"夕方6時までには夕食をすませ、8時に血糖を計ったら・・・・150前後 お風呂上りのお茶一杯だけを飲んで就寝。朝食事前の血糖が・・・・なんと180・・・なんでぇ・・・・・"
という質問を糖尿病の患者さんからいただきました。運動療法と食事療法をしっかりやっている人なら、へこたれそうになりますね。何も食べないのに血糖が上昇してしまうなんて!なぜ? と考えても仕方ないと思う。糖尿病になると、自分の思うように身体は反応してくれなくなるでしょう。しかし、理由がわかれば頑張れるもの。マラソンで例えると、ゴールが分かって走るのと分からず走る違いと似ているでしょう。
血糖値の恒常性
糖(ブドウ糖)は身体を動かすための重要なエネルギー源(脳では唯一)であり、血糖値は恒常性が保たれ一定濃度(80〜100mg/dl)で維持されている。少しぐらい食事をしなくても血糖値は下がらない。人間の歴史は飢餓との戦いだったようで、数々のホルモンは血糖値を上げる働きがある。
どうやって血糖を上げるのか?
ブドウ糖は過剰に供給されると直ぐ貯蔵に回される。ブドウ糖が重合した構造、グリコーゲンに合成されて肝臓や筋肉で貯蔵されている。しかし、利用するためには再びブドウ糖へ分解される必要がある。
ブドウ糖が使用され、血糖値が低下すると細胞のエネルギー利用が減るのでグリコーゲンからブドウ糖へ分解されて血糖値を維持しようとする。しかし、グリコーゲンとして貯蓄されているブドウ糖の量は限られているため他のエネルギー源が必要になる。
実は、筋肉の主成分であるアミノ酸がエネルギー源として使える。しかもアミノ酸は肝臓でブドウ糖へ変換される。この代謝を糖新生と呼ぶ。ブドウ糖が無くても血糖値が上がる理由がこれである。例え炭水化物(糖)を全く摂っていなくても、身体は筋肉から糖を作り出してしまう。この反応を見れば、いかにブドウ糖がエネルギー源として重要であるか分かる。
血糖を上げる仕組みは分かったけど、どうして異常に上昇するの?
今までお話ししたのは正常の人のお話。糖尿病になると話が少々難しくなる。ポイントは「糖の利用にインスリンが必要」である。これはなんだ?と思われるかもしれません。先ほど話したように、人の進化は飢餓との戦いだったので、血糖値を上げる仕組みは複数用意されているけど、血糖を下げる仕組みは1つしかないのです。膵臓から分泌されるインスリンしか血糖値を下げることができない。
糖尿病の患者さんなら、インスリンで血糖が下がるという事をご存じの人は多いでしょう。でも血中から消えた糖がどうなるのか知っている人は少ないですね。インスリンが分泌すると血液中の糖は低下する。じゃあ糖は消えて無くなったのでしょうか?実はインスリンの様々な働きを使って血糖値を下げている。
インスリンの主な働きの1つに、細胞へのブドウ糖取り込みがある。エネルギーの消費の場である細胞内へブドウ糖を取り入れるためインスリンは不可欠である。したがって、インスリンが全く分泌できない糖尿病(これをI型糖尿病)の場合、血糖は高くても細胞内には取り込まれないので身体はブドウ糖の枯渇状態だと錯覚して、更に血糖を上げようとして糖新生がすすむ。筋肉や脂肪(これもエネルギー源だけど糖には変換されない)がエネルギー源として使用され、更に血糖が上昇することになる。悪化した糖尿病でやせている人は、まずインスリンの分泌が無くなっていると考えていいだろう。
インスリン分泌の様式
今説明したようにブドウ糖をエネルギー利用するためインスリンが不可欠なので、食事をした時だけ分泌されているわけじゃない。1日24時間を通してインスリンは一定レベルの分泌がされている。これをインスリンの基礎分泌という。また、食事性のブドウ糖の上昇はインスリンの追加分泌で対処している。このインスリンの分泌異常の差により糖尿病の病態が分かれる。基礎分泌が低下している人は空腹時高血糖、追加分泌が弱いと食後高血糖の糖尿病になる。
まとめ
さて、質問であったように、寝ている間に血糖が上昇してしまう事はよくある。これは基礎分泌が低下していると推測できる。インスリンによる糖の利用ができなので糖新生が亢進しているのだろう。既にインスリン注射をされているのであれば基礎分泌を補うタイプのインスリン量を増やせばいいでしょう。太っていて追加分泌の保たれている人であれば、インスリン分泌を刺激してやる食事を少し摂るのもいいかも。インスリン分泌が極端に落ちている人は注意してください。無理な食事療法や運動療法をすると悪化することがある。主治医と相談してください。
もし、独学で糖尿病に取り組まれている患者さんであれば、近くの糖尿病教室に参加されてみたらどうでしょう。糖尿病に関する基礎知識が勉強できるので今後必ずプラスになると思いますよ。
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