガ3系脂肪酸に関する情報はあやふやだよ。

今日のロイター・ヘルスのニュース記事だけでは、疑問が生まれるばかり。

疫学調査から相関があるって分かっても、因果関係が示される訳じゃない。それに、参加者の食事状況を調べているけど、どのように?文献を見ないと分からない情報だけど、質問票形式なんだろう。すると、EPAやDHAの摂取量は推定になるんじゃないかな。オメガ3系脂肪酸とオメガ6系脂肪酸の比率も検討されていないよね。オメガ3系脂肪酸の摂取量が多ければオメガ6系脂肪酸の摂取量も相対的に増えているかもしれない。それだったら相殺される可能性もある。オメガ3系の効果が減少するから、心不全のリスクとの関連性が見いだせないのかも?どうなんだろう?

オメガ3系脂肪酸とオメガ6系脂肪酸は相互作用をしているという基本的な概念を著者はどう考えているのだろう?

また、Geleijinse医師の説明の中で、オメガ3系脂肪酸は、心臓の電気的な活動性に関わっていると言っているが、その根拠を知りたい。文献に記載されているのだろうか?この考えの根拠が分かれば、私の知識欲も少し満たされるんだけどな。

糖尿病患者にはオメガ3系の効果があるかもしれないけど、やはりオメガ3系脂肪酸の摂取量だけで考察なんてできないだろう。生命活動はそんな単純なメカニズムじゃないということだ。

こう考えていると、この報告が何でニュースになるんだろう?という他の疑問が生まれる。研究報告の取り扱われ方も政治的な意図が絡むからね。

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魚を食べても心不全の予防にならないかも
Fish may not protect against heart failure

ニューヨーク(Reuters Health) - オメガ3系脂肪酸の豊富な魚を食べると身体にいいと思う。しかし、心不全に対して、あまり予防効果を示してくれない、新しい研究から示唆された。

研究者は説明によると、一週間に少なくとも2回以上魚の摂取を目指す成人の推奨量が、この知見によって変わることはない。

他の研究報告では、脂肪の富む魚、例えば、サケ、マス、サバを食べることで、心疾患にようる死亡リスクを低下させられている。

しかしながら、心不全は少しばかり異なる病態かもしれない、とJ. Marianne Geleijnse医師は説明した。彼女は、この研究の主任研究員であり、オランダ、Wageningen大学の助教。

心不全とは、心筋が弱くなって、身体が必要とする血液を送り出す事ができなくなった慢性的な状態であり -- 疲労感、息切れ、体液の貯留といった症状を呈してくる。

心臓に対する影響の現在の考え方をGeleijnse医師がロイターヘルスに話したけれど、魚油は主に、心臓の電気的な活動性に関わっているんじゃないかということだ -- これは、心拍リズムによる致死的な循環障害の危険性を下げているんじゃないかということ。

彼女は更に付け加えて説明をしたが、今回の知見から、脂肪は、血圧、コレステロールレベル、そして心血管にできるプラークのサイズに殆ど影響を与えなかった -- これらは、心不全を発達させるための重要な因子になっている。

この研究は、雑誌European Heart Failure Journalに掲載され、55歳以上の5,299姪の成人を対象に、彼らの食生活、他の健康状態やライススタイルの因子を調査しており、開始時に心不全の人はいなかった。

11年間の追跡調査で、669名の参加者は心不全を発症させた。Geleijnse医師のグループは、彼らの魚の総摂取量と心疾患リスクとの間に関連性を見いだせなかった

特に魚に含まれる主要な2つのオメガ3系脂肪酸(EPAとDHA)に注目すると、摂取量と心不全のリスク低下に弱い関連性を見いだせた。

この知見は、しかしながら、統計的に有意じゃなかった。どういう事かと言えば、偶然の可能性もあると言うことだ。

どちらにしろ、一般的な成人が食べる魚、脂肪分の多い魚を週に2回という推奨量は、「変わらず」という見解をGeleijnse医師は述べた。

「私たちが発見した事実は、心不全に対して非常に弱い予防効果ということだけで.... 魚を食べるのが、心臓死の予防に無意味だって事じゃないわよ!」彼女はここを強調した。

それともう一つの発見があり、糖尿病を持っている患者さんに魚の有効性が示されている。

糖尿病を持っていた479名の参加者の内、EPAとDHA摂取量の一番多いグループは、最も少ないグループに比べて、心不全の発症を42%低下した。

糖尿病を持っている人は、持っていない人に比べて心不全になるリスクが約2倍高いと言われているとGeleijnse医師はコメントしている。しかし、脂肪分の多い魚が、どうして糖尿病を持っている人の心臓合併症の予防になるのか分からない。

今のところ、彼女の話から、この知見は、「仮説の提起」として考えるべきであり、糖尿病患者の心不全を脂肪分の多い魚で予防できる証拠にはなっていない。

「糖尿病患者を対象にした研究を続ける事で、私たちの結果を確認する必要性があるでしょう」とGeleijnse医師は述べた。

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コメント

とても興味深く拝見しました。つまり、数ある心疾患の中でも、心不全は「別物」で、EPAやDHAが心不全の治癒に寄与するとは考えにくいけど、それらの摂取そのものがまったく無意味というわけではない、ということのようですね。無意味だと言われたらちょっとショックだったんですが、そうでなくてよかったです。

ところで、本文の中で意味が把握しにくい部分が2ヶ所ありました。

1)「心拍リズムによる致死的な循環障害の危険性」というのがよく分かりませんでした。原文から察するに「魚の脂によって心臓病で死亡する危険性が下がるのは、魚の脂が心臓の電気活性に作用し、心臓の鼓動(心拍?)が命に関わるほど乱れるのを防いでくれるから」という理解であってますか?

2)「一週間に少なくとも2回以上魚の摂取を目指す成人の推奨量が...」の部分が分かりにくかったのですが、ここは、「この研究結果を踏まえたとしても、『大人は一週間に最低2回は魚を食べるようにしよう』という一般的な勧告に変わりはない」ということでは?

投稿: fumixie | 2009年10月17日 (土) 16時54分

オメガ3系脂肪酸・・勉強になりました。
たしかにオメガ3系脂肪酸の摂取量だけで比較するのは大変ですねまだまだ未知な部分が多いのだなと感じました。

ところで、
四万十川ウルトラマラソンはどうでしたか?
マラソンのお話楽しみにしています。

投稿: E.F野 | 2009年10月18日 (日) 22時15分

fumixieさん、いつも精読ありがとうございます。

先週末に出場した四万十川ウルトラマラソンの疲れと仕事の忙しさが重なって返事が遅くなりました。

質問1)ですが、fumixieさんのおっしゃるように、EPAやDHAは心筋の電気生理に関係していることだと考えました(元文献を読んでいないので確証はありません)。洞結節から始まり、刺激伝導系と呼ばれる繊維に広がる一連の心臓収縮リズムに働くと考えれば、心室細動のような致死性の不整脈を予防する効果があるんでしょうね。

質問2)は、まさにおっしゃる通りです。彼らのガイドラインでは、週に最低2回以上の魚を摂取するように勧められているし、今回の発表からそれを否定されることはない、てことでしょう。

投稿: 屋台ブルー | 2009年10月26日 (月) 12時35分

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