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2009年4月15日 (水)

不飽和脂肪酸、アラキドン酸で精神疾患の予防効果?

この報告をした大隅典子さんのブログを見つけたのでトラックバックしちゃいました。今度質問をしてみようと思うよ。こういうブログがあると嬉しいね。大隅さんは現場の人だかね。(2009年11月11日追記)

ライフログで取りあげたオメガ3系脂肪酸に関する話題
Flaxseed vs Fish: 植物性オメガ3か魚類オメガ3(2012/07/24)
魚と卒中(12/09/25)
オメガ3系で歯肉疾患の予防(10/12/30)
子供の脳の発達にかかわる必須脂肪酸 - オメガ3(10/11/13)
魚油は10代少年のうつ病を緩和させるかも - オメガ3(10/08/18)
食事の変化で高齢者のコレステロール値改善 - オメガ3(10/02/22)
魚油は統合失調症の予防になるか? - オメガ3(10/02/03)
魚油は細胞の老化を防ぐ - オメガ3(10/01/23)
オメガ3系脂肪酸は加齢性の失明を避けるかも(09/12/28)
食事中の脂肪酸は潰瘍性大腸炎のリスクになる - オメガ3(09/12/04)
魚を食べても心不全の予防にならないかも - オメガ3(09/10/17)
オメガ3系、研究によると、アルツハイマーに効果なし(09/07/14)
オメガ3系脂肪酸は黄斑変性の進行を抑えるかも(09/06/11)
不飽和脂肪酸、アラキドン酸で精神疾患の予防効果?(09/04/15)
オメガ3系脂肪酸に関する私見(08/11/18)
女の子は男の子より2倍重要なオメガ3系(08/06/30)
オメガ3系:いかに騙されているか(08/06/20)

不飽和脂肪酸を話題にすると、頭が混乱するから注意しよう。オメガ3系では、α-リノレン酸からEPAやDHAが合成され、オメガ6系では、リノール酸から、γ-リノレン酸、アラキドン酸に合成されていく。ややこしいよね。

不飽和脂肪酸は、炭素間二重結合の位置の違いによって、オメガ3系とオメガ6系がある。オメガ3系とオメガ6系は全く異なる生理反応を引き起こすから、どちらか一方だけ重要と言う訳じゃない。どちらも必要なんだけど、理想的な比率は今のところ分かっていない。

今日の気になるニュースを読んで、オメガ3系とオメガ6系の理想的な比率は、成長過程で変化するかもと思った。成長期の子供では、オメガ6系が重要であり、大人になってからは、オメガ3系が重要になるような気がする。

これは私の感想、なんの根拠もないけど、こう考えるようになったのは、単純だけど、今日のニュースを見てから。じゃあ、ちょっと読んでみよう。

アラキドン酸:心の病に予防効果?…卵・海藻含有の栄養素(日本語だから読んでね)

毎日新聞のニュースに出ていた記事だけど、読んだ人いるかもね。あくまでもラットを使った実験なので、話半分で聞いた方がいいかもしれない。でも、非常に興味深い内容だった。オメガ6系不飽和脂肪酸の1つ、アラキドン酸を摂取すると、脳の神経細胞の生成が促され、精神疾患の予防になる可能性が示唆されたという内容だ。

まあ、いつものように、新聞の内容だけで判断していると、アラキドン酸を摂ると精神疾患の予防になるような気がするよね。勘違いしないように、文献を見てみよう。

Arachidonic Acid Drives Postnatal Neurogenesis and Elicits a Beneficial Effect on Prepulse Inhibition, a Biological Trait of Psychiatric Illnesses
アラキドン酸は生後神経新生を促進し、精神疾患の生物学的指標となるプレパルス抑制に良い効果をもたらす

PLoS Oneのこれが元ネタになるけど、今回は英文を読まなくてもいいんだよ。実は、日本人のグループが書いているので、日本語の説明もあった。

アラキドン酸が神経新生促進と精神疾患予防に役立つ可能性を発見(日本語だよ)

英語の文献と、この日本語の説明を読むと色々と勉強になるだろう。実に興味深い内容だった。感覚フィルター機能の評価のためプレパルス抑制(PPI)という検査があるって話、全く知らなかった。

精神病疾患は、統合失調症と気分障害に大別されて、アラキドン酸は、統合失調症の原因説とされる「神経発達障害仮説」に関わっているという話の流れも知らなかった。勉強になるね。

胎児時期の栄養失調から思春期の統合失調症の発症が増えるという事から、精神疾患の予防としての栄養素の重要性が読み取れるし、多価不飽和脂肪酸がその原因として考えられたという今回の報告は、当然私にとって興味深い内容だよね。

アラキドン酸は、脳内に多い不飽和脂肪酸。でも、アラキドン酸と結合するアラキドン酸レセプター、Fabp7は、脳の発達期の未成熟な神経幹細胞で多量に発現しているだけ。大人になるとその発現は減少するらしい。ということは、アラキドン酸は発達期と成人でその効果や役割は変化する可能性がある。

神経の増殖期におけるアラキドン酸による神経増力作用っていうのは読み取れる。しかし、神経は増殖もするけど、分化成熟する必要もある。

実験で使った餌には、不飽和脂肪酸として、アラキドン酸単独、アラキドン酸とDHA、そしてDHA単独を加えてあり、この3群を使って比較している。アラキドン酸を加えた餌を食べたラットのみ神経新生を認め、このアラキドン酸含有餌を使ってPPIの評価をしていた。

結論のところで、アラキドン酸は神経増殖を促し、DHAは神経の分化をしているのではないかという考察が入っていた。しかし、これは著者等の意見だ。アラキドン酸とDHA含有餌でPPIの結果がどうなったのか触れられていないので気になるところだ。

それに、アラキドン酸とDHAの比率の問題も残っているし、ここのグループの次のデータがどうなるか楽しみだよね。

まあどちらにしても神経回路形成を客観的にみるためPPIを使った実験モデルは、扱いやすいだろう。色々なグループから同様の報告が出るような気もする。でも、このラットを使ったPPIの実験、人でも当てはまるのだろうか?

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コメント

胎児時期の栄養失調が思春期の統合失調症の発症率に関係するとは知りませんでした…。
先日、子供が生まれた事もあって、栄養素の重要性を改めて考える機会になりました〜。
身近な存在なのに栄養素はすごく奥が深いですね

投稿: τ | 2009年4月16日 (木) 12時30分

以前の私は疫学調査に目が向いていなかったけど、興味深いデータが色々あることに驚いています。

関連性を証明するのは難しいけど、色々なモデルを考え出して証明しようとする研究者の働きは素晴らしいですね。

投稿: 屋台ブルー | 2009年4月20日 (月) 15時42分

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