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2009年6月25日 (木)

膵癌のリスクは過体重になれば上昇する

肥満になれば癌になりやすいという話は医療関係者の間で常識になっているけど、皆さん知っていますか?

知らない人も多いかもしれない。今日は肥満と膵癌に関して詳しく解説してみよう。

記事の中に「過体重」と「肥満」という言葉が出てくるけど、これはBody Mass Index(BMI)、体重(キログラム)を身長(メートル)の二乗で割って計算される値で評価されている。25から29.9までが「過体重」で30以上になれば「肥満」だ(注:これはWHOの基準であり、日本人じゃないよ)。

最近のメタボの話を聞いている人は、「身長と体重の相関値だけで肥満かどうかなんていえないんじゃない?」と思われるかもしれない。確かにそうだろう。体脂肪、中でも内臓脂肪の蓄積が悪性の肥満なので、腹囲測定により内臓脂肪の評価をしている。しかし、この測定が始まったのはつい最近のことだ。最近ニュースになっている研究報告、特に、長期間経過を見ている疫学調査の開始時に、腹囲を測定する概念がなかったため、今日紹介するような報告では、BMI値のみで考察されている。

次に膵癌を取りあげているのは、全米では癌死の4位、日本でも男では5位と比較的頻度の高い癌であり、診断時に進行膵癌が多いため予後がきわめて悪い。手術できても5年生存率は13%という報告もあるため、膵癌予防という考えが重要になってくる。

「癌の予防?」と不思議に思うかもしれない。癌は予防できる疾患だ。私は癌も生活習慣病の一部だと考えているし、その理由を説明しよう。

2006年に、日本膵臓学会膵癌診療ガイドラインが出ている。それを見てみるといいだろう。この中に「CQ1-1 膵癌の危険因子は何か?」という項目があって、危険因子を抜粋する:

  1. 家族歴:膵癌,遺伝性膵癌症候群
  2. 合併疾患:糖尿病,慢性膵炎,遺伝性膵炎
  3. 嗜好:喫煙

この中で、生活習に関わるのは、糖尿病と喫煙であり、それぞれ、膵癌のリスクを2.1倍と2倍に高めてしまう。こういう危険因子を取り払った生活をすることが重要なんだよね。

そして極めつけは、今年の2月にWorld Cancer Research Fundから報告なんだけど、このニュース知っているかな?

癌予防には健康的なライフスタイルが重要
ライフスタイルを変えれば、米国の癌の1/3を予防できるだろう
Healthy Lifestyle Important In Cancer Prevention
Study Finds That Lifestyle Changes May Prevent 1/3 Of Cancers In The United State

健康的な生活をすることで癌のリスクを下げることができる:

38 %の乳癌
45 %の大腸癌
36 %の肺癌
39 %の膵癌
47 %の胃癌
69 %の食道癌
63 %の口腔、咽頭、喉頭癌
70 %の子宮内膜癌
24 %の腎臓癌
21 %の胆のう癌
15 %の肝癌
11 %の前立腺癌

こういう結果が出ているのに不健康な生活を続けますか?

じゃあ最後に、今日のニュースのポイント。肥満と膵癌の関連性は明らかになっているけど、個人の肥満の履歴と膵癌の発症を調べたもので非常に興味深い。若い時に肥満になれば膵癌の発癌リスクは上がるし、高齢で肥満なら膵癌が進行して生存率が低下する。どっちにしろ肥満解消が重要だろう。

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膵癌のリスクは過体重になれば上昇する
Pancreatic cancer risk rises with excess weight

ニューヨーク(Reuters Health) - 若年青年期に過体重になった人は、膵癌になるリスクは高く、高齢で肥満になれば、この悪性の癌は治療困難なため、生存率は非常に低いことが新しい研究から示された。

若年で過体重や肥満になれば、年を取って体重が増える人より、膵癌になるリスクは高いと、ヒューストンのM.D.アンダーソン・キャンサー・センターのDonghui LI医師がReuters Healthに話してくれた。

「二つ目に重要な発見は、」Li医師は更に話す、「20歳から49歳で過体重や肥満になれば、膵癌の発症は、2歳から6歳早まるってことだ。」

この知見は、Journal of the American Medical Association(JAMA)の6月24日に掲載され、841名の膵管腺癌患者と754名の癌の無い健康成人を、患者の年齢、人種、性別で一致させたケースコントロール研究から導き出された。身長や体重の履歴は個人インタビューから得られた。

14歳から39歳で過体重になった患者と20歳から49歳で肥満になった患者では、それぞれ、膵癌になるリスクが1.67倍と2.58倍に上がった。このリスクは、40歳以降で過体重もしくは肥満になった患者で頭打ちしていた。50歳以降に肥満になっても統計的な差は見られなかった。

BMI値、しばしば使われる体重と身長の比と膵癌の相関関係は、女性より男性に強く、喫煙経験の無い人に比べると、過去や現在も吸っている人で強いことも報告で示された。

研究者によると、高齢の肥満者は、肥満ということ自体が不利益である事も明らかになった - 膵癌の生存率低下と関連があったからだ。膵癌と診断された1年前に適正体重だった患者さんの平均生存日数は、18ヶ月だったが、診断前に過体重もしくは肥満だった患者の平均生存日数は、13ヶ月と短かったと、Li医師は説明した。

これに関連してエディトリアルで、ミネソタ、ロシェスター、メイヨー・クリニックのRobert R. McWilliams医師とGloria M. Petersen医師はコメントしているけど、体重増加や肥満は、病気の進行 -- 発癌の可能性から最悪の結果にわたって -- 加速化させる可能性がある - そして、こうも付け加えた、「どうして膵癌が予後不良になってしまうのか生物学的な考察も加えられるかもしれない。」

今回のこの報告は、彼らによれば。「膵癌の発生や進行に関わる臨床的因子を理解するために積み重ねている研究を意味している。」

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