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2008年6月11日 (水)

厳格な血糖コントロールは心臓に良くない

今日紹介するのは、ちょっと古いけど、New York Timesの2008年6月7日付けの記事「Tight Rein on Blood Sugar Has No Heart Benefits(厳格な血糖コントロールは心臓に良くない)」だ。

最近、ダイエットに関係ない話をしているから、つまらないと思っている人いるかも?

自分でも誰に向けて記事を書いているのか分からなくなる事がある。患者さんに向けて書いているつもりなんだけど、自分の勉強のためにもなっているような... でも、自分のためなら文献読んだ方がいいのかも。

でも、私はアカデミックな人間じゃないし理解力は悪いから、難しい論文をスラスラ読めないし説明もできない。一般紙のニュースは理解しやすいよね。一般の人にも説明しやすいと思う。一流の記者は難しい話を分かりやすく書くの上手いね。

しかし、その代償として記者のバイアスの入った情報を読まなきゃいけないのが難点。うーん、正しい情報を手に入れるのは難しいよ。

じゃあ、そろそろ話に入ろう。先週の金曜日にサンフランシスコで開催された、米国糖尿病協会年次総会で、2つの大規模臨床試験失敗の報告があったんですよ。

特に、NIHが主導だった大規模臨床試験ASCCOTトライアルは、既に、今年の2月、中止のアナウンスがあったから、詳しい内容を知りたがっていた医者は多かったと思うよ。

私が勉強するときに覗いている「内科開業医のお勉強日記」でも、当然、このニュースを受けた記事がアップされている。

高リスク2型糖尿病強化治療:異なる2つトライアル結果:ACCORD vs ADVANCE  」

早いよね土曜日に紹介してるもんね。やっぱりできる医者は凄い。

でも、一般の人がここを覗いても、難しすぎて何の事やら分からないんじゃないかな。最後にこんなコメントが載っている。

日本では諸外国のメガトライアル解釈、大御所たちが行い、製薬メーカーがらみで配布する。一般医師たちの脳は、大御所たちの意見と同一となり、金太郎飴状態になる。
そういう情報にけがされる前に、生文献を読んだ後の感想を書き込むことも日常臨床やっている医師たちには必要なのかもしれない。

そうですよね。ここのページは医家向けに情報を発信(自分用ともいう)しているからバックグラウンドの知識がないとフォローアップしにくい。私でも理解できないことあるし(汗)。

同サイトの月曜日には更に関連記事が紹介されている。

ACCORD研究のインパクト

二度紹介されているということは、医療関係者にはインパクトがあったんだろう。なんとなく分かるんじゃないかな。でも、紹介されているニュース記事「ADA: ACCORD Diabetes Trial a Complete Bust」は医家向けだよな。

でも、私が今日紹介する記事は一般向けなんで分かりやすいと思うよ。ACCORDとかADVANCEなんて単語は出てこない。ちょっと説明が必要なところもあるけど、まあ、私には十分。何度も言うけど、注意すべき点は記者のバイアスだ。そういうわけで、文献のアブストラクトぐらいは読んでおこう。

厳格な血糖コントロールは心臓に良くない
Tight Rein on Blood Sugar Has No Heart Benefits

21,000人以上の2型糖尿病患者が参加した2つの大規模臨床試験において、厳格な血糖コントロールをしても、心筋梗塞、卒中のリスク低下、死亡率の低下も見いだせなかった。

1つの臨床試験は、NIH(米国)によって2月に中止という報告があり、今回その詳細な結果が示された。中止が決定したとき、比較的緩やかな血糖コントロールをするグループより厳格な血糖コントロールをするグループの方が死亡率が高いという報告があって糖尿病専門医を驚かせた。

初めてこの臨床試験の詳細なデータが報告されている。もう1つの臨床試験はオーストラリアからの報告、20カ国から被験者は参加していて、米国と同様に血糖値と心血管疾患に関する試験結果が示された。死亡率の増加は見られなかったけど、厳格な血糖コントロールをするからといって心血管疾患の予防にはならなかった。

どちらの臨床試験でも、厳格な血糖コントロールをすれば2型糖尿病の心血管疾患予防になると信じている人達の仮説を証明することができなかった。

これは本当に明らかだと思われていた仮説だった。

2型糖尿病患者にとって心血管疾患は死因の65%を占める。糖尿病になれば高血糖になるという理由から、糖尿病の患者さんの血糖値をできるだけ正常に近づけたら、心血管疾患の罹患率も是正されるんじゃないかという希望はあった。

この2つの臨床試験は、金曜日、サンフランシスコで開催された米国糖尿病協会年次総会で報告されて、New England Journal of Medicineに翌週掲載される予定だ(もう既にされているよ)。この文献はミーティングが開催されるのと同時に公開された。3つ目目の臨床研究は、同様だけどちょっと規模が小さくて、Department of Veterans Affairsによってなされ、日曜日に報告予定だ(この結果は見てません)。

糖尿病研究者によれば、この研究で言えることは、糖尿病患者さんは、少なくともマイルドな血糖コントロールをして、網膜症、腎症、神経症の予防をするべきということ。心臓病に関して言えば、合併症予防で確証がある方法は、スタチン製剤を使ってコレステロールのコントロール、降圧剤による血圧コントロール、アスピリンによる血液凝集予防、それに減量とエクササイズを奨励することだ。

オーストラリアの臨床試験の厳格な血糖コントロールの利点は1つだけある - 糖尿病性腎症の発症や進展は僅かに抑制された。この進展率は、緩やかなコントロールグループの5.2%に較べて、厳格なコントロールグループは4.1%だった。

しかし、研究者によれば、オーストラリアの臨床試験で見られる腎症に対する効果は、患者さんに厳格な血糖コントロールをやらせるのに十分な説明にならない。オーストラリアの臨床試験をした連中もそう思っている。

他の人達も判断はできなかった。腎臓に対する効果は「ちょっとした利点」とマサチューセッツ総合病院の糖尿病センター所長、David Nathan医師はこう言った。米国心臓病学会の委員長、W. Douglas Weaver医師も同意して言った。「こんなデータじゃエキサイトできないよね。」

米国の臨床試験で、強化療法をしたグループの死亡者が増えたため、Nathan医師や他のスタッフは試験を中断させた。

研究者説明するには、米国とオーストラリアの臨床試験を比較することはかなり難しい。というのも、この臨床試験で使用されている血糖降下剤は異なるし、血糖降下率も異なるからだ - 米国の試験では、血糖を早くコントロールしたけど、オーストラリアの試験では1年以上かけて血糖を低下させた。

また、米国の臨床試験では、幅広い種類の糖尿病薬が使われた、しかし、オーストラリアの臨床試験では、厳格な血糖コントロールグループで、スルホニル尿素剤、グリクラジド(徐放剤)が使われていた。これはアメリカでは使われていない。

オーストラリアの研究は、製薬会社、セルビアから大規模な援助を受けている。セルビアは研究に関して、解析、公表、結果を含めて全く関与はない。シドニー大学の心血管医学疫学の教授で主要研究者のStephen MacMahon医師は説明した。

どちらの研究も、厳格な血糖値のコントロールの意味は、血中のタンパク質、ヘモグロビンA1C(HbA1C)の値を6.0%から6.5%にしたということ。緩やかな血糖コントロールは、A1Cの目標値を7.0%から7.9%にしている。これは米国の2型糖尿病コントロールの典型的な目標値だ。厳格なコントロールは本当に難しかった - 参加者は、何種類も薬を飲まなきゃいけなくなったし、インスリン注射さえする必要があった。それに、突然血糖値が低下してしまう低血糖の危険性もあった。

血糖値/心血管疾患の仮説を証明することに失敗して大きな落胆はあったけれど、この結果から、この臨床試験に参加するような患者さんから成果を上げることは難しいことを示してくれました。国立糖尿病・消化奇病・腎臓病研究所の糖尿病部門の主任、Judith Fradkin医師は答えてくれた。それに、参加者は、中年から年を取った方が多かったし、糖尿病の罹患率も長かったですね。

「既に障害を持っている患者さんに介入していたからでしょうね。」Fradlin医師は話してくれた。若くて、糖尿病になりたての患者さんだったら、また別の話になったんじゃないでしょうか。彼女は、最後に付け加えて言った。「それが、まだ答えられていない大きな問題よ。」

糖尿病医科学協会の委員長、John Buseがまだ言うけど、血糖値/心血管疾患の仮説は、2型糖尿病の確立した人には無駄だった。

このような患者さんにとって、「心血管疾患のリスクを考えて厳格なA1Cのコントロールをする価値はない。」とBuse医師は言った。

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ここまでがニュースです。糖尿病の患者さんで驚いた人もいるんじゃないかな?ヘモグロビンA1C(HbA1C)のコントロール6.4%の人は、7.0%を越えている人に較べて死亡率が20%上昇ってある意味怖いかも。でも今飲んでいる薬を勝手に止めないでよ。主治医と相談しよう。じゃあね。

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コメント

大規模臨床試験というのは解釈の仕方が難しいですね。
参考にはなるがそのままズバリというのはありえないし、全く違う、参考にならんというわけでもないし・・・。

一応事実は事実ということぐらいでしょうか

投稿: kj | 2008年6月12日 (木) 11時42分

血糖値を下げて血管関連の合併症を防ぐと言う希望は断たれたわけですね。
 かくなるうえは血管を丈夫にする体操や血管を丈夫にする食品なんかを積極的に摂るという方法しかないのでしょうか?
それに加えてスタチンでLDL管理と言うことでしょうか。
 糖尿病はお薬では治らないから不治の病というのですね。
食品と運動によるコントロールが一番よいのですね。これは基本ですよね。

投稿: やまんば@糖尿病 | 2011年4月29日 (金) 17時16分

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