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2009年4月25日 (土)

成人後5キロ以上やせると死亡率1・4倍

今日のエントリーは、患者さんから教えてもらった読売新聞の記事なんだけど、読んだ人いる?

私が紹介しようと思っているReutersのニュースと関連があるから合わせてエントリーを書こうとしていたけど、長くなるから分割することにした。

ということで、まず最初に読売新聞ネタから。

成人後5キロ以上やせると死亡率1・4倍…肥満より危険?(読売新聞)

 成人後に5キロ・グラム以上体重が減った中高年は男女とも、死亡する危険が1・3~1・4倍高いことが、厚生労働省研究班(主任研究者=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)の大規模調査でわかった。
 体重が増えても死亡率増加との関係は認められなかった。肥満になると死亡率が上がるとする従来の研究とは反対の結果で、肥満の健康影響を重視する国の健診体制に一石を投じそうだ。
 研究班は、全国の40~69歳の男女約8万8000人を平均約13年間追跡調査。がんや循環器疾患など主な病気、ダイエットによる激やせなどによる影響を除いた上で、20歳時からの体重変化と死亡率との関係を年齢別に調べた。
 その結果、調査期間中に6494人が死亡した。このうち、5キロ・グラム以上体重が減少した人は、変化が小さかった人に比べ、男性で1・44倍、女性で1・33倍死亡率が高いことがわかった。
 一方、20歳時から5キロ・グラム以上体重が増加した男性は、死亡率が0・89倍に下がった。女性では変化が見られなかった。体重が10キロ・グラム以上増加した人で見ても、男女とも死亡率に大きな変化はなかった。
 これまでの複数の研究によると、極端な肥満は死亡率を上げる。しかし、日本人は外国人とは異なり、極端な肥満がもともと少なく、肥満が死亡率に与える影響が調査結果には反映しなかったとみられる。
 やせると死亡率が上がる原因は今回の調査からはわからなかったが、体重低下で免疫力が落ち、感染症などにかかりやすくなることが考えられる。分析した斉藤功・愛媛大准教授(公衆衛生学)は「成人後に5~10キロ・グラム程度太るのは自然な現象。肥満の危険性が強調されることが多いが、体重減少も重視しないといけない」と指摘している。
(2009年4月23日14時34分  読売新聞)

この記事、何度読み直しても驚くような内容じゃないよね。当たり前というか私には当然のように思えるんだけど... でも、タイトルだけ一人歩きして、「痩せると危険」なんて考える人が増えると恐ろしいかも。

驚くような内容じゃないと考えた理由を説明しよう。

対象となっている被験者の年齢が40歳〜69歳ということは、これが追跡調査に参加した時の年齢であれば、20歳時の体重は、今から少なくとも20年前ってことになり、追跡年数の13年を加えると33年前になるだろう。

2200

そこで、1976年の20歳代の日本人平均BMI値をこのグラフからみると、男は21.5で女は21だった。みての通り標準体型。

次に、追跡調査をした13年後にあたる1989年の40歳代のBMI値は、男が23.1、女が22.7ぐらいになっている。ということは、170cmの男なら4.6キロ増え、160cmの女は4.4キロ増えていることになる。

何がいいたいか分かるよね。新聞の最後にある愛媛大准教授、斉藤功先生のコメントの通り「成人後に5~10キロ・グラム程度太るのは自然な現象」ということになる。この自然に増えてしまう要因も色々言われているけど、運動不足に栄養過多の環境因子が大きな理由だろう。

したがって、自然に増えるようなこの時期に、5キロ減るってことは、10キロ近い体重が減ったと考えられるよね。新聞には「癌や循環器疾患などの病気、ダイエットによる激やせの影響を除いている」と書かれているとなれば、、ダイエットもしないで10キロ近く体重が減るってのは異常だと思えるよね。

癌や循環器疾患じゃないと書かれていても、とてつもないストレスに曝されているのかも。栄養障害や慢性疾患による免疫の低下により感染症の増加してるって、医者じゃなくても容易に考えられるだろう。

それから、「20歳時から5キロ・グラム以上体重が増加した男性は、死亡率が0・89倍に下がった。」なんて書いてあるけど、自然に5キロ近い増加を示す統計データをみればわかるように、体重は増えても男の平均寿命も伸びている年代(1976年:72歳、1989年:75歳)を考慮すれば、不思議でもなんともないんじゃないかな?

前述の斉藤先生もコメントしているけど、「体重減少重視しないといけない」というように、体重増加による健康障害を注意するのは当然だけど、ダイエットじゃない極度な体重減少に注意を払うのは常識だろう。

どうして体重増加で死亡率が増えないのか? 体重増加による影響はもっと人生の後半に訪れるのかもしれない、しかし、癌や循環器疾患などの病気を考慮していないというのも解せないけどね。

日本人の三大死因は、癌、循環器疾患(脳血管、心疾患)、そして感染症であり、肥満は癌と循環器疾患に関わっているというのも常識。とすれば、記事に書いている「癌や循環器疾患などの病気、ダイエットによる激やせの影響を除いている」という話なら、肥満で死亡率が増えないのも当たり前のような...

どちらにしろ、この新聞の論点は全く訳がわからない。こういう内容の記事を素人が適当に書くんじゃなくて、きちんとした専門家の分析記事を載せて頂きたかったよね。

体重の変化という問題は、いつ頃にどの位どの程度の速さで生じるかが重要だ。この新聞記事では、そういう問題に触れていない。

実は、今日の私が紹介するReutersの記事は、まさに、体重の変化が「いつ」起こったか注目した疫学調査だったから興味深かったよ。

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コメント

タイトルを見てビックリしました。この新聞記事を読んだら、確かに『痩せると危険』と勘違いする人がいるかもしれないですね。

投稿: takupapa | 2009年4月27日 (月) 21時15分

私も新聞のタイトルを読んで驚いたけど、内容を読めば当たり前かなと思いました。でも「肥満より危険?」というフレーズは必要ないでしょ、と言いたい。

投稿: 屋台ブルー | 2009年4月28日 (火) 12時20分

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