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2008年1月 8日 (火)

医師がすすめるウオーキング (集英社新書)

予防医学の話をしておこう。どうも最近ランニングの話題ばかりなので、走らない人には飽きられているみたい。正月休みに帰省していた弟の嫁さんからつまらなそうに言われた。

私はあんまり本を読まない。というか遅読なんで読む本が少ない。なんとか今年は多読しようと思っている。ちょっとずつだけど読んだ本の紹介。

メタボリックシンドローム対策の二本柱、食事療法と運動療法、どちらが重要かと訊ねられたら、食事療法だといつも答える私だけど、今回は運動療法の話題。まあ、どちらにしても習慣化させるのに苦労が伴う。

結局、実行しやすい方から始めるスタンスでいいと思う。しかし、どちらから入っても、いずれ両方の改善に取り組まなければ、迫り来るメタボな状態から逃れられないだろう。

今日は泉嗣彦(イズミツグヒコ)著の『医師がすすめるウーオキング』(集英社新書)の話。

泉先生を知らず、たまたま本屋で並べられていた本書の「医師がすすめる」というセンテンスに反応し、同業者が書いている内容が気になって手にしていた。

内容を読んでみて、本を一冊書き上げるというのは大変な作業だと思えた。何でかって言えば、この本に書かれているのは、「運動を生活習慣に取り入れれば生活習慣病の発症予防になる」というシンプルな結論を、一冊の本にするために、苦労して肉付けしているように見えたからだ。まあ大変だね。

この手の本で重要なのはいかに読者を説得するかである。

そのためウオーキングを生活習慣にすると健康にいいという数々のデータを紹介している、でも、運動ならなんでもいいような一般的な情報の羅列。

「これじゃあウオーキングでなくてもいいじゃないか?」そんな疑問も浮かんでくる。

この泉先生、専門は消化器科で、人間ドックに職場が移ってから、不摂生な生活が引き起こすメタボな人たちを目の当たりにして、居ても立っていられなくなり筆を執った人だろう。

経験的にウオーキングをして彼自身の体調が良くなったこと、人間ドックを受ける人々へのアンケートからウオーキングなら気軽に始められる運動と結論づけているから、ウオーキングに関するデータが妙に少ない。

彼自身が社団法人日本ウオーキング協会副会長という立場なのに、ウオーキングに対する情熱やこだわりが全く読み取れない。なんかウオーキングをするために本書を手に取られた人はガッカリするんじゃないかと不安になる。

医療の世界では、EBM(Evidence Based Medicine:イー・ビー・エム)による治療、EBMとは直訳すれば「証拠に基づいた医療」、要するに、何百人、何千人の患者さんに施行して、有効性が認められた治療を選択するという考えが主流になっている。

そのEBMという考え方を食事療法や運動療法にも取り入れるお医者さんは多い。しかし、医薬品のように莫大な利益を生む分野と違って、お金にならない食事療法や運動療法に関するデータを集める人は少ない。したがってEBMにこだわって話をすると、少ないデータから言えることは自ずと限られる。

結局、自分の患者さんの話を持ち出さないと話にならない。しかし、患者さんのデータは医者の経験則であり検証が必要になる。よくここで騙される患者さんがいるのでちょっと解説する。

これはダイエットサプリメントの宣伝を使って説明すると、宣伝では、一人の被験者がサプリメントを飲んで痩せたと言う。でも、この被験者はサプリメントを取る以外に、食事の量を減らしていたかもしれない、サプリメントを取る期間だけ運動をしたかもしれない。

サプリメント以外の外的因子を可能な限り同じにして、大勢の人にそのサプリメントを飲ませ、対照として偽薬を使用し、また被験者にはサプリメントか偽薬がわからないようにさせてデータを集めなければならない。

その結果としてサプリメントを飲んだグループが偽薬のグループに比べて痩せた結果を出さないと、そのサプリメントに効果があると言えない。

まだ注意が必要で、「サプリメント以外の外的因子を可能な限り同じにする」は、数限りない影響の除去が必要になってくるわけで、かなり大変な作業になるにも関わらず、完全に同じにすることはできないから、反論の余地を与える。

そういうわけで、EBM重視で話をすると、論点がデータの信憑性にフォーカスされて面白く無くなる。

食事療法や運動療法なんて、私から言わせれば、逆にデータが不十分なんで、話をいくらでも飛躍させ独創的にすればいいと思う。しかし、泉先生の本は一般論に始終し、ウオーキングへのこだわりが読み取れなくつまらなかった。

そんな訳で、泉先生のウオーキングに関して少しだけ言いたいことがある。

「時間や場所にあまりこだわらず、しかも装備が手軽にすむ運動として、忙しい現代人にすすめられるのはウオーキングしかない。」と確信されて、ウオーキングをエクセサイズとして考えるのではなく、「日常やっていることを少しだけ増やす。日常的な行動を活発にするのだから、これはライフスタイルやないか。」となって、「歩く行為」を増やすライフスタイルの確立、「ライフスタイル・ウオーキング」という言葉に考えを集約させている。

自分が好きなことと歩くことを結びつけて楽しいストーリーを見つけられるヒントを紹介している。花や樹木が好きなら、季節ごとに通勤ルートを変えて、花の名所や見頃の時期を書き留め、気になる植物は植物図鑑で調べましょう、とあったり、お遍路や街道を歩く例を挙げている。

ちょっと考えてみれば、このようなストーリーを見つける方法は、生活にゆとりがあり時間のある定年間際か定年後の中高年の人達にはいいかもしれない。しかし、問題になっているメタボな人は、まだ第一線でバリバリ働いている。泉先生も指摘する忙しい現代人、ゆとりを持ってストーリーを探す時間のない人に魔の手が迫っている事を彼は考えていないようだ。

泉先生も本書の冒頭でちゃんと言っている。「まず土曜日と日曜日が休みになりました。五十代半ばになってようやく週休二日の生活になったのです。さて余暇に何をしようか、と思ったとき、まず思いついたのは、運動をしよう ということでした。」

これは自分の仕事場が人間ドックをする職場に移った時の説明で、時間的ゆとりができて運動習慣が確立できたと自ら説明している。なんか話していることが矛盾していると思うのは私だけかな。

こんな靴のはき方も説明している。

1. 靴ひもの結びを解いてゆるめ、足を入れる
2. 靴下をよく伸ばす
3. 靴ひもを締める。靴に中で足指が余裕を持って動く状態で、足甲が痛くない程度に
4. かかとをきちんと収める。かかとで地面を軽く叩くようにするといい
5. 靴ひもを仮に結ぶ
6. そのままつま先でゆっくり踏み込んで、靴ひもをきちんと結ぶ
7. 実際に歩いて、ちょうどいいきつさに調整する

これを読んで笑ってしまった。こんな靴のはき方を習慣づけろって、忙しい人にできますか?本当に書くネタが無かったんだろうと、苦笑い。

なんか批判めいた事ばかり言いましたが、泉先生の仰ることは正論であり、ウオーキングを生活習慣にできる人はした方がいい。また、メタボリックシンドロームに関する一般的な知識をつけるために一読されるのもよい。

最後に言っておかなければならないことが一つ、メタボリックシンドロームという言葉は2007年9月から厚生労働省が使用を始めたので、この本が出版された2005年4月は、まだ生活習慣病という言葉が使われている。

しかし、どちらも同じで、内臓脂肪の過多に原因があるということは10年以上も前から言われている。

本書の説明にも既に「内臓脂肪の有無は厳密にはCT検査で内臓脂肪の面積を測定して診断します。簡単に判断する場合は、腹囲が男性八五センチ、女性では九十センチ以上だと、その存在を疑います。」という、現在メタボリックシンドロームの診断基準になっている腹囲の具体的な値が示されている。

無知な人はいつの時代でも弱者になる。メタボな人は自分がどんな状況なのか知る必要があり、情報を身につければメタボ対策は苦しいどころか楽しみになる。私はランニングですが、ウオーキングも否定していないし、ウオーキングやランニングに対するこだわりもある。それは自分の経験則から生まれてきたこだわりで、誰にでも真似できることではないかもしれない。しかし、適度な運動をしていないと老化が進む、は証明されていないが真理だと思っている。

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